2015年08月22日

 日印機工がこのほどまとめた「平成26年度グローバル市場への展開のための課題対応および基盤整備に関する調査研究報告書」からインドネシア、ベトナムの印刷業界動向および日本製の印刷産業機械に対する要望を国別に2回にわけて探る。
 

賃金高騰で競争力低下 内需指向へ変化

 ■印刷市場
 インドネシアの印刷市場は2012年の53億米ドルに対し、17年には91億米ドルへ成長すると見込まれる。
 低賃金の作業者コストに牽引され、印刷物の輸出で競争力があり、中国の印刷物輸出ビジネスを獲得していたが、近年の物価上昇に伴った賃金の高騰により、他の東南アジア諸国(ベトナム、スリランカなど)に対する競争力が低下してきており、印刷産業は外需から内需指向へと変わってきている。

 

2012-17年に出版は14.9%、パッケージは13・2%成長の見込み

 ■NPESによる印刷産業の動向
 12年から17年において、印刷産業はすべてのセグメントで成長すると予想されている。
出版は同期間で、14・9%と全項目の中で最も高い成長が見込まれている。
 その成長要因として、経済状況の改善、都市化の加速、教育の質の向上により、書籍、新聞、雑誌といった出版物への需要が増加することなどがあげられる。中間層の増加が、教育関連書物、専門書、ビジネス書、技術書などへの需要も増やしている。
さらに経済状況の改善により、非従来品や広告・宣伝への需要も高めている。
 パッケージ分野も12年から17年まで13・2%で成長し、印刷産業で2番目に高い成長率と規模を有している。出版物と同様に経済状況の改善と都市化がパッケージへの需要を拡大すると予想されている。
 12年から17年にかけてすべての印刷関連機器分野で成長が見込まれている。オフセット枚葉印刷機が引き続きもっとも大きな割合を占め、17年に印刷関連機器合計のうち27%を占める見込みである。
 

オフ枚葉機の輸入はスイス、ドイツ、日本から

■JETRO印刷産業機械輸入データによる動向
 インドネシアの13年における印刷設備の輸入総額は約1・9億ドルで、前年度の1・3倍である。
 機種別にみると、印刷設備輸入総額のなかで、
 グラビア印刷機38・5%
 オフセット枚葉印刷機29・0%
 フレキソ印刷機16・2%、
 オフセット輪転印刷機9・0%
 その他7・3%
 を占めている。
 
 11年から13年までの3年間のデータを比較すると、オフセット印刷機はやや減少する傾向であり、グラビア印刷機は13年に入って急速に増え、12年の3倍以上の輸入額を示している。
 オフセット印刷機の中ではオフセット輪転印刷機よりオフセット枚葉印刷機の方が多く輸入されており、13年のオフセット枚葉印刷機の輸入額は約5600万ドルになっている。同年度のオフセット輪転印刷機の3倍以上の額である。
 日本からの13年の印刷設備輸入総額は約2900万ドルで、当年度輸入総額の15・3%を占めており、前年度に比べて約82%増えている。
13年の輸入金額を国別に比べると、
 スイス(19%)とドイツ(17%)の次に日本からの輸入(15%)が多い。そして、日本からもっとも多く輸入しているのはオフセット枚葉機(73%)で、13年の輸入額は11年比で約6倍の2100万ドルだった。

 

 印刷業界動向および日本製の印刷産業機械に対する要望は次のとおり。
 
 ①インドネシアは内需を中心に伸びると予想されている。他の東南アジア諸国との比較で国内の労働コストが高いためである。輸出では利益が出にくい。また、2億5千万人の人口を有し、国内需要が旺盛である。
 
 ②今後伸びると予想されいている分野は、本とパッケージ印刷である。本は主に教科書である。日本の小学校から高校生に相当する人口は約1億2千万人(総人口の約半分)といわれているが、現状教科書は4人に1冊程度の普及率。政府は、学校教育分野に20%の税金を割り当て改善を進めているとのことで、教科書の普及率アップもその対象となっている。
 
 ③本の紙は、多くが上質紙と思われる紙で紙質はよくない。書店で調査を行ったが、アート紙、コート紙の本は非常に少なかった。これはNPESの調査と一致している。
 
 ④本(教科書)は、コールドセット方式で印刷されているとのこと。国内の余剰な新聞印刷輪転機を活用しているとのことで、機械的な印刷キャパシティーは十分足りているとの見込みである。本の印刷の増加を見越した設備投資の可能性は低いと思われる。
 
 ⑤本(教科書)は、政府の方針で変わる可能性があることおよび季節性があることから、大手の印刷会社は安定した仕事とは捉えていない。
 
 ⑥インドネシアの新聞輪転機はサテライト式とのことで、各島にサテライトの印刷設備があり、個々の要求耐刷は低いとのことである。メインはポジプレートである。ただし、35万部などのロングランにはネガプレートを使用している。
 
 ⑦中古機械が約7割の市場である。日本製の新台は高価である。中国製や台湾製の約3倍とのことであるが、その価格でもビジネスになることを証明することが売り込みには重要である。
 
 ⑧日本メーカーにとって重要なことはアフターサービスである。日本の支社や日本人が駐在する必要はないが、ローカルでしっかり対応することを望む。サービスの良いメーカーもある。
 
 ⑨パッケージ印刷は、オフセットよりもフレキソが伸びると見通している。
 
 ⑩一般的な印刷物は高い品質を求められていないため、CTcP/コンベンショナルプレートで充分である。ただし、パッケージ印刷では洗浄剤などによるが画線部のダメージにより、これらの版はすぐに使用できなくなってしまうケースがある。
 
 ⑪機械の自動化にも関心はあるが、将来、人件費が高くなった場合の抑制手段としてで、現状は設備投資の対象とはなっていない。
 
 ⑫中小の印刷会社も生産性向上に寄与する設備を欲している。ただし、新台は高すぎる。中国製のセッター(CTcP)は、品質、アフターサービスにおいて十分である。
 
 
 

インドネシア、ベトナムの基本情報
インドネシア ベトナム
人口(百万人)(2013年) 250.8 89.6
名目GDP(米10億ドル)(2013年) 1,922 152.2
一人当たりGDP(米ドル)(購買力平価)(2013年) 5,150 3,790
実質GDP成長率(%)(2013年) 5.6 5.3
消費者物価インフレ(%)(2013年後半) 8.0 7.3
印刷市場(米百万ドル)(2013年) 5,671.2 950.7
印刷市場(年平均成長率)(2012‐17年) 11.2 4.2
識字率(%)(2009年) 92.6 93.2

(「平成26年度グローバル市場への展開の課題対応及び基盤整備に関する調査報告書」から作成。原資料はNPES)

 

ベトナムについては8月29日に掲載予定

 
 

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