2022年01月31日

(公社)全国出版協会・出版科学研究所によると、2021年(1~12月期累計)の紙と電子を合算した出版市場(推定販売金額)は、前年比3・6%増の1兆6742億円と3年連続でプラス成長となった。電子出版が同18・6%増と引き続き拡大、紙の書籍も同2・1%増と15年ぶりに増加に転じた。出版市場全体における電子出版の占有率は、27・8%。前年の24・3%から3・5ポイント上昇し、3割に迫っている。

紙市場は1・3%減 書籍が15年ぶりのプラス成長

2021年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比1・3%減の1兆2080億円。内訳は、書籍が同2・1%増の6804億円、雑誌が同5・4%減の5276億円。上半期は、20年がリアル書店休業の影響で落ち込み、巣ごもり需要が21年も続いたため、プラスに推移。しかし新型コロナの感染状況が落ち着いた秋以降は書籍・雑誌ともにマイナスとなった。
書籍は、児童書、文芸書、中学学参、語学・資格書などが前年を上回る好調な売れ行きで、06年以来のプラス成長となった。
また返品率が32%台まで改善。書籍全体の価格上昇も販売金額の上乗せに影響した。動画投稿アプリ「TikTok」での紹介を機としたヒットや「YouTuber」の書籍が売れるなど、Web活用の動きも目立った。
雑誌は厳しい状況が続いている。月刊誌(コミックス、ムック含む)が同4・5%減、週刊誌が同9・7%減。月刊誌のうち、定期誌は約7%減。21年はコロナ禍での刊行延期・中止がほぼなく、通常通りに刊行されたが、部数減が続き、休刊誌も多い。紙媒体での刊行を終え、情報発信の軸足をWebやSNSに移す動きが顕著になっている。コミックス(単行本)は約1%減。20年は『鬼滅の刃』(集英社)ブームで2割増となったが、21年は微減にとどまった。

 

コミックの拡大続く電子出版市場

 

2021年の電子出版市場は前年比18・6%増の4662億円と、大幅に増加した。内訳は、電子コミックが同20・3%増の4114億円、電子書籍が同12・0%増の449億円、電子雑誌が同10・1%減の99億円。
コミックは各ストアでユーザーが増え続け、『東京卍リベンジャーズ』(講談社)など映像化作品がヒットしたことに加えて、韓国発の縦スクロールコミックに勢いがあり、2割増となった。電子市場におけるコミックの占有は88・2%(前年より1・2ポイント増)と9割に迫る勢い。
書籍は、各ストアでのセール、キャンペーンによる売れ行きが例年よりも大きく伸長した。佐伯泰英など作家の電子化解禁の動きも続いている。雑誌は読み放題サービスの会員減で、4年連続で二桁マイナスとなった。

 

(電子出版市場規模は、読者が支払った金額を推計したもの。広告収入は含まない。雑誌には定額制読み放題サービスを含む)

 

 

 

 

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