2023年09月23日

㈱製紙パレット機構(岩田憲明社長、東京都中央区)は、平判の紙やコピー用紙を輸送するための製紙パレットの全国無料回収を行っている。製紙パレットは側面に記載されている製紙会社の所有物だが、国が「物流の2024年問題」主要な対策のひとつとして「パレット化の推進」を打ち出していることもあって、不正流用が絶えない。こうしたことから同社では、新しく「返して! 行方不明の『製紙パレット』戻らなくて困ってます!」と訴えるチラシを作成。製紙メーカーと連携して配布・啓蒙に努めている。回収率は2022年度64・4%(前年度比1・9ポイント増)。2023年4~7月期で67・8%と啓蒙活動などにより回収率は向上しているものの3割強のパレットが返却されていない。岩田社長に物流の2024年問題、流用事例、法的問題、啓蒙活動について語ってもらった。

 

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製紙パレットの返却を訴えるチラシ

2024年問題と不正流用の増加

昨今、物流の2024年問題が大きな話題となっている。2024年4月からトラック運転手の時間外労働時間が960時間に制限されるため貨物の約14%が運べなくなると試算されている。
実施まで約半年となり、これは大変とばかりに国や企業挙げて真剣に対策に取り組んでいるが、その中のひとつに「パレット化の推進」がある。
暑い中、手積み手卸しで滝のような汗をかきながら何時間も苦労して運転手が荷物を降ろしているのを見るが、このようなドライバーの作業の負荷軽減は、拘束時間の短縮のためにも喫緊の課題といえる。
「製紙パレット」とは、平判の紙やコピー用紙を輸送するための木製のパレットで、側面に記載されている製紙会社の所有物であるが、その対策の影響を受けて、昨今、印刷会社などで不正流用が増加している問題がある。

市中から集めて流用の悪質ケースも

巷間話題となっているビッグモーターの問題も、発端は千葉県の支店からの内部告発であったそうだが、最近、弊社にも輪転印刷会社のある社員から連絡があった。その会社は巻取印刷主体のため、本来なら製紙会社から製紙パレットは持ち込まれないが、自社の印刷物の物流のため製本会社や新聞折込広告会社、ダイレクトメール会社から空いた製紙パレットを積極的に不正回収し、自社の印刷物の物流に違法利用しているという。
このケースは、貸与されたパレットを返却しないのではなく、市中から製紙会社の財産であるパレットを無許可で大量に集めていること、印刷会社の納入先からさらに何回も繰り返して回収し、製紙会社にはボロボロになるまで返却しない点で悪質である。

パレットは紙の売価には含まれない

世の中に一般的に流通しているパレットであるが、それを所有者に許可なく不正に利用すると、次のような法的問題が生じ、経営に重大な影響を与えるコンプライアンスリスクを含んでいるので注意しなければならない。
製紙パレットは紙の売価には含まれておらず、印刷会社が加工を終わるまで貸与されているので、印刷加工後は速やかに返却しなければならない。それを自社製品の物流に使用するのは「業務上横領罪」にあたる可能性がある。また、市中から製紙パレットを不正に回収する行為は「盗品等無償譲受罪」になる可能性がある。
印刷物の納品先である製本会社、新聞折込広告会社、ダイレクトメール会社が、さらに自社物流に利用するのも「業務上横領罪」にあたる可能性があるが、それを再度印刷会社に返却するために保管する行為も「盗品等保管罪」に該当する可能性がある。印刷会社から持ち込まれた製紙パレットは印刷会社に返すのではなく、本来の所有者である製紙会社に返却しないと違法となるリスクがあり注意しなければならない。

チラシ・広告で回収システムを啓蒙

もちろん、すべての印刷会社の話ではなく、ほとんどの印刷会社は自前のパレットを調達し、不要になった製紙パレットをしっかり返却していているが、中には製品の売価に含まれていると誤解して利用する取引先の人も一部にはいるようだ。
製紙会社は紙代理店・卸商を通じてパレットの扱いについても契約書や覚書に明記したり、営業が商談時に説明を加えれば、このような誤解を生じないと思う。
微力ながら弊社でも、印刷、 物流業界新聞への広告や「FAX DM」や回収業者によるチラシ配布などで、製紙会社のパレット回収システムについて今まで以上の啓蒙活動を行っていく所存である。

素晴らしい料理は良いお皿でこそ

 

今年6月に経済産業省・農林水産省・国土交通省から出された「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」の中では、パレットなどを活用し荷役時間などを削減することを推奨しながらも、「他社が所有するパレットなどを活用する場合には、本来の目的以外で使用せず、使用後は所有者などに適切に返却する」と明記されている。
素晴らしい料理は良いお皿に盛りつけられてその価値が一層増すが、いくら素晴らしい印刷をしても、その印刷物が不正に調達されたパレットに載せられて出荷されていたのでは浮かばれないと思う。
製紙メーカーも私どもも日本の印刷・出版文化のますますの興隆発展を願っているが、苦労して印刷加工した最終製品の出荷の段になって、長年築いた信用を損なうことのないようにお願い申し上げたい。

 

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