2023年10月28日

矢野経済研究所は2023年4月から9月にかけて業務・産業向けプリンタの世界市場を調査し、10月2日に各出力機器の出荷台数・出荷金額、利用動向、参入企業シェア・動向、将来展望を明らかにした。
 

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業務・産業向けプリンタ世界市場推移と予測

 

同調査は、①荷物の送り状・伝票・複写用紙・契約書などの特殊用紙の印刷に特化した「シリアル・インパクト・ドット・マトリクス(SIDM)プリンタ」や②「ライン・インパクト・ドットプリンタ」、③ラベル印刷やデジタル印刷、オンデマンド(POD)印刷などが可能な「プロダクションプリンタ」、④A2判以上の大きさの印刷が出来る「LFP(大判プリンタ、インクジェット方式)」の業務・産業向けプリンタ4カテゴリを対象とした。2022年度の業務・産業向けプリンタ世界出荷台数は前年度比99・6%の128万3079台、出荷金額は同116・1%の8877億2100万円(いずれもメーカー出荷ベース)となった。

 

業務・産業向けプリンタは、新型コロナウイルスの影響による経済活動の停滞により、各カテゴリで出荷が一時的に落ち込んだ。コロナ禍の行動制限緩和とともに、企業の設備投資なども回復に転じたことで、出荷金額は回復基調となった。
各カテゴリ別に市場を見ると、出荷台数全体の6割以上を占めているSIDM市場とライン・インパクト・ドット市場は、用途が限られ、需要も減退していることから、出荷台数ベースでは前年度比で減少という結果となった。

 

一方、1台あたりの単価が高額で、出荷金額全体に占める割合が大きいプロダクションプリンタやLFP(インクジェット方式)は、デジタル印刷やオンデマント印刷、大判印刷などの需要が拡大しており、出荷金額ベースでは前年度比で大きく伸びている。

 

成長トレンドのプロダクションプリンタ市場とLFP(インクジェット方式)市場は回復、減少トレンドのSIDM市場とライン・インパクト・ドット市場は弱含みで、業務・産業向けプリンタ世界市場は製品カテゴリにより、明暗がはっきり分かれる結果となった。

 

UVプリンタの成長続く

 

 

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UVプリンタ世界市場推移と予測

 

紫外線で硬化する「UV硬化インク」を用いたUVプリンタは、プリントしながら紫外線(UV光)を照射し、瞬時にインクを硬化させるため、乾燥時間を必要としないというメリットがある。また、耐候性にも優れ、ガラスや金属などの紙以外のメディア、円筒など平面以外のものにも印刷することが出来る。

 

多様な用途、速乾性、幅広い製品ラインナップなどがユーザー企業に支持されており、国内の主要メーカーのいずれも、世界市場において順調に出荷台数を伸ばしている。2022年度のUVプリンタの世界出荷台数は前年度比115・4%の1万2359台、出荷金額は同109・6%の990億円となった。2023年度以降はラテックスプリンタなど、低VOCで環境に配慮した他製品の伸長もあり、市場の伸び幅は小さくなると考えるが、今後も成長は続いていくと予測する。

 

2023年度の業務・産業向けプリンタ世界出荷台数は、前年度比97・2%の124万6662台、出荷金額は同107・8%の9567億8300万円になると予測する。

 

2022年度と同様に、減少トレンドにあるSIDM市場の影響で出荷台数は減少する見込みである。一方、プロダクションプリンタ市場とLFP(インクジェット方式)市場では、下位モデルの需要増による裾野拡大や印刷用途が広がっており、出荷金額は増加する見通しである。その他、半導体不足を背景とした製品の供給不足やサプライチェーンの混乱などは徐々に緩和されているものの、市場はウクライナ問題による経済活動の停滞や、円安による輸出拡大・増収などの影響を引き続き大きく受ける見込みである。

 

同調査は、今年度から調査対象の出力機器を変更し、①シリアル・インパクト・ドット・マトリクス(SIDM)プリンタ、②ライン・インパクト・ドットプリンタ、③プロダクションプリンタ、④インクジェット方式のLFP(Large Format Printer:大判プリンタ)の4市場を対象としている。LFP(インクジェット方式)市場の内数には、テキスタイル専用プリンタ(ダイレクト捺染プリンタ、ガーメントプリンタ、昇華転写プリンタ専用機)や、ラテックスプリンタ、UVプリンタ、LFP(卓上・小型機)を含む。

 

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