2022年05月16日

坂道を登るには平坦な道を歩いている時よりも身体に大きな負荷がかかるが、その負荷は自身の成長・力へと変換されていく。㈱中央製版(本社・新潟県三条市下大浦518、小林吾郎社長)の近年の業績は、国内印刷市場の縮小傾向と反比例するように、毎年着実に伸びてきた。それをグラフ化すると、正に右肩上がりの坂道となる。

業績が伸びると、それにともなって印刷・生産量も増加する。そんな坂道を登るように伸び続けている同社の印刷生産現場では、負荷増大(=生産量アップ)をものともしないメインエンジンの存在があった。それが今年1月に導入した、Koenig&Bauer社製の菊全判6色コーター付UV印刷機「Rapida106X」だ。

「Rapida106X」は2020年6月に新発表されたばかりの最新鋭モデルで、中央製版で稼働するこの印刷機が国内初号機となる。

そしてこの「Rapida106X」が、早くも同社の生産体制に大きな革命を起こしている。

 

傑出した納品スピードと機動力をもつ、高付加価値なパッケージ製作を展開

設計・デザインから印刷・後加工、さらにはアッセンブリーまで社内一貫対応

 

同社は1962年に創業した、高付加価値なパッケージ製作に特化する印刷会社。同社がある燕三条エリアは、世界的に高く評価されている洋食器や刃物、金属加工や工具などの生産が盛んな産業集積地であることから、それらの製品に付随するパッケージへの需要が旺盛な地域となる。そのような背景から、創業時は製版会社だったものの3年後には印刷機を導入し、その後もパッケージ印刷の受注が増え続け、現在の業態となった。

中央製版で稼働するRapida106X

中央製版で稼働するRapida106X

同社では、設計・デザインから製版、印刷、加飾、打抜、製函、そして手作業によるアッセンブリーまで、すべての工程を自社内で一貫生産できる体制を整えている。それゆえ、受注から納品までの圧倒的なスピード感、さらには社内ですべてを管理できることから品質や衛生面を担保できるという強みを有している。

その強みの1つ、圧倒的なスピード感を追求し始めたのは今から15年程前のこと。製造工程のベースとしてトヨタ生産方式の考え方を採り入れ、作り過ぎのムダ、動作のムダ、作り直しのムダ、手待ちのムダなどを見直して問題を見える化し、改善を重ねることで生産性を高めてきた。その結果、これまでは1つの案件について、印刷、加飾、打抜、製函といった工程を1日に1工程ずつ進めていたが、現在は、午前中に印刷すると昼頃には表面加工を行い、夜に後加工、そして翌朝には出荷といった円滑な流れができるようになっている。このような機動力の高さが顧客からの評価につながってさらなる受注に結び付き、それが同社の強みであることを営業スタッフのみならず製造部門の現場オペレーターも認識しているので、さらなる改善にも積極的に取り組んでいくという好循環が生まれている。

 

5年前にKoenig & Bauer社製菊全判UV印刷機「Rapida106」を導入

他に類を見ないフィーダーの安定性でその実績・実生産性は事前の期待を超えるレベルに

 

小林社長

小林社長

そんな同社の製造工程の核となる印刷部門では、4台の枚葉オフセット印刷機が稼働している。その構成は、4色コーター付UV印刷機が2台、5年前に導入したKoenig&Bauer社製の7色コーター付UV印刷機「Rapida106」、そして今回導入した6色コーター付UV印刷機「Rapida106X」で、すべて菊全判機。「Rapida106X」については既設の6色コーター付UV印刷機との入れ替えとなる。

その導入背景について同社の小林社長は、「5年前から稼働している“Rapida106”はフィーダーの安定性が抜群で、とにかく止まることがない。デリバリーやスピードを上げた時の安定性もすぐれていて、その実生産性は期待を超える高さだった。また、難しい仕事、困ったことがある場合もこの機械に頼るので、さすがにキャパシティを超えてしまっている。そこで“Rapida”をもう1台増設した」と語っている。

 

パッケージ印刷というとロットが比較的長いというイメージがあるが、同社全体の印刷平均ロットは2200通しで、仕事の半数以上は1000通し以下のものが占めている。そのため、実生産性を高めるために重要となるのがジョブ替えの早さだ。入れ替え前の既設機ではジョブ替えに2時間かかることもあったが、この「Rapida106X」だと平均でわずか25分。装填する刷版の版曲げが不要で、全印刷ユニットおよびコーターユニットの版を1分未満で同時交換するほか、その間に各種洗浄などの並行処理も行い、さらにはパッケージ印刷の生産性を落とす大きな要因となるインキ替えとそれにともなう洗浄作業時間についても、UV印刷の本刷り中に空き胴の洗浄ができる機構をはじめとした新たな仕組みを備えている。

 

ジョブ替えの自動機能などの効果もあり「Rapida106X」は1シフトで11~13ジョブを処理

その実生産性の高さから、1日あたり1シフト分もの労働時間削減が実現

 

塚田部長

塚田部長

これらの能力向上によって「Rapida106X」では現在、1シフトあたり11~13ジョブもこなすことができている。小林社長も「業績はコロナ禍直前の年がピークで去年は微減となったが、今年は前年同様となっている。その仕事量については余裕をもってこなせていて、今は残業をすることがほぼない。それは改善の積み重ねの効果、そして印刷機を入れ替えたことによるパフォーマンス向上のおかげでもある。“Rapida106X”を導入したおかげで、これまでは“Rapida106”と既設機2台が2シフト+入れ替えた1台が1シフトの1日7シフトで生産していたが、今は“Rapida106X”と“Rapida106”が2シフトで残りの2台が1シフトの1日6シフトで収まるようになった」とその稼働状況を高く評価している。

 

小ロットの仕事が多いものの、1日に2~3台は1万通し超の仕事もあるという。「“Rapida106”は、フィーダーや用紙搬送性能の高さ、そしてインラインの色調制御装置によって品質が安定するので、毎時1万5000回転という速さで印刷ができてしまう。そのためフィーダーに紙を供給し続けるための労力がとても大変になっていた。そこで“Rapida106X”ではオートノンストップフィーダーを搭載してパレットの入れ替えを自動で行えるようにした結果、“Rapida106”では3人だった機付人員が“Rapida106X”は2人でできる」と同社製造部の塚田泰志部長は語る。

メンテナンス面でも「Rapida106X」は大きな進化を遂げている。「週の最後にグリスアップをするのだが、“Rapida106X”は給油箇所が200ヶ所も少ない設計になっているのでかなりの時間短縮になる。また、UVインキを使用するとインキツボ内でインキが固着する問題が生じることもある。ここが詰まって動きが鈍くなると、インラインの色調制御にも悪影響が及ぶことになる。それがこの“Rapida106X”では、インキツボの下部からエアーを吹き出してインキの固着を防いでくれるため、頻繁なメンテナンスが不要となっている」(塚田部長)

 

「Rapida106X」は、同社が今後も引き続き成長への坂道を登っていく上で、欠かせないメインエンジンとして位置付けられている。「5年前に導入した“Rapida106”の稼働実績もあるので、Koenig&Bauer製印刷機への信頼度は高い。印刷機は大きな投資となるので過大な期待をしがちだが、その過大な分も含めた期待にも応えてくれている印象だ。この導入によって1日あたり1シフト分を空けられているので、さらに成長して仕事が増やせるだけのキャパシティもできた。これからも末永く、“Rapida106X”をメイン機として活用し続けていく」と小林社長は今後の展望を明かした。

 

日本印刷新聞 2022年5月16日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

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