2022年01月25日

ハイデルベルグ・ジャパン㈱(本社・東京都品川区)では昨年、枚葉オフセット印刷機のレベルをさらに大きくステップアップさせる新モデル、「スピードマスター2020ジェネレーション機」や「スピードマスターCX104」の国内納入を開始した。

また、印刷機単体の性能・パフォーマンス・自動化だけにとどまらず、印刷会社の受注や入稿、材料調達から、印刷、そして納品にいたるまでのすべての工程・作業をエンドtoエンドで自動化する提案している。

そこで同社のヨルグ・バウアー社長に、今後の印刷技術の進化の道筋やこれからの印刷会社像について話を聞いた。

 

 

--昨年を振り返って、印刷業界を取り巻く市場環境についてどのように感じていますか?

バウアー 印刷会社とサプライヤーにとっての最大の問題は、材料費とエネルギーコストの爆発的高騰です。また、受注やジョブ数はコロナ禍の影響によりまだ減少しています。問題は、それを脅威として単にコスト削減して対処しようとするのか、それとも先入観や習慣を克服して真の大きな変化を実現させるのかということだと思います。

 

バウアー社長

バウアー社長

--昨年の貴社の業績はいかがでしたか?

バウアー ハイデルベルグの会計年度は3月に終了するのですが、2021年度はコロナ禍による大きな影響があったとみられます。お客様の生産に影響があったことから、私たちの印刷資材の売上にも直接的な影響がありました。また、機械への投資に関する意思決定も、お客様にとってより困難になっていることがわかりました。

このような傾向は、パッケージ印刷業界のお客様よりも商業印刷業界のお客様の方が顕著でした。現在、2022年度の第1四半期と第2四半期には改善が見られ、コロナ禍前のレベルに戻る分野もあります。ここでもパッケージ印刷業界は、商業印刷業界よりも多くのお客様が正常化の兆候を示しています。

 

--新型コロナウイルス感染症の流行による影響などについてもお聞かせ下さい。

バウアー 世界中で稼働するクラウドに接続された私たちの機械から送られてくるデータにより、印刷物の生産量が15%減少したことがわかっています。コロナ禍前の年と比較して、印刷物の生産量の減少にともなって、機械あたりの印刷資材の使用量は減少し、新しい装置への注文も減少しました。しかし、材料費の高騰に対処するために工程・業務をエンドtoエンドの観点から改善することへのさらなる関心につながり、これにともない働き方や習慣の変化につながるようなソフトウェアや機械への関心も高まっています。

 

--国内での印刷機の新台導入の傾向として、A全判機への人気が高くなっています。ハイデルベルグ社でも中国市場向けにはそのサイズの印刷機を製造しています。日本市場向けにそのサイズの印刷機を販売する予定はないのでしょうか?

バウアー 私たちのオフセット印刷機には異なるサイズで、SX、CX、そしてXLという製品ポートフォリオがあります。そしてA全判サイズ(37インチ=920㍉)もSX、CXではオプションとしてご用意しています。

SXは両面機でもご利用可能なモデルで、商業印刷により適しています。CXは片面機だけですが、ロングとショートバージョンがご利用可能で、商業印刷・パッケージ印刷において幅広いアプリケーションでご利用いただけます。ピークパフォーマンスモデルのXLは、片面機/両面機ともご利用可能で、さらに幅広いオプション、カスタマイジングも可能です。それぞれのお客様とともに、お客様のニーズを調査し、どのタイプの印刷機がもっとも適しているかをご提案します。

昨年末に開催したオープンハウスでご覧頂いたように、私たちはエンドtoエンドソリューションにフォーカスしています。そして、もちろん異なるプレートサイズも考慮に入れています。受注から出荷まで、イメージからそれぞれの印刷機に落とし込むまでのフローも関係しています。

さらに、お客様それぞれがどう運営をしたいかも重要なポイントです。1台の機械を満たすのに十分なこのサイズの仕事はあるか?もしくは、もっと柔軟性のある1台の印刷機がいいのか? スペースにもお金がかかりますので、すべての印刷会社が各サイズの印刷機を1台ずつ揃えられるわけではありません。印刷機とプレートの選択は、それぞれのお客様にとって特別なソリューションとなる重要な意思決定となります。

 

--印刷機の無人・自動運転はPush to Stop技術によって、現実のものとなりました。ハイデルベルグ社では20年程前の段階ですでに、印刷機の自動運転技術についてそのビジョンを語っていました。これは、印刷産業が進む道や将来像を見通せている証だと思います。それではハイデルベルグ社が描く、今後の印刷会社の未来予想図はどのようなものになるのでしょう?

バウアー テクノロジー面では、エンドtoエンドプロセスの自動化やロボット技術がますます重要になっていくと思います。たとえば、私たちのプレートtoユニットソリューションは、大ロットの印刷をするお客様のためにさらなる可能性を示しています。自動化は、ボリュームが少なく小さな機械を持つ印刷会社でもエンドtoエンドで高い価値を創出でき、多くの準備作業をともなうとても小ロットの仕事でも収益性の高い生産を可能にします。

デジタル印刷とオフセット印刷のスマートな組み合わせと自動化も、小ロットから大ロットをこなすお客様まで拡張性があります。ページベースのPDFを用意するだけで出力デバイス/機械に適した自動面付けをするフローを構築しますと、PODとオフセット印刷を問題なく自動的かつ瞬時に変更できます。しかし、お客様が大貼りと手作業による面付けをいまだに行っている場合は、これがうまく機能しないことはたしかです。このように、従来の働き方と習慣は新しい技術を活用したり、その利益を受けることを阻害する要因になることがあります。

カラーマネジメントを検討する場合も同様です。デジタル印刷機の場合、誰もが毎日のキャリブレーションを実施する手間を受け入れており、その結果としてインクキーを操作することなくデータによって色が管理されています。これをオフセット印刷の工程に置き換えますと、「RIP+CTP+プレート+印刷機」が、デジタル印刷機と同様な1つのシステムと捉えられます。人の目で判断するのではなくプレート出力を介してドットゲインを管理し、色を測定することによって定期的なキャリブレーションをする。このように、新しい技術によるメリットを阻害するような従来の働き方や習慣を改め、新しい技術を活用することがポイントとなります。

簡単に言うと、AIとワークフローの自動化、およびロボット工学により、エンドtoエンドの生産機能はさらに向上します。そして、使う人間とオーナーが手を取り、一緒に結果を出していくことが重要だと思います。

 

--日本の印刷関連業界へのメッセージをお願いします。

バウアー 材料費の高騰は大きな試練ですが、大きな変化と改善を実行するチャンスでもあります。持続可能性とは、環境だけでなく、持続可能なビジネスを構築し、運営することでもあります。先入観や習慣を克服して、一緒にゲームチェンジをしていきましょう。

 

日本印刷新聞 2022年1月17日付掲載【取材・文 小原安貴、Interview・Article Writing Yasutaka Obara

 

 

 

 

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