2022年08月05日

パッケージ印刷分野ではこれまでにも増して短納期・多品種化が進むとともに、とても高いレベルの品質安定性が求められている。さらに、納品先となる製品メーカー自身も生産機を高速化させていることから、パッケージ製品の納入もそれに対応しなければならない。増える品種、短くなる納期、高まる品質要求、そして納品先の高速機への対応と、あらゆる面でパッケージ印刷会社は日々進化を求められている。

このような市場ニーズに応えるべく、岩倉印刷紙業㈱(本社・大阪府大阪市天王寺区東上町2の25、岩倉大介社長)では、主力工場である郡山工場を、すべての工程を社内で完結する大ロット・短納期対応に特化した工場とした。そして、それを具現化するために見合う武器として、2015年4月に導入したKoenig&Bauer社製の菊全判7色コーター付UV印刷機「Rapida106」に続き、2021年8月にもまったく同型の菊全判7色コーター付UV印刷機「Rapida106」を導入。

市場からのニーズや期待を上回る供給体制を整えたことで、顧客からの支持と信頼の獲得に成功している。

 

大ロット短納期に特化した

UV印刷専用工場へと転換

 

2015年4月に導入した1台目の菊全判7色コーター付UV印刷機「Rapida106」

2015年4月に導入した1台目の菊全判7色コーター付UV印刷機「Rapida106」

1950年設立の同社は、パッケージ製作・厚紙印刷に特化した印刷会社。食品・医薬品の紙器パッケージ製作を得意としており、奈良・大和郡山に構える主力工場の郡山工場の印刷部門では現在、2台の菊全判7色コーター付UV印刷機「Rapida106」と、9色+5つの加工ユニットを備えたフレキソ印刷機が稼働している。

同社では市場ニーズの変化に対応するため、先ごろこの郡山工場をUV印刷専用工場へと転換した。以前は、枚葉オフセット印刷機は「Rapida106」1台と長らく使ってきた既設機2台(菊全判の油性機と油性/UV兼用機)の計3台が稼働していたが、「Rapida106」にはきわめて高い生産性と瞬発性があることから、既設機2台を新台の「Rapida106」と入れ替えて、UV印刷機のみという現在の印刷機のラインナップへと一新した。

 

インライン制御機能により

2台の機付人員が柔軟に連動

 

稼働する印刷機の台数は減っているが、同社の仕事量は減ってはいない。「Rapida106」が日々こなしている仕事はほとんどが1万~5万通しという大ロットなものとなるが、ここで威力を発揮しているのがインライン色調管理システム「Qualitronic ColorControl」とインライン欠陥検出システム「Qualitronic PrintCheck」だ。

インライン色調管理システム「Qualitronic ColorControl」は、印刷された全紙の色調を監視し、色調に変化があれば自動的に印刷機のインキキーを補正するもので、ジョブ全体にわたって一定の印刷品質を維持するのに役立つ。また、インライン欠陥検出システム「Qualitronic PrintCheck」は、全印刷物を監視し、0.5φ㍉以上の欠点箇所を検出するとその用紙に排紙部で付箋が挿入される。これにより欠点シートを安易に除去でき、さらに同社では、仕分けをする場所にモニターを設置して欠点画像と現物シートを照合しながら除去することで除去漏れを防いでいる。

 

「Rapida106」に搭載しているこの両機能のおかげで、印刷品質に対する顧客からの信頼感が圧倒的に高まるとともに、印刷オペレーターのストレス軽減にもつながった。また、本刷り中でも長時間でなければ印刷オペレーターが印刷機から離れても問題なく生産することができるようにもなる。

梅本工場長

梅本工場長

「当社の枚葉オフセット印刷機は、4人×4チームが2交替で生産にあたっている。2台はまったく同機種なので、どちらの印刷機であっても同じように扱うことができる。したがって、急な欠勤者が出ても誰でも代わりができ、刷版も共通なので仕事の割り振りに柔軟性も生まれる。そして、この“Rapida106”は用紙搬送性能が高いので厚紙であっても機械最高速度の毎時1万8000回転で印刷することもあり、またそこまではいかなかったとしても従来よりもはるかに高速で印刷することができる。そうすると紙積みが追いつかないケースもある。そこで、2台並んだ印刷機間を通行しやすくし、どちらかの印刷機で人手を要する瞬間があれば、もう一方の印刷オペレーター陣がそちらに移動して手を貸すというチームワークをもって仕事に臨んでいる。このような全体が一体となって生産効率を高めるための連動ができるのも、本刷り中に手がかからないインライン制御システムがあるおかげだ」と同社郡山工場の梅本政資工場長は述べている。

 

ジョブ替えも自動で迅速

インキ交換をしても40分で

 

2021年8月に導入した2台目の菊全判7色コーター付UV印刷機「Rapida106」

2021年8月に導入した2台目の菊全判7色コーター付UV印刷機「Rapida106」

同社では大ロットに特化するために、小ロットの仕事については同社と色調を合わせている外部の協力会社に委託している。しかしながら、難易度が高い仕事や特殊印刷の場合は、小ロットであっても社内で印刷を行っている。したがって、ジョブ替えの早さも印刷機には求められる。その点においてこれらの「Rapida106」には、ジョブ替え時の刷版交換や洗浄といったさまざまな作業を同時並行処理できる「ドライブトロニックSPC」という機能が搭載されている。これにより、刷版交換は全胴分が50秒で完了し、インキ替えがない場合だと各種洗浄作業などを行い、次ジョブの色・見当調整などをしても20分以内で本刷りに入ることができる。また、同社の仕事で多くを占める7色刷り(固定4色+特色3色の入れ替え)の場合でも、ジョブ替えの平均時間は40分で収まっている。

 

ハイレベルの機械を扱える

人材育成でさらなる高みへ

 

2015年に導入した「Rapida106」については、わずか6年強しか稼働していない段階で、累計印刷枚数が去年まで20年にわたって使ってきた印刷機のそれを超えたという。導入時の期待を大きく上回るようなこれだけの生産実績をあげるには、印刷機自体の能力もさることながら、印刷機が持つ真の能力を活かしきれるだけの人材を揃えることが欠かせない。

「いくら印刷機がすぐれていたとしてもそれを使うのは人間なので、その人間自身に印刷機のポテンシャルをしっかりと活かせるだけの能力やスキルがなければならない。印刷機を安定稼働させ、その状態を維持し続けていくには印刷技術の習得やメンテナンスのノウハウが必要となる。Koenig&Bauer JP㈱のスタッフは印刷オペレーター目線で一緒になってサポートをしてくれて、当社の印刷オペレーターのレベルを一段上へと高めてくれた。Koenig&Bauer JPは、その大事な点を踏まえてサポートをしてくれる会社だった」と梅本工場長は「Rapida106」導入による好影響を表した。

また続けて、印刷機のアフターサービス体制についても触れ、「24時間体制のリモートメンテメンテナンスがされているので、電気系のトラブルについてはリモートで解決される。また、日本法人のKoenig&Bauer JPでは24時間いつでも電話がつながり日本人エンジニアが対応してくれるので、夜勤もある当社にとってとても心強い。このようなサービスのおかげで導入直後の立ち上げはとてもスムーズだったし、導入する際に安心して決断できた」と語っている。

 

高い生産能力と高次元の自動化を備えた印刷機によって台数を集約し、かつ同型の印刷機を揃えることで生産効率を高めたことで、工場全体が洗練されて生産キャパシティも向上した。それでもなお、同社はさらなる高みを目指している。梅本工場長は、「この印刷機は高い能力を持っているが、世界中に数多あるユーザーの中でもトップユーザーになることを目標としている。たとえば、印刷品質の安全性を求めるがゆえに印刷速度を落とすというようなことはせず、どのような条件であっても品質も印刷速度も落とさずに済む手法を考える姿勢をもって、つねに上を目指していく。モノづくりの基本は、意識を高く持ち続けることだ。その意識がなければ目標の実現はないだろう。これだけのハイレベルな印刷機が揃ったので、それを使う側である人材についてもそのレベルに応えられるように育成し、設備と人材が人馬一体となって会社全体の進化へとつなげていく」と今後の展望を表した。

 

月刊 印刷界 2022年8月号掲載

【取材・文 小原安貴、Interview・Article Writing Yasutaka Obara】

 

 

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