2022年02月01日

Koenig&Bauer社の日本法人となるKoenig&Bauer JP㈱(本社・東京都中央区)が2012年に設立され、日本国内での展開を始めてから今年で10年目を迎える。

パッケージ印刷分野を中心に枚葉オフセット印刷機「Rapida」シリーズの納入数を着実に増やすとともに、これまでは日本で紹介されていなかった数多くの新しく先進的な技術・機構・手法なども紹介してきた。

そしてこのコロナ禍の中、一昨年には菊全判、昨年には倍判の新型枚葉オフセット印刷機の発売も開始。

そこに搭載された高度なテクノロジーは、日本の印刷業界のさらなる発展に寄与すると期待される。

そのような同社の今年の展開について、Koenig&Bauer JPのレネ・ルドビグセン社長に話を聞いた。

 

 

--新型コロナウイルス感染症の流行により、日本国内のみならず世界中の経済が大きく混乱・停滞しています。印刷業界そして貴社を取り巻く状況はいかがですか?

レネ・ルドビグセン社長

レネ・ルドビグセン社長

ルドビグセン コロナ禍は日本だけでなく世界全体に影響を与えていますが、日本の状況はほかの国に比べると良好な方だと思われます。コロナ禍はまだまだ長期にわたって続くと予想されるので、それに合わせて仕事や生活のスタイルを調整する必要があるでしょう。

コロナ禍の影響で人々の在宅率が高くなり、食料品の需要が高まっていることにともなって、食品包装分野が高い成長を示しています。そのようなパッケージ印刷の需要増加を背景に、Koenig&Bauerでは大型枚葉オフセット印刷機の受注が世界中で増えています。また、金属印刷機や広幅フレキソ印刷機の需要も増加しています。

Koenig&Bauerではお客様に合わせたソリューションを提供しており、一般的・標準的な構成の印刷機とは少し違う、特別で複雑な構成をした印刷機への需要が高まっています。さらに、AIを含めたサービスや機械のメンテナンスの必要性も高まっており、当社ではお客様に、印刷機の販売だけにとどまらない包括的なソリューションをご提供しています。

 

--このような混乱状況において、印刷会社が一歩先に行くためのヒントをお聞かせ下さい。

ルドビグセン すべての印刷会社は、自社の戦略を見直して自社の能力に基づいてコア市場を定義する必要があると思います。

Koenig&Bauerが分析する市場トレンドとしては、オンラインでのeコマースの増加によってパッケージ分野が継続的に成長しており、そのパッケージ分野においては脱プラスチック化の流れから紙のような再生可能資源の使用が求められており、この傾向は今後も続くと見ています。もう1つのトレンドは、さらなる短納期化と廃棄物の削減が求められていることです。これらの流れに対応していくためには、ワークフローの統合とインライン品質検査装置の活用がもはや必須要件となってくるでしょう。

そしてもうひとつの市場トレンドとして、人手確保の難しさが挙げられます。この問題を解決するためには、完全自動運転の印刷機による少人数での工場運営、そして半製品や原材料の運搬、納品・配送なども含めたロジスティックスの完全自動化を果たす機械への投資がポイントとなります。

Koenig&Bauerではこのようなことをはじめとしたそれぞれに課題に対して、適切なご提案と必要なコンサルティングしていき、印刷会社のみなさまを支援してまいります。

 

--貴社では2020年に菊全判の最新鋭機となる「Rapida106X」、そして2021年には倍判機の最新鋭機となる「Rapida145/164」と、相次いで新モデルを発表しました。これらの印刷機を開発した背景、注目すべき特徴やポイント、そして導入することでユーザーにどのようなメリットがもたらされるのかについてお聞かせ下さい。

Rapida106X

Rapida106X

ルドビグセン このたびKoenig&Bauerは、生産性向上、自動化の実現、廃棄物削減など、お客様の将来的なニーズにもお応えできるよう、デザインを一新した新しい印刷機シリーズを発表しました。それが菊全判の最新鋭機「Rapida106X」であり、倍判機の最新鋭機「Rapida145(最大用紙サイズ1060×1450㍉)/Rapida164(最大用紙サイズ1205×1640㍉)」もそうです。

ここ数年の世界の印刷業界では、導入する印刷機の用紙サイズを大きくする傾向が顕著に見てとれます。大小どのようなロットであっても瞬発力のある一貫生産体制をベースにした製品のオンタイム出荷が、顧客に提供するサービスのひとつとなってきています。倍判機ならではの大ロットでの高生産性、最新鋭機ならではの自動化による小回り・迅速性と複数ジョブの自動面付け(ギャンギング)処理を掛け合わせることによる小ロットでの生産性が両立され、このようなサービスにも応えられるものとなっているからです。

Koenig&Bauerではこれらの枚葉オフセット印刷機だけでなく、日本の印刷業界のみなさまが要求する最高の品質基準を確保するために、自社製のフォルダーグルアー(製函機)やダイカッター(打ち抜き機)もご用意しており提供することができます。

 

--菊全判の枚葉デジタル印刷機「VariJET106」のベータテストが欧州で開始されました。この機械の特徴、この機械を導入するのに適する市場分野や会社規模、そして日本市場への投入開始時期などについてお聞かせ下さい。

VariJET106

VariJET106

ルドビグセン 「VariJET106」は、技術的にもアプリケーション的にもとても興味深い製品です。基本的には紙器パッケージ向けの製品で、毎時6000枚の印刷速度を持つ、Koenig&Bauer社とDurst社の合弁会社で共同開発しているものとなります。頑健かつ精緻な菊全判枚葉オフセット印刷機「Rapida106」のフレームをベースに、デジタルインクジェット印刷、オフセット印刷、インライン仕上げの長所を組み合わせたこれまでにはない新しいモデルとなっています。インクジェット印刷ユニットを中心として、その前のユニットとしてコロナ処理、用紙トリートメント、オフセット/ロータリースクリーン印刷ユニット、オペークホワイト塗布、コールドフォイルユニットなどを、後のユニットとしてオフセット/ロータリースクリーン印刷ユニット、ニスコーター、ロータリーダイカッティングユニット、穴開け、乾燥ユニットなどを思いのままに組み合わせることができ、ワンパスインライン処理によってこれらの工程を高い見当精度で処理します。

ここ数年、テストマーケティングや新しいキャンペーンのためにパッケージを小ロット生産するケースが急増しています。「VariJET106」はそのようなパッケージ製作であっても柔軟に行えるほか、試作品の製作、さらにはパーソナライゼーションといったニーズに応える製品を開発できたと思っています。とくに日本のような先進国の市場では「VariJET106」が活躍できる素地があるので、大きな期待を寄せています。現在、欧州においてベータテストを実施しており、今年半ばにはデモンストレーションを披露し、その後に納入をしていく予定となっています。

 

--Koenig&Bauerの日本法人となるKoenig&Bauer JPが設立されてから、今年で10年目を迎えます。これまでを振り返っての手応えと今後の展開や日本市場へのアプローチ方法についてお聞かせ下さい。

ルドビグセン Koenig&Bauer JPではこれまでの活動を通して数多くの印刷機を日本各地の印刷会社に納入させて頂き、ご愛顧頂いております。まず、この場を借りて御礼申し上げます。現在は日本市場においても広くみなさまに認知をして頂き、確固たるプラットフォームを構築することができました。これからも日本の印刷業界において強力な存在感を発揮できるよう、全力を注いでまいります。

Koenig&Bauerはお客様のニーズに合わせたオーダーメイドのソリューションを提供しており、日本のすべてのお客様のニーズにお応えすることができると自負しております。私たちは、ポストプレスを含めた一気通貫のフローを構築できる包括的な製品群を提供しています。私たちの製品は最高の印刷製品・最高の印刷品質を生産・実現する機械であり続けるために、今後もマイスター精神に富んだものづくり大国のドイツ国内で製造していきます。

Koenig&Bauerの財務状況はとても好調を示しています。本社の取締役会では日本市場における積極的な成長戦略を承認し、今後5年間で日本でのビジネスを3倍にすることを目標としています。

 

日本印刷新聞 2022年1月31日付掲載

取材・文 小原安貴、Interview・Article Writing Yasutaka Obara

 

 

 

 

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