2022年04月21日

ミューラー・マルティニ ジャパン㈱(本社・東京都板橋区)は昨年9月、㈱アイワード(本社・北海道札幌市中央区北3条東5丁目5の91、奥山敏康社長)の石狩工場に最新鋭の全自動無線綴じ機「アレグロ」および中綴じ機「プリメーラMC」を納入した【関連記事】。

この両機はモーションコントロール技術が全面的に採用されていることから、その正確なプリセット精度によって1冊目から良本を出せることをコンセプトに開発された、小ロット製本に対応したモデルとなる。

さらにアイワードではこの2台を含めた全4台の製本ラインを、全生産情報をリアルタイムで収集するデータマネジメントシステム「コネックス」に繋ぐことで、印刷以前の工程から製本工程までを統合したスマートファクトリー化を実現している。

そのような先進的な取り組みの詳細について、4月20日にアイワードの石狩工場で開催した記者会見において紹介した。

 

プリメーラMC

プリメーラMC

会の冒頭、あいさつに立ったアイワードの奥山社長は「当社では2019年から、すべての生産機器を本社に設置したサーバーとつなげる、スマート化の取り組みを進めてきた。我々は、お客様と課題を共有して技術開発によって解決を図ってきた歴史があり、このリレーションシップこそが当社の宝である。今回の製本設備への投資もこのスマート化に基づいたもので、お客様とのやり取りの円滑化や生産能力向上に貢献している」と製本システムのスマート化についての見解を表した。

また続けて「近年、情報伝達手段としてデジタルメディアへの移行が進んでいるものの、その一方でデジタルメディアから受け取る情報だけでは読者の心が動かないという側面もある。とくに教科書や参考書、学術書のような人を育てる分野の書籍において、学習面・行動面においてデジタルメディアは効果が薄いという調査報告もある。当社の最近の業務内容でも、デジタルとアナログを融合させるような傾向が少しずつ増加している。当社は、人の命を守るための本、人の営みを記録する本、社会の進歩に寄与するための本、人を育てる本の受注・製作を多くしている。そのような書籍を発行するお客様と当社の価値観を合致させることで、これからの出版文化を支える一助になりたいと願っている。その点からも、今回の新規製本設備による強化がとても大きな力を発揮すると確信している」と述べた。

 

アレグロ(右)とボレロの両無線綴じラインを向い合せに設置

アレグロ(右)とボレロの両無線綴じラインを向い合せに設置

今回の設備投資によりアイワードの製本部門は、新規導入した「アレグロ」30鞍と中綴じ製本機「プリメーラMC」6鞍、そして既設の無線綴じ機「ボレロ」21鞍、中綴じ製本機「ブラボプラス」8鞍を加え、全4ラインという構成となった。

新規導入した「アレグロ」と中綴じ製本機「プリメーラMC」には、各ユニットの可動部がサーボモーターで単独駆動した上で全体を同期制御する「モーションコントロール技術」が採用されている。

これによってジョブ替え時間の大幅な短縮が図れ、ジョブ替え時間が半減し、かつ1冊目から良品の生産ができているという。

また、2台の無線綴じ機はどちらもPUR製本に対応し、2台の中綴じ機はどちらも最大A3サイズから最小A6サイズに対応する。

このように機械間の能力の平準化を図ったことで、これまでは製本ラインのジョブの割り振りに偏りができていたが、流動性がある柔軟な生産工程を組めるようになった。

 

製本工場の内観

製本工場の内観

品質面では、乱丁管理をカメラではなく「ASIRバーコード」によって管理している。

カメラによる管理の場合、最初に絵柄を覚えこませてそれと異なるものを検知するが、最初にフィーダーに載せる段階で載せ間違えをしている場合はそれを検知することはできない。

一方の「ASIRバーコード」では、各折丁の余白部にあらゆるジョブ情報が入ったバーコードをそれぞれに印刷してあるので、オペレーターが折丁の載せ間違いをしても機械がそれを判断し、正しい位置に正しい折丁を載せなければ丁合ができないようになっている。

アイワードでは新台だけでなく既設機にも「ASIRバーコード」を追加搭載させており、全製本ラインで確実な乱丁管理ができる体制を整えている。

この「ASIRバーコード」は乱丁管理だけでなく、「コネックス」による生産情報のリアルタイム収集という面でも活用されている。

 

ミューラー・マルティニグループの会長、ルドルフ・ミューラー氏が来日

世界の印刷製本産業の情勢と今後の製本業界の方向についてスピーチ

 

また、この見学会にあわせて来日したミューラー・マルティニグループの会長を務めるルドルフ・ミューラー氏が、コロナ禍における世界の印刷製本産業の情勢や今後の製本業界の進むべき道などについてスピーチをした。

その大要は次のとおり。

 

奥山社長(左)とミューラー会長

奥山社長(左)とミューラー会長

当社もコロナ禍によって大きな打撃を受けた。2020年第1四半期には、機械販売、スペアパーツ、サービス事業が大幅に落ち込んだ。とくに渡航制限はサービス事業に影響を及ぼし、新台の納入に若干の遅れが生じることとなった。2021年も引き続き状況で、さらに最近は、▽世界的なサプライチェーンの問題、とくに半導体を備えたコンポーネントと制御システムの不足、▽急激な世界的インフレ傾向--という課題もあるが、我々はこれらの問題に有効な対策を実施できたという自信もある。

しかし、コロナ禍は印刷業界に悪影響を及ぼしただけではない。コロナ禍によって、書籍市場での前向きな勢いが世界的に引き起こされ、多くの国で書籍の売上が増加していることに我々も驚いている。コロナ禍によって在宅時間が増えたことにともない、家で読書をする人が増え、その結果として印刷された書籍への需要が高まっている。たとえば米国では、印刷された書籍の販売数が2021年は2019年に比べて2割増加している。この傾向は日本でも見られており、印刷された書籍の2021年の販売数は前年比2.1%増となっている。そのような傾向を背景に昨年は、アイワードを含む2台の新しい無線綴じラインを日本市場で納入できた。

コロナ禍は、書籍市場の構造的変化にも影響を与えている。たとえば本の販売形態は、ネット販売へとさらに移行している。それにより、作品ごとに製作される部数が大幅に減少し、世界の潮流として最小ロットは1冊と言われている。そこで、デジタル印刷による効率化がさらに重要になってきた。

我々の戦略において、スマートファクトリーとフィニッシング4.0の開発・発展がさらに重要となっている。これは、急速に増加するこのような需要に対応するためには、生産が完全に自動化され、製本の生産プロセス全体を通したネットワーク化がされなければならないことを意味する。そこで我々は、単一作品100部を製作するのと実質的に同じ速度で、製造過程への人手の介入なしで、1冊ずつ100種類の作品を製本できるデジタル製本システムを提供することを目標とする。

そして我々が日本市場のみなさまに伝えたいのは、「厳しい状況の中にあっても、みなさまと同じように、印刷の未来を信じている」ということだ。なにより我々には、長い年月にわたって培ってきた、みなさまとの信頼関係がある。我々はこれからも日本のみなさまをサポートし、新しい問題の解決に取り組んでいく。

私は、世界の印刷・製本市場には2種類しかないと思っている。それは、日本市場とそれ以外だ。日本の印刷・製本会社が生産する製品品質の高さ、そして印刷発注者の品質要求の高さはほかに類をみない。逆に言えば、日本市場で通用する製品や技術を開発すれば、それは世界のどこであっても満足されるものとなる。だからこそ私は、さまざまなヒントや意見を得るために、毎年日本へと足を運んでいる。本社はスイスに置いているが、とくに日本市場の要望には応えていきたいと考えている。

 

 

 

技術・製品-関連の記事

PAGE TOP