2023年11月03日

令和5年秋の勲章受章者が発表され経済産業省推薦で印刷関係から、東京都印刷工業組合元副理事長の矢部一憲氏が旭日双光章、富士精版印刷㈱代表取締役社長の吉賀文雄氏が旭日単光章を受章。また北越コーポレーション㈱代表取締役社長CEOの岸本晢夫氏は、旭日中綬章の栄誉に浴した。

 

【旭日双光章】 矢部一憲氏

東京都印刷工業組合元副理事長、三松堂ホールディングス㈱代表取締役会長。77歳。

1996年4月の東京都印刷工業組合(東印工組)理事就任を皮切りに、2000年5月から平成14年5月まで常務理事、2002年5月から2008年5月まで副理事長の要職を歴任。参与・理事として現在に至る。また2002年5月から2008年5月まで、全日本印刷工業組合連合会(全印工連)常務理事、2008年5月から2014年5月まで参与を務めた。

矢部一憲

矢部一憲氏

この間、東印工組「経営革新委員会」を担当する副理事長に就任するとともに、全印工連「2005計画特別委員会」副委員長として、総合デジタルプロジェクトでの調査研究結果を基に、提言書「全印工連2005計画 e-Japanが迫る電子入札」の発行に尽力した。
同氏が提言した、IT基盤の整備と業種を超えたネットワークを構築し、印刷が核となって広告や流通などとパートナーシップを組むことで事業領域を広げる「共創ネットワーク」という新しい考え方は業界内に大きなインパクトを与えた。さらに全印工連に「業態変革推進企画室」を設置し委員長を務め、設備重視の製造業からサービス業や情報産業としての役割を担う情報価値創造産業への「業態変革」を推進した。
東印工組に「印刷産業ビジョン研究部会」を設置し多角的な観点で研究を行い、2004年に提言書『業態変革推進プラン 全印工連2008計画』を発行。情報の電子化・自社を客観的に見ること・生産性の向上・業種を超えたネットワークづくりを中小印刷業界の課題として明確化した。
2005年には、提言書『全印工連2008計画 第2ステージ 原点回帰』を発行。その中で自社の現状を確認するレーダーチャート「業態変革7Keys」を提供し、本業の印刷について見つめ直し、経営者自らが能動的に「変革」を起こすことで経営基盤の安定化に繋げ、新しいチャレンジへの足場作りに貢献。
2006年には、提言書『全印工連2008計画 第3ステージ 新創業』を発行し、顧客創造への具体的な取り組み方として「業態変革5Doors」を提示した。顧客ニーズに対応し、印刷物製作を中心としながらも企画から配送までをすべて請け負う印刷物一貫受注や、印刷から派生する商品やサービス、webへの展開など総合的に受注することで顧客が望む「ワンストップサービス」を実現することを掲げたもの。

 

 

【旭日単光章】 吉賀文雄氏

富士精版印刷㈱代表取締役社長。71歳。
外資系医薬・化学メーカー勤務後、1999年1月に富士精版印刷に入社し取締役に就任。2003年9月から2013年8月まで代表取締役社長。常勤顧問を経て、2017年9月から代表取締役社長に復帰して現在に至る。団体関係では大阪印刷工業組合の副理事長を4年間務めた。

吉賀文雄

吉賀文雄氏

富士精版印刷では、デジタル化が進んだ印刷工程でCTP(コンピュータによる印刷版への焼き付け)の出現を機に、微細な網点の密度で濃淡を表現するFMスクリーン技術による高細線印刷に取り組んだ。鮮やかで美しく諧調ゆたかな印刷物を顧客に提供し、その技術で製作した同社カレンダーは、毎年高い評価を得ている。医療に関するミスは重大で、ズレや色むらなどの印刷ミスが絶対に許されず、高い印刷技術が求められる医学書印刷も、同社が得意とする分野。
また10数年の歳月をかけ、印刷機械・印刷用紙・インキ・水質状態・温度・湿度などの分析・研究を行い、枚葉オフセット印刷の完全棒積み1万枚に成功し、印刷現場の省力化・省人化(2台2部制で20人から13人へと35%減少)を実現した。この技術を独占せず広く業界に公開し、印刷工場の生産性向上や枚葉印刷の高速化を可能とした。
湿し水循環システムが一般的なオフセット輪転印刷において、業界で初めて常温(冷却なし)・ワンウェイ(循環なし)に成功し、廃液が出ないようにするなど環境への負荷を軽減すると同時に、電気代節約など経済的な効果も出しており、技術をホームページで広く公開している。

PAGE TOP