2015年01月27日

日本フォーム印刷工業連合会専務理事 山口 実氏

日本フォーム印刷工業連合会
専務理事 山口 実氏

日本フォーム印刷工業連合会専務理事の山口実氏は、メディア業界やコンサルタントなど多彩な講師の講演会の企画を通じて、印刷業界の新しいビジネスモデルを提起してきた。また元トッパン・フォームズ㈱の技術本部長であり、デジタル印刷の知見も深い。山口氏に印刷業とデジタル印刷の未来について聞いた。

BPOに商機あり

――(株)エフエム・パートナーズ・ジャパン社長のカックス・クレイグ氏を講師に招くなどして、業界で「ファシリティ・マネジメント」に取り組もうと提言している。なぜ印刷会社においてファシリティ・マネジメントなのか。

山口 フォーム印刷業界は、(OA化を促進するビジネスフォームの開発をするなど)事務革新のパイオニアとして歩んできた。
事務革新とはすなわちファシリティ・マネジメントである。ファシリティ・マネジメントは「施設管理」などと誤った訳がなされる場合もあるが、ユーザーのコア事業以外の経費を最適化することを指す。企業はコアビジネスに専念したいのであって、その他は誰がやってもいい経費の部分になる。そこを請け負うことにビジネスチャンスがあるだろう。

 

――BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という大きな潮流もある。

山口 ファシリティ・マネジメントもその流れの1つ。発送業務を代行したり、コールセンターを引き受けたり、データを処理して(請求書など)プリントして届けるといったこと。

 

――たとえば証券会社ならば、証券業務に専念したい。高い給料の社員を複写業務や印刷発注などのバックオフィスをやらせるのは経費の無駄かもしれない。

山口 日本で問題なのはホワイトカラーの生産性の低さ。庶務業務を整理することで顧客企業は高い収益体質に変化するチャンスになるし、われわれ印刷会社も周辺業務を取り込めるチャンスである。それに取り組んでいる会社は企業規模の大小は問わず伸びている。
印刷会社、特にフォーム会社は、顧客との継続的な関係性があり、昔から在庫管理や発注管理も請け負ってきた。BPOはその延長線にある。

 

――フォーム業界にはDPS(データ・プリント・サービス、情報処理から伝票の制作・印刷・発送業務までのワンストップサービス)という言葉があるが、データから預かることが重要だ。

山口 印刷会社はあらゆる業種と顧客接点を持っている。(データ処理など)川上に遡ることが重要である。顧客の業務に入り込み、ワークフローを作ってしまえば、顧客との継続的な受発注の仕組みができあがり、顧客から逃げられることも少なくなる。
またデータ処理からもっと川上の総務業務、例えば人事管理、給与の処理、税金の処理を会計士と組んで行っている会社もある。そういったことをグループで行うには、提案力、企画力が大切である。

新たな用途開発が急務

――例えば卒業アルバムは20部、30部の小ロットだが、それを生産機であるオフセット印刷で、いわば無理をしてこなしていたのが現状だ。そういったロットの仕事が、デジタル印刷に代替されるというのは十分考えられると思うが。

山口 それはその通りだと思う。しかしB2のような大型インクジェット機が償却できるほどの仕事が集まるかどうか。そのプリンターを24時間回すだけのビジネスモデルを考えることが第一になる。
ベニー・ランダ氏(ナノグラフィー印刷機を開発中のランダ社の代表)がパッケージ分野に進出しようとしているのは、やはり(商印の)オフセットの代替えとしては難しいと判断したからではないだろうか。

 

――コラボレーションとか、下請けとして仕事を集めることは可能では。

山口 ビジネス構造を変える必要はあるだろう。やはり新しい用途開発が必要だ。たとえば無在庫生産がそうだ。

 

――品質の時代ではないと聞いた。日本の過度な品質要求は改まっていくのではないか。

山口 これからも高いレベルが要求されるとは思う。しかしこれからはその印刷物によってどれだけ売り上げに貢献できたか、商品価値が上がったかというバランスを見て、顧客は採用を決めると思う。
Quality(クオリティ)を「品質」と訳すからよくない。クオリティはものの質だけではない。例えばBPOの質というのはモノの質ではない、サービスの質である。そうするとオフセット品質とか、デジタル品質とかいう判断だけではないと思う。

重層化するメディアに対応

henka――アメリカでは「マーケティングサービスプロバイダー」への転換が唱えられている。販促物を納めるだけでなく、販促支援そのものを行おうという考え方だ。

山口 商業印刷会社においてはその通りだろう。より多くの商品を売るためにどうすればいいかというアプローチがないと、印刷物には(仕事が)落ちてこない。
サービス業への転換が難しいというが、印刷会社がサービス業をやるからこそ、印刷物の仕事が落ちてくる。他の業種にはない強みである。だからこそ印刷会社がマーケティングサービスプロバイダーにならなければならない。

 

――マーケティングサービスプロバイダーになるためにはメディアを横断して効果的な販売促進支援を行わなければならない。

山口 印刷会社が動画をやってはいけないことなどないし、ホームページを作ってはいけないということもない。現在はラジオもインターネットも、テレビも雑誌も、重層的に存在している。

 

――その中で最適なメディアを提供することが大事。

山口 最適というよりも、複合。あるいは融合。ラジオがインターネットで聴けて、投稿することができる。テレビで料理番組を流して、ウェブでレシピを紹介することもできる。印刷物も、QRコード、ARなどで複合化が可能だ。
「紙は素晴らしい」「紙の方が電子よりも優れている」などということを言うから、電子を敵と見なし、取り入れられなくなってしまう。
顧客に発送コストがかかるから印刷物は頼めないと言われたときに、ではウェブでどうですかと提案できるか。ウェブはできませんと答えたら仕事を取りこぼしてしまうだけだ。

 

――複写機メーカーでもオフィスにおける複写機の台数の最適化を提案している。自社の製品が売れなくなってもそういった提案をすべき。

山口 印刷物を減らし無駄なコストを減らして、有効にコストを使いましょうという提案を、印刷会社が行っていかなければならない。

なぜわれわれフォーム業界が今までの製品に留まらない提案をしなければならないかというと、フォーム業界は過去、パンチカード、給油伝票、磁気ストライプ付搭乗券、ハイウェイカードなど、安定して受注していた製品市場が、突然なくなってしまった経験をしてきたから。ビジネスが安定していても、常に新しい製品を考えなければならなかった。
一般印刷会社は、製造業の中でもっとも安寧としていられた業界ではないだろうか。新聞が、チラシが、突然なくなるという時代を見越して、動いていかなくてはならないと思う。

 

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