2015年08月29日

 日印機工「平成26年度グローバル市場への展開のための課題対応および基盤整備に関する調査研究報告書」から、インドネシア(2015.8.22掲載)につづき、ベトナムの印刷業界動向および日本製の印刷産業機械に対する要望をみる。

 

印刷市場は2012年から17年にかけて4・2%増の見込み

 
 ■印刷市場
 ベトナムの印刷市場は2010年から11年の世界的不況を乗り越え、12年から17年において4・2%の伸びを見込んでいる。919・5百万米ドルから1100百万米ドルへと成長の見込みである。
 輸出製造業への海外からの投資と外需対応への強化により、12年から17年において貿易は急増する見込みである。
 この期間に都市部の労働者人口が増加し、賃金上昇、中間層の増加、中国での事業コスト増加により、コスト面で競争力のあるベトナムなどでの印刷製品を含む非必需品の生産増加が見込まれている。

 

 ■ベトナムの基本情報

 ▽人口(百万人)(2013年)=89・6
 ▽名目GDP(米10億ドル)(2013年)=152・2
 ▽一人当たりGDP(米ドル)(購買力平価)(2013年)=3790
 ▽実質GDP成長率(%)(2013年)=5・3
 ▽消費者物価インフレ(%)(2013年後半)=7・3
 ▽印刷市場(米百万ドル)(2013年)=950・7
 ▽印刷市場(年平均成長率)(%)(2012-2017年)=4・2
 ▽識字率(%)(2009年)=93・2
(出典=NPES)

 

パッケージは17年には印刷市場の半分を超える

 
 ■NPESによる印刷産業の動向
 12年から17年において、ベトナムのパッケージ印刷は5・9%で成長し、印刷売上で最大のセグメントである。12年は434・2百万ドルで、17年には577・6百万ドルとなり、印刷市場の51%を占めると見込まれている。
 そのうち、段ボール印刷がパッケージ印刷市場の53%を占め、最も大きなサブセグメント市場となる見込みである。
 出版印刷も3・0%の成長を見込んでおり、12年が199・3百万ドル、17年には230・8百万米ドルの見込みである。
 印刷産業機械では、売上は12年の19・8百万ドルから17年には20・8百万米ドルへと増加すると見込まれている。オフセット枚葉印刷機の売上が最も大きく、17年に全印刷産業機械売上の35%を占める見込みである。

 

輸入印刷設備の3割近くが日本から

 
 ■JETERO印刷産業機械輸入データによる動向
 ベトナムの12年における印刷設備の輸入総額は約9900万ドルで、前年度の1・1倍である。
機種別にみると、印刷機輸入総額の中ではオフセット枚葉印刷機が37・6%、オフセット輪転印刷機が11・3%、フレキソ印刷機が6・3%、巻取式凸版印刷機が4・8%、グラビア印刷機が4・6%を占めている。
 11年に比べて12年にはグラビア印刷機、フレキソ印刷機の輸入額が急激に増えた反面、凸版印刷機の輸入額は減少した。
 オフセット印刷機の輸入額は11年には若干減ったが、12年に再び回復し、10年の輸入額とほぼ同等な金額となった。オフセット印刷機の中では、枚葉式が輪転式の3倍以上の輸入額で、その額は3700万ドルとなっている(12年)。
 日本からの12年の印刷設備輸入総額は約2800万ドルで、当年度輸入総額の28・2%を占めており、すべての輸入国の中でもトップである。これは前年度に比べて27%増えたことになる。
 また、日本から最も多く輸入しているのはオフセット枚葉印刷機(47%)で、その輸入額は1300万ドルである。グラビア印刷機の12年の輸入額は10年度比で約4倍の約375万ドルと大きな伸びだった。

 
 【ベトナムにおける印刷産業機械の輸入国別状況(2012年)】
 日本28%▽ドイツ22%▽中国16%▽アジア(NES)12%▽フランス5%▽その他17%
 
 【ベトナムにおける日本からの印刷産業機械のキュ種別輸入状況(2012年)】
 オフセット印刷機(枚葉)47%▽オフセット印刷機(巻紙式)3%▽フレキソ印刷機13%▽グラビア印刷機32%▽その他4%

 

アフターサービスで頑張る中国・ドイツ勢

 
■聞き取りによる印刷業界動向および日本製の印刷産業機械に対する要望
 ①ベトナムは輸出が増えている。輸出先はヨーロッパ(イギリス、フランス)とアメリカが多い。輸出品は品質を上げる必要がある。そのため、日本製の新台でないと対応できない場合がある。
 ②日本製の印刷産業機械に対するイメージは良い。機械と印刷品質はドイツ製の方が若干良いと思っている。ランニングコストは日本製の印刷産業機械の方が良い。
 ③印刷の需要自体は国内が多いので品質意識はまだ低い。品質意識があるのは、輸出を意識している5%ほどの会社である。
 ④印刷会社は全国で2000社以上ある。ホーチミン市で約1000社。ホーチミンの印刷量は全国の約65%を占める。売上規模1000万ドル以上の会社はホーチミン市で約300社ある。地方の印刷会社数は、各州で10社程度と少ない。ただし、小規模な印刷会社は含まれていない可能性が高い。
 ⑤2004年から民営化の動きが本格的になっているが、大手は国営が多い。新聞社は全て国営である。

 
 ⑥設備は日本製、ドイツ製、中国製が多い。グラビア印刷機とフレキソ印刷機はイタリア製もある。日本製とドイツ製の人気が高い。プリプレスも日本製とドイツ製の人気が高い。
 ⑦プリプレスの設備は日本製が半分くらいで新台が100%である。CTPとCTcPの比率は、99%がCTPで、CTP化率は約60%。1年前から中国製のCTP機器が入ってきた。中国製の設備の評判も良い。価格も安いのでこれから増えると予想されている。
 ⑧印刷機械は約20%が新台、80%が中古機である。20%の新台のうち15%はドイツ製である。アフターサービスは中国とドイツ勢が頑張っている。日本メーカーのアフターサービスの対応は不足している。その中身は、訪問の回数、回答までの時間、納期、復旧までの時間、教育、ソフトの更新などである。
 ⑨ドイツ製より日本製は安いのとのことで、ドイツ製の方が人気があるのは価格の問題ではない。
 ⑩ドイツメーカーは宣伝、セミナーなどに力を入れており、知名度が高い。例として、ベトナムに駐在事務所があり、ドイツ人ひとりとローカルのメンバーで対応している。

 

 ⑪ポストプレス機器は日本製と中国製が多い。日本製は中古機が多いが、新台の価格が高いためと思われる。ベトナム市場では、中国製の新台または日本製の中古機という構図となっている。
 ⑫新聞は減ってくる(現在も減少している)。インターネットの普及が原因で、本も減少している。これもインターネットの普及が要因の一つである。
 ⑬パッケージ、ラベルは増加する見込みである。ラベル、紙の場合はオフセット印刷が80%、デジタルが今後伸びるだろう。その理由は、商品のデザインがよく変わり少量になるためである。プラスチックの場合は、フレキソ印刷かグラビア印刷であるが、フレキソ印刷が伸びる見込みである。グラビア印刷は溶剤、フレキソ印刷は水性で、水性の方が環境に良いこともある。グラビア印刷には規制もある。
 ⑭80%の会社はプリプレス機器、印刷機械、後工程機器を保有している。
 ⑮CTPの割合は上昇する。使いやすく価格も安価になっている。

 
 ⑯国営の印刷会社が安く受注するため印刷の価格が上がらない状況がある。ベトナム政府は国営企業を減らす方向にあり、株式会社化していく方向のため、利益を踏まえた経営の方向になっていくと思われる。
 ⑰日本のメーカーに期待することは、日本人と日本製の印刷産業機械を信頼しているので、設備をもっと使いこなせるような機能の説明やトレーニングを充実してほしい。時々現場に来て情報交換するとともに、アフターサービスをもっと充実してほしい。ドイツメーカーには、メーカーが認証した2人以上の現地メンテナンス要員がいなければ販売店として指定しない、という決まりのあるところもある。この方法は安心できる。ただし、ローカルメンバーの質に問題がある場合もある。
 ⑱海外メーカーは商談にかかわらず、セミナーやユーザー訪問に積極的である。
 ⑲賃金が上昇しているとはいえ、まだ上昇の度合いは低いので、自動化にはあまり関心がない。ただし、オペレーターが熟練すると賃金アップを要求してくる場合もあり、そういう点では自動化にも関心はある。
 ⑳ホーチミン市の本屋で印刷物を調査したが、ジャカルタ市に比べ、アート紙、コート紙、微塗工紙の印刷物の割合が多かった。

 

 

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