アドビ㈱(本社・東京都品川区、神谷知信社長)は6月30日、オンラインで報道関係者向け事業戦略説明会を開催した。
その中で今後の方針が示され、▽日本社会が直面しているデジタル課題に対して、デジタルエコノミー(デジタルテクノロジーやデータを活用した経済活動)の推進、▽デジタルトラストの実現、▽デジタル人材の育成--という3点に取り組んでいくことを発表した。
とくに喫緊の課題であるデジタル人材の不足に対して「クリエイティブデジタルリテラシー」を持つ人材の育成を加速する施策を新たに展開する。
会の冒頭、同社の神谷社長は「アドビは今年、日本法人設立30周年という節目を迎えた。“心、おどる、デジタル”のビジョンの下、引き続きクリエイティブデジタルリテラシーを持つ人材の育成を加速することにより、デジタルによる新たな価値創造を推進していく」と語った。
【デジタルエコノミーの推進】
世界中であらゆるものがデジタルに移行する中、娯楽や教育の場、企業など、より幅広い人がデジタルコンテンツを制作し、消費するようになった。
SNSのような配信先となるチャネルやデバイスが拡大する中、多様な顧客体験のニーズに応えるには、より多くのコンテンツをより速いスピードで創出することが求められている。
また、3Dやメタバースといった技術革新も急速に発展している。
同社ではあらゆる人のコンテンツ創出とデータ活用をテクノロジーで支援することで、デジタルエコノミーを推進していく。
その新たな取り組みとして、デジタルの力で個人商店や伝統文化を活性化するプロジェクトを展開する。
【デジタルトラストの実現】
膨大なデータの活用が世界経済の成長を牽引し、加速度的に増えるデジタルコンテンツが人々の生活を豊かにする一方、デジタルにおける信頼性(デジタルトラスト)をどう担保するかという新たな課題も生まれている。
同社は、デジタル作品の盗用やディープフェイクといった問題にテクノロジーで対応するとともに業界を横断した「コンテンツ認証イニシアチブ」を組織し、750社以上の参加企業とともに取り組んでいる。
また、デジタル文書のセキュリティにおいては、PDFの開発元として、高い安全性と信頼性を備えるAdobe Document Cloudを提供している。
【デジタル人材の育成】
デジタル競争力の低迷は、日本社会における喫緊の課題となっている。
IMDの調査「世界デジタル競争力ランキング2021」によると、日本のデジタル競争力は64ヶ国中28位と低く、とくに「人材/デジタル・技術スキル」が62位と顕著に低い状況がある。
同社はクリエイティブによるイノベーションと顧客体験の向上を牽引してきた知見と経験を活かして「データを解釈し、課題を発見する能力」と「課題に対してアイディアを引き出し、形にする能力」を兼ね備えた「クリエイティブデジタルリテラシー」を持つ人材の育成に取り組んできた。
今後、社長直下の専門組織を設置し、デジタル人材の育成を加速していく。
また、小中高等学校の教育現場に加えて、社会人に対しても、「学び直し(リスキリング)」の場を提供する。