2021年08月11日

不良品混入といった印刷事故が起きてしまうと、刷り直しなどによるコスト/労力面で大きな負担がかかるのみならず、その会社の信用失墜・顧客流出といった大きな損失につながることもある。

それを回避するために全数目視検品で対応する会社もあるだろうが、少数のスタッフでの運用や働き方改革といった観点からするとそれも効率的ではない。

そこで近年では、パッケージ印刷分野のみならず商業印刷分野でもインライン印刷品質検査装置を活用する割合が増えてきた。

その開発メーカーであるジクス㈱(本社・東京都板橋区、高原亮介社長)では、機械による正しく厳しい目で印刷物の欠陥を検知するのはもちろんのこと、1社ごとにマッチした印刷品質検査装置の提案とカスタマイズ、さらには単に欠陥検知をするだけにとどまらない、印刷品質検査装置によって差別化をする提案も行っている。

そこで同社の高原社長に、印刷品質検査装置にまつわる最新事情について話を聞いた。

 

パッケージ印刷はもちろんのこと商業印刷分野でも品質検査装置の導入が一般的に

多色機だけでなく単色機への搭載が増え、工場で稼働する全印刷機に搭載する例も

 

--以前からパッケージ印刷では高い精度での品質検査体制が求められていましたが、近年では商業印刷分野でもそれと変わらぬ高い品質検査体制が求められるようになってきました。最近の枚葉オフセット印刷における印刷品質検査の傾向などについてお聞かせ下さい。

高原社長

高原社長

高原 商業印刷用途の枚葉オフセット印刷機にインラインの印刷品質検査装置が搭載され始めたのは、10年程前からになります。ここ2~3年は、これまでならば搭載されることがなかった単色機での導入も増えています。

印刷品質検査装置を導入される会社には大きく2つのタイプがあると感じています。1つは、印刷品質検査装置を搭載することが一般的になりつつあるので、周囲の動向に合わせて搭載されるケース。もう1つは、印刷品質検査装置を搭載することで差別化することを狙っているケースです。周囲の動向に合わせたり顧客から促されて導入されるのではなく、後者のように自らが踏み込んで導入される会社というのはおおよそ半分くらいでしょうか。そのような会社では、1台に導入されると、その後に2台目、3台目と立て続けに導入されるケースがほとんどです。これはやはり、印刷品質検査装置を導入されたことで本当に効果があがったり、助けられたことを実感して頂けたのでしょう。このような導入パターンは、商業印刷分野もパッケージ印刷分野も同じ傾向にあります。

 

商談時に要望・用途・予算などを丹念にヒアリングして

それぞれの印刷現場に合った仕様にカスタマイズして納品

 

--貴社が提供する印刷品質検査装置の特徴についてお聞かせ下さい。

高原 当社ではつねに、印刷品質検査装置の使い方・品質保証の在り方によって、ユーザーが差別化を謳うことができるような製品やシステムの提供を目指しています。

現実問題としまして、印刷品質検査装置を導入後、うまく活用されているケースと導入したものの活用しきれていないケースがあります。印刷品質検査装置を導入することによってなにをやりたいのか、これが明確な会社はうまく活用されている傾向があります。そのような会社に共通しているのは、導入される際の要求事項がはっきりしていることです。

当社ではその点を踏まえて印刷品質検査装置を提供しています。そんな当社製の印刷品質検査装置の最大の特徴は、ユーザーの要望を事前にヒアリングし、それに応じた機能を組み合わせたり開発をする、『カスタマイズ』をする能力です。A社には標準品を納め、B社は要望があったので特注品を納めるという形ではなく、すべての注文について「印刷品質検査装置でなにがしたいのか」をしっかりとヒアリングし、そのニーズ・要求内容に応じてひとつひとつをチューニングして組み上げます。ですので、当社にとってはカスタマイズすることがスタンダードなのです。

身近なものにたとえますと、スマートフォンにはたくさんの機能が搭載されていますが、それぞれの人によって使わない機能もたくさんあります。しかし、こと印刷品質検査装置につきましては、使わない機能にかけるコストをかけるのは無駄と言わざるを得ません。ユーザーにとっては目的を達成するのに必要な機能さえあればいいわけです。

たとえば、印刷物の色調設定については印刷品質検査装置の機能を頼ろうと思っていないユーザーには、色相・濃度監視ができる機能は不要となります。また、単色機に印刷品質検査装置を搭載されようとするケースですと、刷り単価が低い単色機だからこその導入背景があるはずですので、その意図を汲み取って余計な機能を削ぎ落とし、ユーザーに無駄なコストをかけさせないことを心掛けています。

このように、当社では金額の多寡に関わらず、まずユーザーに要望をお伺いし、それにふさわしい機能、カメラの台数や機種、照明の製作、機械デザインなどをその都度カスタマイズしています。

 

--その中で、枚葉オフセット印刷機用のインライン印刷品質検査装置「Lab-vision」の特徴についてお聞かせ下さい。

高原 「Lab-vision」シリーズでは今年4月、最新版となる「Lab-visionⅢ」の提供を始めました。

最新版の特徴の1つは、印刷物の欠陥を検知するだけでなく色相・濃度も読み取り、それに応じて印刷機のインキキーを自動コントロールできる機能を搭載しました。また、インキキーの自動コントロールまではしなくても、たとえば印刷物のカラーパッチを読んでグラフ上に展開し、インキゾーンごとの濃度をモニターするということもできます。

さらに、バリアブル印刷対応として、バーコードなどをチェックする機能も備えました。最近、多面付けのパッケージで、それぞれにバーコードがつくケースがあります。それが製品となって店頭に並んだ時、そのバーコードが読めないと大問題となってしまいます。インライン印刷品質検査装置によって「バーコードをきちんと読める」というエビデンスを残すことが重要となっており、印刷会社が印刷物発注者に対して信頼感を与えられるようにもなります。

 

印刷中のオンタイムでの欠陥検知のみならず品質検査のエビデンスにも

経営者が必要とする機能とパフォーマンスで品質管理部門の最適化

 

--たとえば商業印刷分野だとどのようなニーズが多いのでしょうか。

高原 商業印刷分野で多いニーズは画像の閲覧システムで、これは「Lab-visionⅢ」にも搭載しました。どのような機能か簡単に言いますと、Webブラウザで品質管理の履歴を見られるようにしたものです。複数台の印刷機の品質管理情報がクラウドへ自動的にアップされ、インターネット経由でその情報にアクセスして見られるのです。

従来、印刷会社が持つ欠陥検査情報というビッグデータは、それぞれの印刷機内にとどまって死蔵されています。印刷オペレーターにとってはオンタイムで欠陥を検知してくれることについては価値を感じますが、以前のジョブの検査履歴情報にはなんの価値もありません。しかし経営陣や営業部門にとっては、納品してしばらくしてからトラブルが発覚した際、品質検査のエビデンスとしてデータを提出できることはとても大きな意味と価値を持ちます。ところが、そのデータがどの印刷機のどこにあるのか、それを見つけ出すのはとても大変なことです。各印刷機についている印刷品質検査装置の所へ行って作業の手を止めさせないと検索できなかったり、もしくは検査装置の隣にある閲覧専用のコンピューターで探したりするのでしょう。

欠陥検査情報がクラウドサーバーにあってWebブラウザで営業や品質管理部門の人も見られれば、ほかの業務や作業はそのまま行いながら、調べたいものを簡単に検索することができます。現在、どの印刷会社でも少数精鋭でやっていますので、突発的な対処作業に時間や労力をかけてはいられません。印刷品質検査装置は印刷現場での単純な欠陥検知だけにとどまらず、営業部門や品質管理部門の最適化という部分にも活躍範囲が広がっていますし、とくに経営者が必要とする印刷品質検査装置のパフォーマンスはこのような部分ではないかと思います。

 

--そのほかの最新機能にはどのようなものがありますか。

高原 従来の印刷品質検査装置は印刷物に欠陥があると検知しますが、その欠陥の内容が水タレなのかヒッキーなのか地汚れなのかを判断することはできませんし、はたまた元々紙についていた脱墨残りや用紙搬送中のバタつきも検知してしまうこともあります。これらの判断は印刷オペレーターが行っていますが、それをAIに判断させる機能を開発しました。これらの欠陥をAIが正しく判断できるように学習させるべく、各印刷品質検査装置に印刷オペレーターが欠陥の内容や情報について教育するアノテーション機能を標準で備えました。

たとえば紙のバタつきを欠陥として検知したもののそれを不良品とはしたくない場合、そのような挙動・反応は正常品であるとAIに教育・学習させると、次回以降は紙がバタついても欠陥ではないと判断してくれるようになります。

 

デジタル印刷/バリアブル印刷用の品質検査装置も開発

可変部だけではなく1枚1枚すべての印刷物を全面検査

 

--デジタル印刷分野でも印刷品質検査装置へのニーズが高まっています。貴社では「Theory」というデジタル印刷向けの製品を提供していますが、その特徴をお聞かせ下さい。

高原 デジタル印刷分野での印刷品質検査装置へのニーズは、急激に高まっています。この「Theory」は、オフセット印刷で培ってきた検査方式をそのままデジタル印刷に適用したものとなります。

これまでのバリアブルの印刷品質検査装置は、たとえば宛名やバーコードなど、デジタル印刷の「バリアブルな部分だけ」を検査するものでした。しかし、実際のニーズはそうではありません。そこで「Theory」では、背景の図柄も含めた印刷物全面を、1枚1枚絵柄が違っていたとしてもこれまでのオフセット印刷と同じように全面検査できるものとして開発しました。

「Theory」はどの印刷機にも対応します。すべての印刷機を同一メーカーで揃えているという印刷会社はほとんどありません。異なるメーカーの印刷機を並列して使っていることにより、それぞれの検査レベルや使い勝手、上流側から流し込むデータの送り方などが違うと、品質検査をするために多大な負荷が掛かることになりますが、そんな心配もありません。

このようなことは当然、枚葉オフセット印刷機でも同じことが言えます。たいていの印刷会社では異なるメーカーの印刷機が稼働していますが、印刷品質検査装置が同じならばすべての印刷物の品質保証を同じレベルでできます。そのような観点から、印刷機は異なるメーカーのものが稼働していても、印刷品質検査装置は当社製で揃えているというユーザーも多くあります。

 

品質検査・品質保証によってユーザーが差別化できるようにサポート

 

--今後の貴社の展開についてお聞かせ下さい。

高原 市場動向として感じているのは、オフラインの印刷品質検査装置へのニーズが高まっていることです。この背景には、すべての印刷物が検査済みであることを望む印刷物発注者が増えていることがあります。そのため、外注で製作依頼した印刷物について、元請けの印刷会社がオフラインで検査するケースが急増しており、A3判やA4判の印刷品質検査装置へのお問い合わせも増加しています。

また、品質検査をする際、多くの会社では刷り出したOKシートをマスターとして、本刷りをする印刷物と比較・照合しています。ただ、もしそのOKシート自体に欠陥があってそれを見落としていた場合、すべての納品物に欠陥が出てしまいます。したがいまして、入稿用PDFをマスターにして照合することがもっとも良いわけです。

しかしながら、デジタルのPDFの色と印刷物の色はまったく違います。モニターの白色と紙の白色では当然ながら紙の白色の方が暗くなるように、ほとんどすべての色はPDFと印刷物では違うのです。現在も、PDFデータをマスターとした印刷品質検査装置が提供されていますがその検査の精度はとても低いものとなっています。たとえば、タイトル文字がなくなっているというレベルは検知できますが、PDFと印刷物では色の鮮やかさが違うのでこれをそのまままともに検知するとすべての印刷物が欠陥だらけになってしまうからです。それを避けるために検査レベルを極端に抑え、色の違い程度では検知しないようにしているのです。

そこで当社では、入稿されたPDFデータから検査・照合するためのPDFを生成する色変換エンジンを作りました。PDFtoPDFで、印刷品質検査をするためのPDFを作成し、そのPDFと印刷物を比較・照合するのです。こうすることで色がきちんと合いますので高精度な検査ができるようになります。

このシステムをデジタル印刷のみならず、枚葉オフセット印刷にも展開し、さらには刷り出し・色合わせ作業でも活用することにも展開することが次のステップとなります。

 

日本印刷新聞 2021年8月2日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

 

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