2015年07月23日

DSCN3454 北島社長

北島社長

大日本印刷㈱は7月21日午前11時半から東京・丸の内のクラブ関東で印刷マスコミと懇談し、平成27年3月期の業況、①知とコミュニケーション②食とヘルスケア③環境とエネルギー④暮らしとモビリティの4つの成長領域などについて北島義俊社長が説明した。4つの成長領域拡大の目安として3年後の平成30年3月期にROEを5%に、営業利益を800億円とする目標を掲げている。同社の平成27年3月期の業績は、連結売上高は前年同期比0・9%増の1兆4621億円、営業利益は同3・8%減の481億円、経常利益は同0・9%増の537億円、純利益は同5・0%増の269億円だった。

 

 

北島社長は「昨年度の国内経済は、政府の経済対策や日銀の金融緩和を背景にして緩やかな景気回復基調が続いたが、消費税率の引き上げなどに伴う個人消費の伸び悩みや、円安による原材料などの輸入品の価格高騰もあり、本格的な景気回復には至らなかった。印刷業界では需要の伸び悩みや、競争激化による受注単価の下落、原材料価格の上昇などによって引き続き厳しい経営環境が続いた」と前置きして、同社の業況、今後の戦略などを説明した。

 

好調だった生活・産業部門

 

北島社長によると、情報コミュニケーション部門は、DNP柏データセンターを活用した決済サービスや企業の業務プロセスを代行するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などのソリューション開発に務め、電子マネーなどのICカードが大幅に増加した。
昨年7月に全国の営業や製造を一元管理する体制に再編し、サービスの価値向上や生産の効率化に注力した。
DNPの書店グループは、図書館事業の拡大などもあって収益が改善した。
一方で消費税率アップの影響によって出版印刷やチラシ、カタログなどが低迷し、用紙価格の値上がりもあって当部門の売上高は前期比0・2%減の6989億円、営業利益は同36・7%減の75億円となった。

 

生活・産業部門は、写真プリント用のインクリボンや包装関連の事業で、2013年に海外の生産拠点を開設してグローバル化を進めるなどさまざまな構造改革に取り組んでいる。
2015年3月期は消費税率引き上げなどで国内の個人消費が振るわずに、紙のパッケージが伸び悩み、住宅着工戸数の減少によって建材が減少した。
しかし、構造改革の成果もあって写真プリント用のインクリボンが海外市場を中心に拡大し、ペットボトル用無菌充填システムの売上も増加した。
その結果、この部門の売上高は前期比2・5%増の4794億円、営業利益は同10・5%増の239億円となった。
写真プリント関連の製品や生活者向けサービスが好調なイメージング・コミュニケーション事業について、企業や生活者向けのサービスを強化していくため、今年4月に生活・産業部門から情報コミュニケーション部門に移行した。

 

エレクトロニクス部門については、昨年4月にディスプレイ製品やフォトマスクなどの事業部と光学フィルムなどの事業部を統合して新製品開発の強化と収益性の向上に努めた。
液晶カラーフィルターはモバイル機器用の中小型サイズが減少したが、4Kテレビなどの大型向けが増加した。
光学フイルムは偏光板向けフイルムが大型テレビやスマートフォン向けに増加した。
フォトマスクは海外事業の取り込みに努めたものの国内向けが伸び悩んだ。
その結果、この部門の売上高は前期比0・7%減の2303億円、営業利益は同2・7%減の244億円となった。
清涼飲料部門は、新商品の投入や、主要ブランドの販売増加に努め、ミネラルウォーター「い・ろ・は・す」が大幅に増加した。
その結果、売上高は前期比8・8%増の596億円、営業利益は同65・2%増の10億円となった。

 

既存の事業部門の枠を超える「ABセンター」設け事業開発

 

今年度平成28年3月期については、売上高は3・3%増の1兆5100億円、営業利益は7・9%増の520億円、経常利益は2・3%増の550億円、当期純利益は11・4%増の300億円とする計画で現在、その目標の達成に向けてグループをあげて取り組んでいる。その中でも特に力を入れている成長領域が4つある。

 

DNPが目指す「未来のあたりまえを作る。」とは、企業や生活者、社会の課題を解決する製品やサービスを開発し、それらが当たり前に身の回りにあるようにすることである。
その実現に向けては、どのような未来になるのではなく、どのような未来にしていきたいかという志をもってDNPが主体となって多くのパートナーとともに挑戦し続けていく必要がある。一人ひとりが生活者の視点に立って国内だけでなく、世界各地でこれまでの事業の価値を高めていくとともに新しい事業の柱を育成していくことが重要である。

 

強みとする印刷技術と情報技術を活かして事業拡大を目指す成長領域として、4つを設定した。 これらの領域にはDNPグループ全体が一丸となって取り組む。新規事業を開発する特徴的な部門の一つとして、去年4月にAB(アドバンスト・ビジネス)センターという組織を新たに設けた。ここでは既存の事業部門の枠組みを超えて、相乗効果を発揮し、長期的な視点に立って積極的に事業開発に取り組む。
新規事業開発に関連して、この先5年間で全社で合計1000億円を投資していく計画である。

 

第1の成長領域「知とコミュニケーション」

 

第1の成長領域は「知とコミュニケーション」である。
ここでは情報化社会における安全・安心な情報のやりとりによって暮らしを支え文化を育む取り組みを進める。
情報メディアやコンテンツの制作だけでなく、双方向コミュニケーションの仕組みづくりにも関わって、生活者が求める情報を欲しい時に最適な形でやりとりできる情報プラットフォームを提供していく。
具体的には社会のキャッシュレス化と決済サービスの多様化に対応して、決済情報を活用した販促サービスの提供などを進める。
政府が現在、推進しているマイナンバー制度に伴う事業の拡大や、紙と電子の書籍に対応したhontoサービスの強化、デジタル教科書も含めた教育ICTサービスの開発などに力を入れていく。
訪日外国人の増加に合わせて多言語に対応した観光案内や買い物の支援ソリューションなどインバウンドのニーズに対応した事業も拡げていく。

 

第2の成長領域「食とヘルスケア」

 

第2の成長領域は「食とヘルスケア」である。
この領域では、国内で顕著な超高齢化社会で安全で質の高い生活を支え、生涯にわたる健康維持をサポートする製品やサービスの開発に取り組んでいく。
食品や飲料、医薬品向けパッケージに加えて再生医療をはじめとするライフサイエンスや農業などの分野にも事業を拡大し、多様な機能を備えた部材などを提供していく。
病気の原因究明や早期発見、治療に繋がるように脳や眼球のMRI画像などの解析する技術開発に取り組んでいる。
今年4月には病院内で撮影した画像データが院内の各診療科で参照できる画像管理システムの業界大手のPSP㈱と業務提携した。今後両社で画像解析による診断支援サービスなどを開発していく。
農業分野では包装分野で培ったラミネート技術などを応用し、光の反射効率を高めて最適な水分を保持できるDNP農業用フイルム、反射保湿フイルムを開発した。作物の生育に有効な保湿性と長期使用に求められる耐久性を備えた製品として国内外に販売していく。

 

第3の成長領域「環境とエネルギー」

 

第3の成長領域は「環境とエネルギー」である。
経済的成長と環境保全を両立させる低環境負荷社会の実現に取り組んでいく。
省資源や省エネ、生物多様性の保全に繋がる環境配慮製品の開発や使ったエネルギーを見える化するエネルギー・マネージメントのソリューションを提供していく。
包装分野で2012年に植物由来の原料を使ったパッケージ用フイルム「バイオマテック」を開発した。その後、植物由来のアルミ蒸着フイルムやバイオマス度98%の飲料用紙容器を開発するなど製品ラインナップの拡充に努めている。
エネルギー使用量の管理や低減に繋がる製品・サービスの開発にも注力している。
窓に貼ることで太陽光と熱を夏には遮断し、冬には適度に取り入れるフイルム、鉄の車両、住宅の壁・天井に使用して太陽や照明の光を効果的に反射・拡散させる金属パネルなどを開発した。
電力小売事業者向けにマーケティングやコンサルティングのサービスも拡げていく。

 

第4の成長領域「暮らしとモビリティ」

 

第4の成長領域は「暮らしとモビリティ」である。
生活者の価値観が多様化する中で、職場や公共の空間、家族や友人との空間、一人きりの空間などでそれぞれ高い快適性が求められている。DNPは住宅、オフィス、医療、介護施設、自動車や鉄道車両などをすべて住空間として捉えて多様な製品やサービスを開発・提供していく。DNP独自のEBコーティング技術を活用した製品開発に注力しているほか、木や石などの質感を表現して高級感を演出する内外装用アルミパネルなどを国内外に提供していく。
ITを活用し、さまざまな生活インフラを統合的に管理するスマート社会の実現に向けて、センサーや各種の機器がネットワークで相互にデータをやりとりし、快適性を制御するスマートセンシングサービスなどを提供していく。
この4つの成長領域を中心に新規事業の拡大に力を入れていくと同時に資本効率の向上に努めて経営資源の有効活用を進めていく。
こうした取り組みの成果の目安の一つとして3年後の平成30年3月期にROEを5%に、営業利益を800億円とする目標を掲げた。
資本効率の向上に関して自己株式の取得と消却も行っている。自己株式の取得は2003年から2009年にかけて7年連続で実施したが、今年5月15日から8月末日までに1800万株、200億円を上限として市場買い付けを進めている。
5月28日には自己株式2000万株を消却した。
今後も経営環境の変化に対応しながら機動的な資本政策を実行していく。

 

市谷を再開発し「未来のあたりまえを作る。」拠点に

 

事業構造改革を進めながら、「未来のあたりまえを作る。」拠点とすべく市谷地区の再開発を進めている。
東京・山手線の中心部という立地を活かして、各事業部門の企画や営業、本社の機能を集約して一層の総合力を発揮させ、成長領域を中心とした事業の拡大を進めていく。効率化も進め、都心近郊に分散している拠点を集約して物流や製造の体制を見直して、コスト低減や収益性向上も図っていく。
製造については地下工場を整備する。
企業や生活者を取り巻く環境が大きく変化しており、事業の価値を高めるためには、企業や生活者との対話を深め、ニーズを先取りするとともに、新しい需要そのものを創り出していく必要がある。
とくにB2B事業では得意先企業とのフェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションが不可欠である。
市ヶ谷地区の再開発を進める中で、企業をはじめとしたパートナーとのコラボレーションが図りやすい環境を整えていく。
一方で近隣の方々とのコミュニケーションや周辺環境の整備、生物多様性の保全なども大切なテーマである。再開発の完了時点では、昔ながらの雑木林をイメージした「市谷の森」を整備して事業価値の向上に加えて環境に優しい拠点としていく。

 

 

その他のトピックスでは、紀伊國屋書店と2015年4月に出版流通市場の活性化と新しいビジネスモデルの創出を目指して「株式会社出版流通イノベーションジャパン」を設立した。
新会社では、出版流通市場活性化のための調査・研究、各種活性化施策と新規ビジネスモデルの立案を行う。両社はともにリアル書店とネット書店を連動させた事業を展開しており、そのノウハウを共有することで、出版流通市場の課題解決に取り組んでいく。

 

hontoサービスも拡充している。
「読みたい本を、読みたいときに、読みたい形で」提供するため、電子書籍と紙の本に対応し、丸善・ジュンク堂書店・文教堂の書店と、hontoサイトなどを連携させたサービスを展開している。
6月末には、サイトと書店の両方で、電子書籍と紙の書籍の購入に使える「hontoポイントチャージ用チケット」を発売した。
昨年12月、電子書籍が収録済みで、会員登録などの操作が不要な読書専用端末「ホントポケット」を発売した。現在9タイトルを販売しており、今までにない電子書籍として読者や出版社から高い評価を受けている。
また、hontoポイントで中古本を買い取り、溜まったポイントで新刊本や電子書籍が購入できるサービスや、書籍の店舗での在庫などが確認できる専用アプリなども提供する。
 

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