2015年08月01日

日本政府観光局(JNTO)によると、2015年6月の訪日外客数は、前年同月比51.8%増の160万2千人で、これまで6月として過去最高だった昨年の105万6千人を約54万7千人上回った。上半期の訪日外客数は累計、前年同期比46%増の914万人に達し、これまで過去最高であった2014年上半期の訪日外客数626万人を288万人余り上回った。

 

上半期の訪日外客数が過去最高を記録した市場は、韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン。
これに対し出国日本人は上半期前年同期比7.8%減の118万9000人だった。

 

6月の増加要因は、夏休みシーズンの開始と継続的な訪日旅行プロモーションの展開に加え、かねてからの円安傾向、航空路線の拡大、クルーズ船の大幅な寄港増加、また近年の査証免除や要件緩和、昨年10月からの消費税免税制度の拡充などとしている。
市場別では、中国が全市場を通じて単月最高となる46万2千人に達し、米国は欧米豪市場で初めて単月10万人を超えた。その他にも台湾、香港が単月として過去最高、インドネシア、英国、ロシアを除く17市場が6月としての過去最高を記録した。 中東呼吸器症候群(MERS)の影響が懸念された韓国市場については、前年同期比21.2%増と伸び率が大きく鈍化したものの、6月の数値としては過去最高の25万2千人となった。

 

7月は、年間を通じて最も訪日外客数が多い月であるとともにに、今年は東アジアから40隻以上のクルーズ船の寄港が予定されているほか、7月28日から8月8日まで山口市きらら浜でボーイスカウトの世界大会である第23回世界スカウトジャンボリー(23WSJ)が開催予定であり、海外から2万5千人以上の参加が見込まれるなど、大きな上乗せ要因があることから、訪日外客数のさらなる増加が期待されている。

 

MERSの影響で訪問先を日本へ 中国からのクルーズ市場も好調

1.アジア
① 東アジア
韓国は、25万1500人で6月の数値として過去最高を記録したものの、前年同月比は21.2%増と 2015年上半期で最も低い伸び率となった。6月は閑散期である上、中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大で外出自体が控えられ、海外旅行需要全体が鈍化した。MERSの影響を受けて7月、8月には主要路線を中心に運休や減便が実施されるが、訪日旅行全体への影響は軽微と考えられる。むしろ主要路線における航空会社や旅行会社の予約状況は好調で、訪日需要が拡大することが予想される。

 

中国は、前年同月比167.2%増の46万2300人で、単月として過去最高を記録し、全市場を通じて初となる単月50万人に迫る勢い。クルーズ市場も好調で、コスタ・セレーナ(乗客定員3780人)、クァンタム・オブ・ザ・シーズ(乗客定員4180人)をはじめ30本が寄港した。韓国でMERSの感染拡大が取りざたされた6月中旬以降は、訪問先を韓国から近隣国へ変更する動きがあり、訪日についてもFIT(個人旅行者)を中心に需要が上乗せされたほか、クルーズでも韓国から日本に寄港地を変更したケースが見られた。鄭州-関西便(週3便)、鄭州-静岡便(週2便)、合肥-名古屋便(週3便)など地方都市からの新規就航も相次いでおり、旺盛な訪日意欲が日本各地に需要を広げている。

 

台湾は、前年同月比35.8%増の34万5200人で、単月として過去最高を記録した。LCC(格安航空会社)との共同広告や旅行博出展等の訪日プロモーションと、継続する円安傾向や航空路線の増便等の環境要因が相まって、安定した需要の確保に貢献した。6月は長榮航空の台北-札幌便増便(週7→週11便、6月29日から)、タイガーエア台湾の台北-那覇便就航(週3便、6月29日から)、中華航空の台北-花巻定期チャーター便運航(週2便、6月26日まで)等、地方路線が拡充された。また、韓国でのMERSの感染拡大に伴う台湾-韓国間の航空路線の減便などによる日本への訪問先変更も需要の上乗せ要因となった。

 

香港は、前年同月比75.4%増の13万7000人と大幅に増加し、単月過去最高を更新した。夏休みの旅行シーズンを前に、LCCのピーチ・アビエーションの香港-那覇便(週4便が週5便)、香港エクスプレスの香港-関西便(週14便が週21便)がそれぞれ増便する中、旅行価格の高騰を避けて夏休み前に訪日した旅行者や、韓国でのMERSの感染拡大を受けて訪問先を日本に変更した旅行者が需要を押し上げた。香港旅遊業議会(TIC)が韓国への団体旅行中止措置を6月半ばから実施しており、さらにこれを7月末まで延長すると発表したことから、訪日旅行需要のさらなる増加が見込まれる。

 

北海道ツアー伸びる 「日本」のイメージも浸透

 

②東南アジア
タイは、前年同月比19.5%増の4万3400人と6月として過去最高を記録した。6月が北海道訪問のベストシーズンであるとの認識が、タイの消費者に浸透してきたことにより、旅行会社では北海道ツアーの売れ行きが伸びてきている。5月にタイのエア・アジアXのバンコク-札幌便が新規就航したことによる利便性の向上と露出の増加も、需要を後押ししたものと思われる。しかしながら、国際民間航空機関(ICAO)が再度タイの運航審査体制への重大な懸念を表明したことから、エア・アジアXは同便の運航の先行きが不透明になったとし、7月末での運航打ち切りを決定した。

 

シンガポールは、前年同月比25.3%増の2万9200人で、6月として過去最高を記録した。今年は6月1日(月)が仏誕節の祝日であったため、月初から家族旅行がしやすい日の並びとなった。旅行博「NATAS Travel2015 (3/6-3/8)」や「Travel Revolution(4/3-4/5)」に合わせて掲載した共同広告には、延べ 500万人以上が接触したと推測される他、多数のビジット・ジャパン(VJ)関連事業の開催を予定しており、一過性で終わらない訪日意欲の喚起により、今後も需要増加を目指していく。

 

マレーシアは、前年同月比8.6%増の1万8500人で、6月として過去最高を記録した。新たな物品・サービス税(GST)の導入やリンギット安が消費意欲に歯止めをかけており、マレーシア発のアウトバウンドが対前年度割れする中でも、訪日は対前年度比増となっている。堅調な国内経済を反映し、特に企業の報奨旅行が多く催行された。
近年認知度の高まっている北海道のラベンダーツアーが7月にシーズンを迎えるため、それに伴う旅行需要の拡大が見込まれる。

 

インドネシアは、継続する米ドル高・ルピア安や経済成長の停滞を背景として海外旅行者数が減少する中、訪日者数は前年同月比9.2%増の 1万7100人を記録した。今年は、6月から始まる学校休暇と7月のレバラン休暇の日程が近づき、需要の一部が7月に先送りされたことにより、6月の伸びが一桁に留まったとみられる。査証免除や円安の効果に加え、JNTOではラマダン明け休暇を見据えた旅行博や共同広告事業を多数展開しており、7月の訪日需要獲得に貢献すると考えられる。

 

フィリピンは、前年同月比38.6%増の1万8600人となり、6月として過去最高を記録した。
独立記念日を含む3連休、航空会社各社による期間限定のプロモーション価格での航空券販売が、訪日需要を刺激する要因となった。査証緩和や円安の効果、旅行博等における継続的なプロモーションにより訪問先の選択肢としての「日本」のイメージが浸透しつつある。

 

ベトナムは、前年同月比52.7%増の1万3000人で、42カ月連続で各月の過去最高を更新した。福島へのチャーター便がホーチミンから3便、ハノイから1便運航され、訪日客数増に貢献した。加えて、MERSの影響で訪韓取り止めが相次ぎ、振り替え先として訪日需要が高まる結果となった。7月は学校の夏季休暇を利用した家族旅行や、企業の報奨旅行が計画されるシーズンである。共同広告の展開やSNSによる情報発信等、訪日プロモーションを強化し、需要拡大を図っていく。

 

インドは、前年同月比15.9%増の8600人となり、6月の数値として過去最高を記録した。
インドの景況感指数の上昇や円安基調の継続が、北部と東部の学校休暇による家族旅行需要増加の追い風となった。昨年から継続中の広告宣伝事業や商談会等により、訪問先としての「日本」の認知度向上に努め、需要増加を目指していく。

 

米国、単月初の10万人超え 訪日旅行の割安感が定着

2. 豪州、北米
豪州は、前年同月比 7.7%増の2万2700人と、6月として過去最高を記録。6月は閑散期であり、例年通り、訪日ツアーの造成も多くはない状況下で堅調に推移した。豪州では6月末から冬休みが始まるため、7月は家族層を中心に訪日需要の増加が見込まれる。今年1月の日豪経済連携協定(EPA)の発効を契機として、日豪間のビジネス客の往来も活発になっており、継続的なプロモーションとの相乗効果で更なる需要獲得を図っていく。

 

米国は、前年同月比16.2%増の10万2100人で、欧米豪市場で初となる単月10万人超えを記録した。6月は、もともと年間を通じて最も訪日旅行者数の多い月であるが、燃油サーチャージの引き下げや円安を背景とした訪日旅行の割安感の定着に加え、年明けからのニューヨーク、ロサンゼルスでの旅行博出展、ニューヨークでの消費者イベントの実施、共同広告事業など、VJ事業の継続による日本への関心の高まりが、数値を大きく押し上げた。

 

カナダは、前年同月比31.3%増の1万6700人と大幅に伸び、6月として過去最高を記録した。
5月からエアカナダのバンクーバー-関西便の就航や、昨年10月末から運休していたトロント-成田便の再開などにより、日加間の航空便数は過去最高となっている。VJ事業の効果や円安の継続、堅調なカナダ経済など様々なプラス要因が訪日需要を後押ししている。

 

7月末山口の「世界スカウトジャンボリー」に期待 割安感が需要を後押し

3. 欧州
英国は、前年同月比11.9%増の1万6800人と、ここ数カ月の伸びに比べてやや小さいが、6月として過去最高を更新した。安定した航空運賃やメディアにおける日本の露出拡大が増加要因となった。なお、7月末にはボーイスカウトの世界大会である「世界スカウトジャンボリー」が山口県で開催される予定である。特にボーイスカウト発祥の地である英国からは多くの参加が見込まれており、7月の旅行者数を大きく押し上げる要因になりうる。

 

フランスは、前年同月比17.3%増の1万3500人で、6月として過去最高を記録した。本格的なバカンスを目前に控えたこの時期、円安を背景とした訪日旅行の割安感の定着が需要増加を後押ししている。7月初旬には「Japan Expo」に出展しており、Facebook での情報発信や共同広告事業と合わせて今後の需要拡大に資するものと思われる。

 

ドイツは、前年同月比11.4%増の1万0500人で、6月として過去最高を記録した。年初に現地の旅行見本市に出展したことや、法人向けセミナーで訪日旅行商品の販売強化を行ったことが奏功した。7月は夏季休暇が始まるため、学生を中心に個人旅行の増加が期待できる。

 

イタリアは、前年同月比28.8%増の6400人で、6月の過去最高を記録した。旅行博出展、セミナー開催や共同広告事業など継続したプロモーションの成果が訪日旅行需要の増加に貢献している。また、5月1日に開館したミラノ国際博覧会日本館は、2カ月で54万0000人を超える来場者を記録する人気のパビリオンとなっている。日本の認知度が高まる中、今後も引き続き訪日旅行需要喚起に向け効果的なプロモーションを模索していく。

 

ロシアは、前年同月比24.0%減の3800人で、制裁に伴う国内経済の低迷が尾を引いている。6月が閑散期であることに加え、極東発の沖縄チャーター便数が昨年に比べ減少したこと、ロシア政府が国内旅行の支援を強化したことが減少拡大の要因となった。しかし、他の欧州及びアジア諸国と比較して日本の落ち込みは浅く、経済情勢の好転による早期回復が望まれる。

 

スペインは、前年同月比52.7%増の5300人で、6月の数値としては過去最高となった。日西交流400周年記念事業の成果や訪日プロモーションの拡充、また新たに運用を開始したスペイン語 Facebook による情報発信が日本全体の認知度向上に貢献している。加えて、スペイン経済の回復基調と昨年から続く円安傾向が追い風となり、訪日旅行需要が高まっている。

 

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