2015年08月22日

 厚生労働省によると人口構成の変化により死亡者数は年々増加しているものの、葬儀規模の縮小や参入事業者間の価格競争の影響により、2013年の国内の葬祭(フューネラル)ビジネス市場規模(事業者売上高ベース)は、前年比100・3%の1兆7593億2100万円となった。葬祭ビジネス市場は、法的規制がなく、特に初期投資を必要としないことから新規参入が比較的容易であるため、ビジネスへの新規参入が全国規模で進んでいる。近年は、流通小売業、鉄道業、JA(農業協同組合)、生活協同組合などの異業種企業・団体の参入が活発化しており、参入事業者間の競争は激化している――。
 矢野経済研究所が8月17日発表した「葬祭ビジネス市場に関する調査結果2015」で明らかになった。同レポートから葬祭ビジネスの市場分析を見よう。

 

 ■新規参入事業者の増加によって、葬儀費用の低価格化と支払方法の多様化が進展

 葬祭ビジネス市場は、法的規制がなく、特に初期投資を必要としないことから新規参入が比較的容易であるため、ビジネスへの新規参入が全国規模で進んでいる。これまで同市場では、冠婚葬祭互助会や専門葬儀事業者が数多く存在していたが、近年は、流通小売業、鉄道業、JA(農業協同組合)、生活協同組合などの異業種企業・団体の参入が活発化している。これら新規参入事業者の増加によって参入事業者間の競争が激化した結果、葬儀費用の低価格化と支払方法の多様化(ローンや分割払い等)が進展していると考える。

 

 ■多様化する葬儀スタイル
 ライフタイルの多様化や核家族化の進展等によって、葬儀のスタイルが多様化している。現在では、従来型の一般葬(出席者の範囲がより広い伝統的な葬儀)に加え、家族葬(通夜と告別式は行うが出席するのは家族や親しい親族とごく少数の故人の友人だけという内輪だけの葬儀)、直葬(通夜も告別式もせず火葬と遺骨の引き取りのみを行う葬儀)、樹木葬(遺骨の周辺にある樹木を墓標として故人を弔う葬儀)、散骨(粉末化した遺骨を海上や山林に撒く葬儀)など、様々なスタイルの葬儀が行われているが、葬儀会館で実施する小規模な「家族葬」の需要が高まっている。
 

 

 葬祭ビジネス市場は、高齢者の増加によって死亡者数は増加していること、また今後も新規参入事業者が増えていくことから、競争は一層激化するとみられる。また、葬儀会館数が飽和状態になりつつあること、既存の企業・団体も営業エリアの拡大を進めていることなどで、市場環境は一層厳しいものになっている。
 そのようなビジネス環境下で、各社とも差別化や地域密着化を図ろうとしているが、類似的なサービスも多く、自社の特徴を打ち出すことが難しくなっている。会員制度に関しても、カード等を発行し囲い込みを進めているが、提携と葬儀利用の強化にまで繋がっているとは言い切れず課題も多い。
 

 今後の葬祭ビジネス事業者の事業発展に向けて、進めていくべきポイントは以下の3点になると考える。
 

 ■終活関連情報ビジネスへ、積極的な参画を図る
 以前は、生前から死や葬儀、相続について相談することはタブーであった。しかし、近年、高齢者において、自分の死後の各種問題にどのように対処していくかについても、関心が寄せられるようになっている。終活セミナーは、この数年急激に開催頻度が増加しており、当面、2015年の相続税改正などから資産運用系を中心に、展開されていくものとみられる。より広い範囲の情報提供が求められる状況から、企業間のネットワークを拡大し、セミナーを始め様々なイベント展開を図っていくことが重要になる。ただし、葬儀がメインではなく、「セカンドライフ」を軸にした展開が重要になると考える。これは、葬儀をメインにすると、「死」を意識した人のみが対象になりやすいため、参加者の広がりを持たせられないからである。
 

 ■客層別・グレード別等、葬儀スタイルの違いの明確化を図る
 家族葬の増加に伴い、低価格の葬儀メニューの充実が図られている。そのため、昨今では、追加料金不要といった形の家族葬の告知が増加している。しかしながら、これらのメニューの多くにおいて、どこまで対応してくれるのか、どれだけの人数のスタッフが対応してくれるのかなど不明瞭な部分も依然として存在しており、これらのサービス内容の明確化が今後の課題の1つになると考える。
 それとともに、家族葬などの小規模葬儀のみがクローズアップされるようになっているが、従来型の一般葬を行うユーザー層や、こだわった葬儀を行うユーザー層も少なからず存在している。そのような状況から見ると、家族葬や小規模葬儀は、葬祭ビジネス事業者の認知を高めるための目玉商品としての位置づけにある。目玉商品としての家族葬はすでに認知されつつあるため、今後は客層やグレード別にあわせた葬儀メニューの展開と告知を進めていく必要がある。
 

 ■フューネラルサービスからライフエンディングサービスへのパラダイムチェンジが起こる
 葬祭ビジネスは、人の死を弔うために行われる葬儀を執り行うビジネスである。一方で、高齢者の増加などの社会構造に関する変化、孤独死の増加、家族構成員の減少、地域共同体との関係性希薄化、共同住宅居住者の増加などの生活環境に関する変化、終活ブームに代表される死に対する国民意識の変化などから、利用者の葬祭ビジネスに関するニーズは葬儀の運営だけではなく、葬儀の事前・事後を含むライフエンディングに関わる様々なニーズへと拡大していると考える。

 
 今後、葬祭ビジネスに関連する事業者は、自社の事業領域の捉え方を葬祭サービスからライフエンディング全般に関わるサービスへと変革(パラダイムチェンジ)し、葬儀の事前・事後のサポート強化に向けて、有形・無形のサービスをトータルでサポートする事業形態へと変化する必要があると考える。

 

 同調査での葬祭(フューネラル)ビジネス市場とは、葬儀式(祭壇、棺、遺影写真、収骨用具、ドライアイス、供物、供花、献茶・おしぼり、位牌、霊柩車・寝台車、送迎バス、式運営費、看板・事務用品)と会葬礼状、祖供養品、料理等を対象としている。

 
 

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