2023年09月23日

 WAN-IFRA(世界ニュース発行者協会)など世界の報道・メディア26団体は9月6日、生成AIの開発者や規制当局対し「知的財産権」の保護や「透明性」の確保などを求める「世界AI原則」を発表した。生成AIは社会に利益をもたらす可能性がある一方、ジャーナリズムに対する信頼を揺るがし、民主主義の健全性を損なうリスクにもなり得ると指摘。AIの開発や規制に適用されるべき考え方として「知的財産」「透明性」「説明責任」「品質と誠実性」「公平性」「安全性」「設計」「持続可能な開発」に係る12項目に渡る問題を示した。日本新聞協会も同原則に賛同し、署名している。
 

 同原則の日本新聞協会仮訳から「知的財産」「透明性」「説明責任」についてのポイントを見よう。
 

 【知的財産】
 1)AIシステムの開発者、運用者、導入者は、権利者によるオリジナル・コンテンツへの投資を保護する知的財産権を尊重しなければならない。この権利には、適用されるすべての著作権と付随する権利、その他の法的保護に加え、コンテンツへのアクセスやその利用に対して権利者が課す契約上の制限や制約が含まれる。
 AIシステムの開発者、運用者、導入者、ならびにAIを規制する法律や政策の起草に携わる立法者、規制当局、その他の関係者は、クリエーターや権利者の生活を守るために、クリエーターや権利者が所有するコンテンツの価値を尊重しなければならない。
 2)発行者は、知的財産の使用について十分な報酬を交渉し、受け取る権利がある。AIシステムの開発者、運用者、導入者は、明示的な許諾なく、クリエーティブ・コンテンツをクローリングし、取り込み、使用すべきではない。AIシステムによる知的財産の学習、表示、合成のための使用は、通常、権利者のオンライン利用規約で明示的に禁止されており、既存のライセンス契約ではカバーされていない。
 開発者がある目的(例えば、検索のためのインデックス作成)のためにコンテンツのクローリングを認められているとしても、LLM(大規模言語モデル)に学習させるなど他の目的での知的財産の使用については、明示的な許諾を求めなければならない。これらの契約はまた、AIシステムがクリエーター、コンテンツ所有者、一般市民に引き起こす可能性のある、あるいはすでに引き起こしている損害についても考慮すべきである。
 3)著作権および付随する権利は、コンテンツ制作者および所有者を、コンテンツの無許諾使用から保護する。保護された著作物をAIシステムで使用することは、他の場合と同様に、著作権や付随する権利、規約上の許諾をめぐる関連法の順守の対象となる。AIシステムで使用するためのコンテンツへのアクセスが合法的であることを保証するためには、関係する権利者による適切なライセンスと許諾など、権利者がその権利を効果的に行使し、該当する場合には帰属と報酬を要求できることが不可欠である。
 4)クリエーターと権利者のコンテンツをライセンスする既存の市場を認識すべきである。発行者の正当な知的財産権益を評価することは、AIのイノベーションを阻害するものではない。
 

 【透明性】
 5)AIシステムは、クリエーター、権利者、利用者にきめ細かな透明性を提供すべきである。
 AIシステムの開発者に対して、発行者のコンテンツや関連するメタデータを、それらがアクセスされた法的根拠とともに詳細に記録し、コンテンツが学習用データセットに含まれている場合、発行者がその権利を行使するために必要な範囲でこの情報を利用できるようにすることを義務付ける強力な規制を設けることが不可欠である。正確な記録を保存する義務は、学習やテストが行われた際の司法管轄権に関係なく、コンテンツ使用の完全な流れを提供するために、AI開発の開始時点まで遡るべきである。
 非営利団体、研究機関、教育機関などの第三者が開発したデータセットやアプリケーションが、商用AIシステムの原動力として使用されている場合、発行者が権利を行使できるように、このことを明確に開示しなければならない。
 開発者が知識から知識を生成するプロセスの構成要素としてAIツールを利用する場合、元のコンテンツの発行者の条件に適切に従った明確な帰属表示をはじめとする適切かつ明確な説明責任と出所の仕組みを含めて、これらのツールの適用に関する透明性が確保されるべきである。
 

 【説明責任】
 6)AIシステムの提供者と導入者は、システムのアウトプットについて説明責任を確保するため協力すべきである。情報コンテンツや科学コンテンツの品質と正確性について、AIシステムは競争と社会的信頼をめぐるリスクをもたらす。このリスクが、AIシステムが発行者に誤った情報を不適切に帰属させるコンテンツを生成することによって、さらに悪化する可能性がある。情報コンテンツや科学コンテンツを提供するAIシステムの導入者は、説明責任を果たすために必要かつ関連性のあるすべての情報を提供すべきであり、有限責任制度や免責条項を含め、そのアウトプットに対する責任追及から保護されるべきではない。
 
 

PAGE TOP