2023年08月04日

エコスリージャパン㈱(本社・東京都品川区、岡本勝弘社長)は7月28日、㈱共立アイコム(本社・静岡県藤枝市高柳1の17の23、小林武治社長)で「速乾印刷は10年後も意識を変える!経営を変える!」と題した内覧会を開催した。

この内覧会では、2013年1月に現像レスCTPプレート「アズーラ」を採用したことを契機として「速乾印刷」技術を確立したことにより印刷生産現場から年間で2000万円超のコスト削減することができた共立アイコムが、それから10年後も継続されている速乾印刷の効果とその要因を、講演と印刷現場見学をとおして紹介した。

また、速乾印刷に取り組んだことで、社内の意識変革や経営改革につながった点についても語られた。

 

エコスリージャパンの岡本社長

エコスリージャパンの岡本社長

会の中であいさつに立った同社の岡本社長は「当社が“速乾印刷”を印刷業界で提唱し始めてから10年以上が経ったが、おかげさまでこの考え方に賛同していただいたユーザー様の数やプレート出荷量は着実に増えている。この10年を振り返ると、提唱をし始めた頃は“インキ乾燥が速い”という点に着目して導入されるケースが多かった。しかし昨今は、印刷資材の価格高騰が相次いでいることから、印刷生産現場のコスト削減をしたいという傾向が強まっている。そのような観点から、“速乾印刷”を実現・運用することで少しでもコストを下げることを狙い、導入するケースが増えてきている。プレートを変える際にはいろいろな手間や労力がかかるかもしれないが、今の状態から変えたくないという思いがあると、今の状況から抜け出すことはできない。今いる場所から踏みだして新たな変化を加えること、すなわちプレートを変えて速乾印刷をすることで大きなコスト効果を得るために、ぜひ一緒に変革を進めていきましょう」と述べた。

 

同社が提唱する「速乾印刷」とは、▽既設印刷機を新台時の状態に近づけるべく徹底的にメンテナンスするリセット作業、▽印刷機を正しい状態に保ち続けるための定期的なメンテナンス方法の確立--をした上で、均一で細かくて浅い砂目という特徴を持つ現像レスCTPプレート「アズーラ」を使って印刷することで、印刷時にプレートが余計な水を抱え込むことなくなることから湿し水量を最小限に絞ることができ、薄いインキ膜圧でも濃度が出ることからインキ乾燥が速くなるもの。

同社では「アズーラ」の販売だけにとどまらず、印刷機のリセット作業やメンテナンス方法を確立するためのコンサルティングも展開している。

オフセット印刷の原理原則をあらためて追究したこの技術を習得することで、単に油性印刷でインキが速く乾くということだけでなく、▽刷り出しが良くなることによる損紙の削減、▽インキ・パウダー・エッチ液の使用量削減、▽ローラーやブランケットの長寿命化--といったコスト削減効果が見込まれるほか、印刷の安定化による高速稼働の実現やインキ乾燥時間短縮にともなうジョブ替え時間の最適化、ドンテン打ち返し印刷による高効率生産体制の構築などにもつながる。

 

共立アイコムの小林社長

共立アイコムの小林社長

「アズーラ」の採用および速乾印刷への取り組みを開始した経緯について共立アイコムの小林社長は、「最初は2012年に、電話営業でアズーラと速乾印刷について紹介された。その説明によると、印刷品質は上がる、印刷機の回転数は上がる、インキの乾きが良くなる、インキやパウダーの使用量は減るなど、メリットだらけでとても疑わしかったのだが、とは言ってもそれをまったく検証しないというのは経営者としてどうなのかと思い、検証してみることにした。速乾印刷についてのセミナーや見学会に、印刷オペレーターのほぼ全員に行ってもらったところ、“あれならウチでもできる”という声が返ってきた。今から振り返ると、印刷オペレーター陣が実際に見て、納得して、やってみたいと思ったことが大事なポイントだった。検証をしてから1ヶ月もすると明らかに数字で結果が表れたので、2013年3月にオフ輪3台、枚葉オフセット印刷機5台のプレートすべてを一気にアズーラに変えた。現在、当社では電気使用量を削減する取り組みも始めており、現在稼働する3台14胴の枚葉オフセット印刷機のうちのメイン機については、平均ジョブ替え時間は8分以内、平均印刷速度は毎時1万5000回転超を出し続ける必要がある。このような高速ジョブ替え・高速印刷ができるのもアズーラによる速乾印刷技術があるからだ」と語った。

 

共立アイコムの大石取締役

共立アイコムの大石取締役

また、速乾印刷の効果について大石修取締役製造統括は、「2013年1~2月を印刷機のリセット作業などの準備期間に充て、3月から速乾印刷を本格始動させた。最初に菊全判8色機のリセット作業を、休日の午前9時から午後11時までかけて、印刷オペレーター全員で行った。すぐに結果が顕れるのでモチベーションが上がったが、大事なことは数字としてその効果を表すこと。そうしなければ評価されないからだ。そこで、いろいろなものの削減効果や時間短縮による人件費などをコスト換算して算出した。予備紙・インキ・パウダー・アルコール代替品などの削減、印刷機の回転数向上・ジョブ替え時間短縮・清掃時間の減少による生産性向上、ドンテン打ち返し印刷による刷版数・印刷事故の減少によるコスト削減、ブランケット・ローラーの長寿命化による交換頻度減少といった諸メリットが得られたことで、速乾印刷開始から4年間でのコスト削減額が月平均で170万円超/年平均で2000万円超にのぼった」と、具体的なエピソードや数値グラフを示しながら解説した。

また、数値としては表れない効果として、日常の定期メンテナンスへの意識が高まるとともに、メンテナンス手法の確立、さらにはメンテナンスの手順書の作成や作業動画を共有することで、印刷オペレーター陣全員で標準化できたことを挙げた。

 

共立アイコムでは、CTP「アバロンN8-90」にに、1200枚積みのプレートをパレットのまま直接装填できるシステム「エキスパート・ローダー」を接続している

共立アイコムでは、CTP「アバロンN8-90」に、1200枚積みのプレートをパレットのまま直接装填できるシステム「エキスパート・ローダー」を接続し、プレート装填作業の省力化を図っている

共立アイコムでは印刷機のA能率『通し数÷本作業時間』・B能率『通し数÷(段取り時間+本作業時間)』の2つの指標を重視し、すべての印刷オペレーター/印刷機ごとにそれらを算出している。

それによると、速乾印刷を始めたことで2013年に急上昇したその両指標について、それからの10年間で印刷オペレーターの新規入社/退職者による入れ替え・人員減少があったものの、速乾印刷技術とチーム文化は維持・継承されたことから、現在の指標の方が2013年よりも明らかに高い数値を示している。

 

共立アイコムでは2022年12月、国内では初となる毎時2万回転の超高速で両面印刷ができるKoenig&Bauer社製両面兼用8色印刷機「Rapida106X」を導入した。

この印刷機を導入する際、「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」を受けたが、それにあたって、「設備更新により関連事業所での電力使用量を30%以上削減する」ことが要件となったことから、先に挙げた指標に加えて電気使用量削減についても計測を始めている。

 

印刷・生産をしない待機時間やジョブ替え時間は極力短く、そして印刷物1000枚あたりの電力消費量は印刷機の稼働速度が速ければ速い程小さくなることから、本稼働時の回転速度は可能な範囲で高めることが求められる。

試算によると、ジョブ替え時間は10分以内(平均印刷ロット4000~5000通し)、平均印刷速度は毎時1万5000回転以上とすることが、要件の実現に必要となる。

これについて大石取締役は「7月のここまでの数値は、ジョブ替え時間は平均で8.3分、平均印刷速度は目標値を少し下回っていて約1万4000回転となっている」と明かした。

Rapida106Xでの速乾印刷の実演のようす

Rapida106Xでの速乾印刷の実演のようす

続けて「実際の仕事で、毎時2万回転という印刷機の最高速で印刷した実績もある。速乾印刷をすると色合わせが早くなるとともにインキの紙離れも良好になるので超高速稼働との相性がとても良い」という評価を示した。

 

印刷現場見学では、デモンストレーション運転ではなく実際の仕事をしている状況を披露。

その時の仕事では、主力機となる「Rapida106X」で両面4色の印刷物を毎時1万8000回転で生産。

色合わせの早さや、工場内のパウダー飛散量の少なさ、チョコ停がない安定した稼働、刷り上がり品質の高さとインキの乾燥具合といったアズーラによる速乾印刷の効果が、実際に日々の仕事でふんだんに発揮されていることが示された。

 

 

 

 

技術・製品-関連の記事

PAGE TOP