新たな挑戦、新たな分野の開拓、新たな技術革新。それに挑むには勇敢な決断と綿密な市場分析、そして適切な設備・環境を構築することが必要不可欠だ。
印刷紙器を中心に、貼り箱・段ボール・クリアケースなども手掛ける総合パッケージ会社の㈱ゴードー(本社・埼玉県川越市大字的場1445、橘健夫社長)では、新たな事業分野としてG段ことGフルート(マイクロフルート)の段ボールへのダイレクト印刷を志した。
その事業展開にあわせて2021年12月、リョービMHIグラフィックテクノロジー㈱製の菊全判6色コーター付LED-UV印刷機「RMGT1020LX-6+CC+LED-UV」を導入。
LED-UV印刷によるG段へのダイレクト印刷という、業界初の新しい取り組みが走り出した。
同社は1949年創業のパッケージ印刷会社。企画・デザイン・試作から、プリプレス、印刷、後加工までの全工程を社内一貫体制できる体制を整えている。板紙のお菓子ギフト箱が主な製造品目となるが、コロナ禍によって出荷量が減少。そこで、オンリーワンな差別化が図れる新分野・新事業について模索をしていた。
同社では営業方針として、多品種・小ロットの仕事にフォーカスしている。その生産を担う印刷機は、海外メーカー製の菊全判UV5色印刷機1台で、主に4色+ニスの仕事を行っている。2007年に導入したこのUV印刷機は、繁忙期にはほぼ24時間・週6日で稼働させ続けることになるため、時間をかけてメンテナンスをすることもできず、その結果として実稼働速度が上がらなかったり、印刷不良が起こることもあったという。また、測色・色合わせについての機能を搭載していなかったので、刷り出し時やパレット交換時の損紙も多くなっていた。
コロナ禍による受注減少が底を打ち、仕事量が徐々に回復するようになると、その印刷機1台だけでは増えた印刷量をまかないきれず、外注に頼るケースが増えた。そのような状況を踏まえて、印刷機の増設を決断した。「印刷機1台だけの体制に不安があったので増設することにしたが、せっかく新台を入れるのならば、それを礎とした新しい事業展開もしたいと考えた。主業務である板紙と並行しながらできること、社内に後加工設備が揃っているのでそれも活用できること、そしてネット通販や飲食店のテイクアウトで使うパッケージが急増している社会情勢などを踏まえ、G段への印刷を始めることにした」と同社の橘東吾専務は語る。
G段は、段高0.9㍉という薄さの段ボール。このG段へのダイレクトオフセット印刷における国内での実績の高さ、そして印刷現場からの「UVランプだと夏場の印刷室がとても暑くなるので、ぜひLED-UVにしたい」という要望もあり、その2つの観点から「RMGT1020LX-6+CC+LED-UV」の導入を決めた。「複数の印刷機メーカーでテストをさせてもらったが、やはりこの印刷機に分があった。LED-UVの乾燥性についての心配もあったが、特色、メジウムが多く入っているインキ、OPニスやクリアニス、疑似エンボスなど、当社の仕事で使用するすべてのものでなにも問題はなかった。インキやニスの使い勝手、そして色再現という点で、LED-UVはUVランプと遜色ないと思う」と同社製造部の菊池由修課長は評価している。
周囲から聞いた話では、G段は通紙性が悪くて印刷が難しいということだったが、実際に「RMGT1020LX-6+CC+LED-UV」を稼働させてみるとスムーズな立ち上がりをみせ、どのような原紙のものであってもフィーダーで苦労することがないという。これで、美粧性の高い枚葉オフセット印刷機によるG段へのダイレクト印刷ができる体制が整った。「G段へのダイレクト印刷ができるようになったことで、当社の営業における新しい武器ができた。厚みが倍程もあるE段から、G段への切り替え提案を行っている。また、G段は普及しているものの印刷できる会社はまだ限られているので、営業スタッフにその印刷サンプルを持たせて魅力のアピールもしている。これまでは提案営業をあまりしてこなかったが、わかりやすくて売り込みやすく、そしてコスト削減にもなる提案ができるようになった」と新技術による新分野の開拓について、橘専務は大きな期待を寄せている。
「RMGT1020LX-6+CC+LED-UV」が活躍する範囲は、新分野のG段だけではない。既存分野でも大きな威力を発揮している。平均ロットが3000~5000通しという小ロットのパッケージ印刷を行うにあたり、自動化機能を駆使してジョブ替え時間や色合わせ時間を短くし、本生産に充てられる時間を長くすることは大事な生命線となる。「この新台には、生産性向上と若手オペレーターでも扱いやすいスキルレス化を求めて、自動刷版交換装置、インキキーのプリセッティング機能による刷り出しの良さ、印刷中のインキキーの自動フィードバック機能、そして大ロットでの稼働率も落とさないように本刷り中でもパレット替え作業ができるノンストップフィーダーとノンストップデリバリーなどを備えた。ジョブ替え時間については、これまでの半分くらいになったと思う。また、インライン欠陥検知装置も搭載し、欠陥を検出するとリジェクターへ自動排出できる仕組みも搭載している」と菊池課長は説明する。
これらの機能により、まず生産性が向上して印刷外注費を7~8割削減できる見込み。また大ロットの仕事においては、パレット交換作業による印刷停止がないことで、その内容によっては1ジョブで1連分の損紙削減につながることもある。さらに、これまでは色に関するトラブルで、製品納入後に引き取り・目視検品・刷り直しをするケースもあったが、インライン品質検査装置によってこれらにまつわる労力・コストも削減される。「印刷品質の向上と印刷品質の担保ができるようになったことで、お客さまに安心感を持って頂けるようになった。“RMGT1020LX-6+CC+LED-UV”を導入したことで、生産性が向上し、印刷品質も良くなり、コスト削減にも寄与してくれて、新しい営業ツールにもなっている。そして現時点ではたぶん唯一無二となる“LED-UV×段ボール”という技術は、環境配慮についても訴求することができるだろう」と橘専務は自社の進化について表した。
日本印刷新聞 2022年3月28日付掲載
【取材・文 小原安貴、Interview・Article Writing Yasutaka Obara】