矢野経済研究所は10月18日、国内のパッケージ印刷市場の調査を実施し、各市場・各需要分野の動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。
2022年度の国内パッケージ印刷市場規模(事業者売上高ベース)は1兆4,395億1,800万円であり、前年度比5.2%増と近年にない高い伸長率であった。コロナ禍の行動制限緩和に伴い、旅行やイベントなどへの外出が増えて人流が回復傾向となり、また政府の水際対策が大幅に緩和され、インバウンド需要が上向いた。景気が回復する中、総じて2022年度における軟包装・紙器需要は堅調であった。さらに、原材料費や物流費などが高騰する中で、コスト上昇分に対する価格転嫁効果も、2022年度の伸長における大きな要因の1つとなった。
2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行されたことによる人流のさらなる回復やインバウンド需要の本格回復などを背景に、景気は内需主導で持ち直しが続く見通しである。その中で、2022年度の流れを継続する形で、軟包装・紙器需要は拡大すると見込まれる。そのため、2023年度の国内パッケージ印刷市場規模は前年度比1.1%増の1兆4,550億円と前年度から引き続き拡大すると予測する。
原材料の品不足が顕在化 前倒し発注も相まって市場は混乱
2022年度の軟包装市場では、主に食品分野において原材料の調達危機による混乱が顕在化した。調達危機に陥った主な原材料は酢酸エチル、OPP(Oriented Polypropylene:二軸延伸ポリプロピレン)、アルミ箔、ナイロン(PA66)であり、2021年秋ごろから品不足が鮮明となった。また、それに重なるように、コロナ禍からの経済回復に伴い世界各地における原材料需要が拡大し、需要過多となっていたことも原材料不足をさらに深刻化させた要因であった。また、この需給バランスの崩壊が原材料の価格高騰を助長させた要因でもあった。
さらに、こうした原材料の品不足に加えて、調達不安や度重なる値上げを背景に、顧客(ユーザー企業)の前倒し発注が相次いだことで、コンバータ各社においても軟包装材の供給が滞った。原材料が入手困難な状況の中、顧客からの発注に対して、コンバータ各社が納期を提示できない状態が続いたことで、市場は2022年秋ごろまで混迷を極めた。
こうした前倒し発注により、2022年度上期における軟包装需要は旺盛であったが、原材料の供給状況が落ち着くとともにその反動減が出たこと、また、そもそも原材料を工面できず、需要の取りこぼしがあったことなどから、通期で見ると軟包装市場全体におけるプラス影響はほぼなかったと推測される。
2024年度の国内パッケージ印刷市場規模は、前年度比1.0%増の1兆4,695億円と予測される。コロナ禍の需要変動が一旦終了し、ある意味リスタートとなる紙器市場では、人口減少や省包装化、軟包装化といった従来からの構造的なマイナス要因がまた顕在化してくる可能性がある。一方、軟包装市場は食品やトイレタリー用品などの堅調な需要を背景に、引き続き微増から増加のトレンドで推移すると予測される。