2015年07月11日

凸版印刷㈱(金子眞吾社長)は7月9日、東京・千代田区の秋葉原本社ビルで夏季記者懇談会ならびに見学会を開き、金子社長が2015年3月期の業績と、今期の業績見通し、経営課題と施策、社会貢献/文化貢献活動について説明した。金子社長は今年度を「大きく飛躍するために、この厳しい状況をいち早く脱し、目の前に広がる進路を全速前進する年」と位置付け、①グループを含めた構造改革の遂行②新事業・新市場の創出③グローバルな事業展開の加速--に取り組み、動き始めた「成長エンジン」を加速させ、経営課題の解決に向けて具体的な成果に結び付けていく考えを示した。

 

記者会見後には、7月6日にオープンした同社ショールーム「PLAZA21秋葉原」と、4月25日から7月12日まで開催中のVRシアター/印刷博物館開設15周年記念企画展「ヴァチカン教皇庁図書館展Ⅱ~書物がひらくルネサンス」を見学した。

 

金子社長の発言要旨は次の通り。

 

 

 「従来の印刷事業のあり方は転換点に差し掛かっている」

 

金子眞吾社長

金子眞吾社長

■経営環境について
日本経済は、金融政策や財政政策などを背景に、雇用や所得の環境は改善し、外需企業を中心に業績の回復が見られるなど、全体としては緩やかな回復傾向が続いている。一方で個人消費の伸び悩みや、中国経済の減速、ギリシャの債務問題など、先行き不透明な状況も依然として続いている。
印刷業界においても、ペーパーメディアの減少とデジタル化が進展し、従来の印刷事業のあり方が、転換点に差し掛かっており、その変化はさらに進んでいる。

 

■業績について
15年3月期通期の業績(連結)について、売上高は1兆5269億円(前期比0・3%減)、営業利益は408億円(同14・4%増)、経常利益は452億円(同20・0%増)、当期純利益は228億円(同10・9%増)と、3期連続の増益となり、公表値を達成した。

 

16年3月期通期業績予想(連結)では、売上高は1兆5360億円(前期比0・6%増)、営業利益は475億円(同16・2%増)、経常利益は500億円(同10・5%増)、当期純利益は230億円(同0・6%増)を見込んでいる。引き続き、グループの全体最適の視点から構造改革を推進し、経営基盤の強化に努める。
成長分野に対して積極的に経営資源を投入し、新たな事業の創出とグローバルな事業展開を加速していく。

 

■新体制について
新たな体制で経営の質を高め、スピードを上げて経営課題に取り組んでいく。

 

・新任取締役(2人) 植木哲朗エレクトロニクス事業本部長兼㈱オルタステクノロジー社長▽斉藤昌典西日本事業本部関西情報コミュニケーション事業部長
・昇任取締役(4人) 伊東厚(常務取締役)専務取締役▽新井誠(常務取締役)専務取締役▽佐藤暢晃(取締役)常務取締役▽伊沢太郎(取締役)常務取締役
・退任取締役(2人) 大湊満(専務取締役)東洋インキSCホールディングス㈱常勤監査役、当社相談役(非常勤)▽杵村勝博(取締役)図書印刷㈱常勤監査役

 

■経営課題と施策について
経営施策①:グループを含めた構造改革の遂行
これまで国際事業部が中心となり進めてきた海外事業は「事業探索の段階」から「事業基盤確立の段階」に移行したことを踏まえ、国際事業部を発展的解消とし、情報系・生活系の各事業本部に移管した。これにより各事業本部が得意分野で培ったノウハウを活かしていく体制に改変した。
トッパングループがよりいっそう成長するには、海外事業の拡大が必要不可欠である。グローバルに展開しているリソースを、国境を越えてフル活用するとともに、より迅速にトッパングループの持つ強みを世界に展開し、海外事業のさらなる発展を図っていく。

 

 

ヘルスケア領域でのBPO事業を拡大 「マイナンバー」でもトータルソリューション力が武器に

 

経営施策②:新事業・新市場の創出
紙とデジタルを融合させる当社技術やノウハウ、さらにICTなどを組み合わせたトータルソリューションを武器にBPO事業、セキュア関連事業、メディア関連事業を重点事業として、いっそうの推進を図っていく。

 

BPO事業への対応では、さまざまな機能が必要とされる。当社は、かねてより「マーケティング」「IT」「クリエイティブ」の各領域で、それぞれの専門スタッフを育成してきた。加えて、これら3つの領域をトータルに理解する「プロデューサー」が多数存在している。
このプロデューサーを核に、得意先の課題を解決する「トータルソリューション力」のさらなる強化と、新たなビジネスを創造する「ビジネスプロデュース力」の向上に取り組んでおり、こうした活動が当社の強みとして発揮されている。

 

具体的には、近年、新たなビジネスチャンスとして期待される、ヘルスケア領域でのBPO事業でも、実績を積み重ねている。横浜市による「よこはまウォーキングポイント事業」では共同事業者として参加している。また、千葉県浦安市や岡山県岡山市をはじめとする全国6つの市と筑波大学や民間シンクタンクが実施する「健幸ポイント実証実験」や、総務省が奈良県葛城市で推進するICT街づくり推進事業「新時代葛城クリエーション推進事業」にも参加し、強みを活かし事業を推進している。

 

このような新しい事業を進められるのは、当社の強みの一つに、幅広い顧客基盤があるからだと考えている。金融や流通はもちろん、官公庁、出版、食品、トイレタリー、エレクトロニクスなど、約2万5千社の顧客との取引が、当社の安定的な活動基盤となっている。

 

セキュア関連事業では、目前に迫った「マイナンバー制度」導入の際にも、トータルソリューションが大きな強みになると確信している。

 

マイナンバー関連は、本年10月に個人番号の通知がなされ、16年からは個人番号カードの交付が始まる。当面は、これらに伴うカード発行やコールセンターを中心としたインフラ整備関連の需要が期待できる。加えて、16年以降、民間企業や金融機関における番号取得事務への支援業務が発生する。
当社では、これらの需要の獲得とともに、さらにその先の、マイナンバーを活用した新しいビジネスの創出を見据え、印刷テクノロジーで培ったセキュリティノウハウとトータルソリューションを結集し、取り組んでいく。

 

 

Shufoo!を電子配信プラットフォーム「電子マイポスト」へ

 

メディア関連事業では、電子チラシ事業の「Shufoo!」は、ユニークユーザ数が690万人、登録店舗数が10万店舗を突破し、月間のページ閲覧数が2億回を超えるなど、継続して事業を拡大している。

14年12月に行った自主調査では、女性が日常使っている買い物情報サービスで第2位となるなど、着実に支持を集め、昨年度は事業開始以来初めて、通期で黒字となった。
今年2月には、店舗のPOS情報と連携することで、電子チラシやクーポンの閲覧から購買までの効果を把握でき、またその結果に応じてキャンペーンを実施できる「レジ連携サービス」を開発し、NECのPOSシステムを使った実証実験を開始。また、京都大学大学院の新熊准教授と共同で、ユーザーの行動やニーズを予測することで、個人個人に最適化した電子チラシの配信を実現する次世代レコメンド配信サービスの実証試験も行っている。
これらの新サービスへの取り組みにより、「Shufoo!」が持つメディアとしての価値をさらに拡大し、ユーザー数拡大に向けた施策をよりいっそう強化する。

 

将来的には「電子マイポスト」として、さまざまな通知を受け取れる電子配信プラットフォームへの進化をめざす。

 

そのほか、さまざまな分野で新たな事業の創出を図っている。例えば、情報コミュニケーション分野では、スマートフォンを使って簡単にバーチャルリアリティーが体験できる「VRスコープ」を開発。イベントや商品のプロモーション、雑誌のノベルティなど、企業の販促向けソリューションとして提供を開始している。

 

 

車載ディスプレイ向け新・銅タッチパネルをサンプル出荷開始

 

エレクトロニクス分野では、「銅タッチパネルモジュール」において、成長が見込まれる車載ディスプレイ向けの新タイプを開発。車のセンターコンソールでの活用を想定し、樹脂製で曲面にも対応可能な製品。採用をめざし、サンプル出荷を始めている。

 

グループ会社のオルタステクノロジーでは、業界に先駆けて、車のフロントガラスに情報を表示する「ヘッドアップディスプレイ」用の液晶パネルの提供を開始。屋外でも見やすく、低消費電力の反射型液晶ディスプレイを開発している。
今後さらに将来を見据え、教育ICTやエネルギー、医療などの幅広い分野で印刷テクノロジーをベースとした当社独自のソリューションを提供し、強みを活かした新事業の取り組みを進めていく。

 

 

 米・ジョージアにバリアフィルム初の海外生産拠点 グローバル市場で安定供給へ

 

経営施策③:グローバルな事業展開の加速
グローバル企業やローカル企業へのアプローチの強化を図るとともに、事業展開を加速していく。その中でもとくに、バリアフィルム事業で海外展開を注力している。

 

世界最高水準のバリア性能を持つ「GLフィルム」を中心としたバリアフィルム事業は、成長事業へ発展する大きなチャンスを迎えており、よりいっそうの事業強化を図る。群馬センター工場が15年5月に本格稼働した。とくに軟包材と紙器・プラスチックなどを組み合わせた複合容器の生産を行っていく。

 

グローバル市場における事業展開を加速するため、新会社「TOPPAN USA」を設立するとともに、バリアフィルム事業では初となる海外生産拠点をアメリカ・ジョージア州に建設することを決定。16年3月の量産開始をめざし、建設を進めている。

 

■社会貢献/文化貢献について
本年8月にブラジル・サンパウロで開催される、第43回技能五輪国際大会の「印刷職種」で、当社の堀洸太(ほり・こうた)さんが日本代表選手に選ばれた。当社では、若手社員の技術力向上をめざし、選手育成のプロジェクトチームを結成し、社内認定の技術指導者が、若手社員への技術伝承に取り組んできた。
「印刷職種」が正式競技種目となった07年以来5大会のうち4回の大会で、当社社員が代表として選出されており、今回は前回大会に続いての代表選出となった。

 

印刷博物館は、2000年の開設から今年で15周年を迎え、来館者も44万人を突破した。現在、開催している開館15周年記念となる企画展「ヴァチカン教皇庁図書館展Ⅱ」では、ヴァチカン教皇庁図書館所蔵の中世写本、地図、書簡類などを中心とした書物の魅力を紹介している。

 

われわれを取り巻く環境は、エネルギー、包装、情報の分野で革命ともいえるほどの大きな変化が起こっている。この環境変化をチャンスと捉え、これからも印刷テクノロジーを日々進化させ、新しい領域においても、お客様の課題を解決し、社会に貢献していく。あわせて、今後も業界全体の発展のために寄与していきたい。

 

 

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