2022年01月05日

ハイデルベルグ・ジャパン㈱(東京都品川区、ヨルグ・バウアー社長)の菊全判枚葉オフセット印刷機「スピードマスターCX104」の国内初号機が錦明印刷㈱(東京都千代田区、塚田司郎社長)の富士見事業部(埼玉県鶴ヶ島市)に納入され、稼働を開始した。導入機は「CO2ニュートラル」機で製造工程において158tのCO2排出をオフセットしている。12月8日には同事業所で稼働を始めた新鋭機の発表会見が行われ、塚田社長から期待が述べられた。

 

3つのキーワードを現場で展開 ①ゲームチェンジ②エンドツーエンド③サスティナビリティ

発表会の冒頭、ハイデルベルグ・ジャパン・土山昌雄営業本部執行役員はこうあいさつした。
「スピードマスターCX104導入にあたって、単に機械を導入するだけではなく、変革するために会社としてさまざまな取り組みをされている。先週開催されたオープンハウスでは、私たちのカスタマーセンターで、3つのキーワード、①ゲームチェンジ②エンドツーエンド③サスティナビリティ(持続可能性)を軸にデモンストレーションを展開したが、今回は実際の現場で、そうした3つのキーワードをどのように展開されているかをご覧いただきたい。
ゲームチェンジは、いままでのように少しの変化ではなく、大きく変えていかないといけないということ。
エンドツーエンドは、端から端へということで、部分最適も大切だが、営業が受注するところから最後のデリバリーに至るまでのすべてのプロセスにおいて全体最適を図っていこうということ。
サスティナビリティは、単年度の短い期間の成功でなく、将来にわたって継続的に成功できる仕組みを作ろうという提案である」

 

属人化の排除を可能に

 

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塚田司郎社長

 

【塚田社長のはなし】
「当社で10年以上稼働してきた両面専用4/4色機の更新時期が訪れた。現代の印刷機は性能・自動化機能・乾燥装置のパフォーマンスが高いので、10年以上前のモデルよりも実生産性が格段に高い。最新の4色機ならば、10年以上前の8色機で処理していた仕事量の7~8割はいけると踏んでいた。しかし、Push to Stopによる自動印刷をはじめとした機能によって人手をほとんど介さずに仕事を処理できる“スピードマスターCX104”ならば、従来の8色機の仕事の7~8割どころか100%を賄える能力があると判断した。あとは、我々がその能力をどのようにしてうまく運用するかが鍵となるだろう。8色機の生産性を維持できると考えて導入した。
海運が滞っていて、コンテナが非常に遅れた。当初の予定では11月の下旬には、Push to Stopの自動運転のテストをして、12月から本稼働の予定だった。
自動化がすすんでいる機械で、オペレーターが不慣れな部分もある。
従来の機械と違うのは、マックスで毎時1万6500枚刷れる。最初から1万6500枚という数字を維持して生産している。
オペレーションスタンドのインキキーには触っていない。いままでと違う。確認のために見ている程度だ。
先日、本番の仕事の合間に、Push to Stop、完全自動運転のテストを実施してみたが問題はなかった。
自動運転は、当初は5割くらいでも仕方がないかなと思っているが、慣れてくれば、営業の判断も含めて、7割から8割は自動運転で印刷できるだろう。この機械に合った仕事を選べるようであれば100%自動運転も可能ではないかと思う。
経営の観点からいうと、第1に、昔からあったインプレスコントロールという概念は、ロングランの品質安定性が最大の目的だったと思うが、市場の要求が変化して、今はショートランにおいてどれだけ早く正確な色調を得てスタートし、そして品質を安定させるかが重要であり、それが大いに役立つようになっている。
立ち上がりから品質安定性があり、信号と同じでOKになるとグリーンのランプが点く。わかりやすい機械だ。
2番目には、これだけ自動化すると、オペレーションが非常に楽だ。
オペレーターの確保が難しいというようなことを時々聞くが、この機械に関しては、オペレーションの負担がほとんどないといってもいいくらいだ。用紙は、準備ステーションから来るし、出たものは反転機にかけるだけだからマテハンの苦労もない。政府は65歳くらいまで職場を提供するようにといっている。わが社も60歳になっても働けるような職場をいろいろなところで考えているが、印刷機については、従来は、スキルのあるオペレーターでも50歳代後半になってくると難しくなってきたが、この機械だとそうした負担感もないので、政府のいっているように高齢になっても働けるし、カラーマネージメントの知識さえあれば女性の方でも動かせるし、経験や勘が要らないので若い方でも使える。オペレーターの確保もしやすいだろう。
3つ目には、1週間動かした時点で8色機と同じ生産結果が出ている。8色機よりはROIは改善されるだろう。
4つ目に、8色機と比べて、シリンダーの数もローラーの数も鉄を使っている量も半分だから、環境負荷も減る。現在の企業は環境負荷のことを考えなければいけないが、4色機で8色機の仕事をすれば環境負荷は半分ではないかとおもう。
5つ目に、最初から毎時1万6500枚で印刷している。通常の用紙であれば1万6500枚を維持できる。
10分くらいで次の仕事が立ち上がるだろうと見ている。印刷機の予定取りは結構難しくて、オペレーターの負担感はかなり高くスピード感を共有していないと難しいが、常にランニングは最高スピードで、段取り替えは10分だということを共有していると予定が組みやすい。
自動化というのは属人化の排除だということがいわれているが、こうしたことを可能にしている」

 

CO2ニュートラルマシン証明書が贈られた

 

発表会の後半では、スピードマスターCX104、プリネクト、サフィラ印刷資材を使って、Push to Stopによる完全自動運転印刷が披露された。

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ハイデルベルグ・ジャパンのヨルグ・バウアー社長(左)から塚田社長に証明書が贈られた

デモンストレーション後、導入されたスピードマスターCX104がCO2ニュートラルマシンであることを証明する証明書が、ハイデルベルグ・ジャパンのヨルグ・バウアー社長から塚田社長に贈られた。

 
【CO2ニュートラルマシン】
ハイデルベルグ社は2011年10月から、すべてのスピードマスターモデルにおいてカーボン(CO2)ニュートラルの印刷機を提供し、drupa 2012からは、ハイデルベルグのすべての機械(プリプレス、プレス、ポストプレス)が、CO2ニュートラルで利用できる。国際エコバランス標準に従って、ハイデルベルグ社は、ダルムシュタット工科大学と協力して、印刷機械のCO2フットプリントを正確に計算するための方法を開発し、ヨーロッパ最大の応用研究機関であるフラウンホーファー・インスティチュートが、ハイデルベルグ社が印刷機を製造するためのCO2排出量をルールに従って計算していることを認証している。印刷機製造中に生成されるCO2は、印刷機のCO2排出量に一致した気候保護認証書を購買することで補うことができる。排出のクレジット、もしくは、認証書は、特別な気候保護のプロジェクトに割り当てられている。ハイデルベルグ社は、ゴールドスタンダードによって承認された認証を得ることに決定している。

 

【スピードマスターCX104】
「スピードマスターCX104」はデジタルトランスフォーメーション、自動化機能によって誰にでも高いレベルで扱えることによって属人性を排除することに主眼を置いた最新鋭の印刷機。
ジョブ替えや準備時間を最小限にするためのソフト「インテリスタート3システム」にはAIが搭載され、印刷ジョブを処理するために必要なジョブ替え作業の処理順を自動的に決定する。
印刷機の状況を継続的に監視しており、現在の印刷機の状況を踏まえて以降のジョブについても勘案し、最短・最適な準備作業を分析・判断して、そのジョブ替え作業を自動的に開始・実行する。
本刷りまでの色合わせ時間の極少化および本刷り中の色調管理を果たすさまざまなプリネクト色測定システム、多くのアシスタントシステムを搭載して印刷オペレーターを可能な限りサポートする印刷コンソールステーション「プリネクトプレスセンターXL3」なども搭載している。
用紙厚0・03~1㍉という薄厚兼用機でかつ厚紙やフォイル、PP、PETなどの非吸収性原反などへの幅広い対応能力を有しているが、どのような原反を使用する際でもジョブデータに応じて印刷機が自動セッティングしてスムーズな用紙供給を実現するプリセットプラスフィーダーの最新型を搭載。
ワンマンオペレーションをサポートする機能として、印刷/コーティングユニットに「インテリライン(カラー制御LED)」が備えられ、印刷オペレーターが印刷機から離れた場所で作業をしていても印刷機の状態を光の色によってわかりやすく知らせ、手動での介入が必要となった場合にはそれを促してくれる。
アニロックスローラーの重さは従来よりも30%軽くなってアニロックスローラーの交換作業の負荷・時間が大幅に軽減され、1人だけの作業でも90秒ほどでできるようになった。
印刷機の最高速度で印刷しても均一なコーティングが可能となる新しいベアリングユニットとチャンバーブレードを採用している。

 

 

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