2020年11月30日

㈱リコー(本社・東京都大田区、山下良則社長)は、感熱紙の主原材料となる顕色剤としてより安全な非フェノール系化合物への転換を実現し、来春から国内販売を開始する。

この取り組みを通して、広く安心して使ってもらえる感熱紙製品を世の中に提供することを目指す。

その狙いと背景について、同社IMS事業本部TM事業センターサーマル営業部の新保斉スペシャリストに話を聞いた。

 

--まず、リコー製の感熱紙の特徴についてお聞かせ下さい。

新保スペシャリスト

新保スペシャリスト

新保 当社の感熱紙は、食品計量ラベル、物流配送ラベル、劇場チケット、医療管理ラベル、検針用紙、商品タグなどの分野でよくお使い頂いております。その当社製の感熱紙の特徴として、高精細、高感度、高耐熱の3点が挙げられます。

高精細であることのメリットとしましては、たとえば商品タグや配送伝票、チケットなどで2次元コードやバーコードなどを読み取る際、画像のキレが良いと認識率が高まります。高耐熱のメリットとしましては、たとえば食品パッケージの価格ラベルに使う際、電子レンジで加熱してラベル全体が黒くなってしまうとバーコードが読み取れなくなりますし、見た目の点でも商品イメージが悪くなってしまいます。当社製の感熱紙は熱や擦過などのストレスで画像が消えず、無印字部の黒ずみも抑えられる点にすぐれていると考えています。

当社製の感熱紙は、当然ながら世界各国の法規や世の中の流れに応じて、厳しい製品評価基準を社内内部に設け、その基準をクリアしたものだけを製品として提供しています。環境負荷、材料の管理や削減もしながら、安全と環境を意識して製品を開発・提供しています。

 

--感熱紙の構造について簡単に教えて下さい。

新保 感熱紙は、基材の上にサーマル層というものがあります。この層は、無色の染料と無色の酸性物質(顕色剤)がコーティングされた状態となります。この層にサーマルヘッドという熱源を接触させることで、部分的に溶解した染料と酸性物質が結びつき、染料が発色体となって画像が描かれます。

 

--このたび、感熱紙の主原材料となる酸性物質(顕色剤)を、より安全なものに転換したということですが。

新保 はい。この酸性物質に、これまでは「フェノール」と呼ばれる化学構造部位を持つフェノール系化合物が多く用いられてきました。

フェノール系化合物の中でもビスフェノールAは、従来から安全性が低い物質としての認識がされており、健康被害を防止する対策が取られていました。これまで日本や米国では感熱紙での使用は避けられていたものの、EUでは近年まで利用されていました。ところが、低使用量での内分泌かく乱物質(環境ホルモン)としての挙動が懸念され、安全性の再調査が進められた結果、EUでも高懸念物質に登録され、現在では感熱紙への利用に厳しい規制が設けられています。そして、ビスフェノールAの代替物質として広く採用されていたビスフェノールSも同様の懸念が持たれており、安全性の調査が進められています。

もちろん、これまで提供している感熱紙も製品としての安全性を確保した上で販売をしておりますが、化学物質に対する世界の目はどんどん厳しくなってきております。このような状況を受け、当社ではフェノールという構造自体から離れた方が安全性をよりいっそう高められると考え、フェノール系化合物以外のものを主原料とするフェノールフリー化を決断しました。これはとりもなおさず、顕色剤をフェノールフリー化することで製品自体の安全性をより高めるとともに、感熱紙製品を世の中でこれからも安心してお使いいただくための取り組みです。

 

--その新しい製品の特徴についてお聞かせ下さい。

新保 我々が使用する新規主原材料が環境や人体に与える影響は、これまで使用してきた物質よりも小さくなります。

その第1弾製品を来春から発売します。顕色剤をフェノールフリー化した上で品質やコスト、生産性を同等にするための技術的難易度は高かったのですが実現することができました。したがいまして、これまでの製品の特徴である高精細、高感度、高耐熱についてはまったく変わらない品質になっており、ご提供価格も変わらない予定です。また、印刷するためのハード製品についてもこれまでのものを継続して使うことができます。

まず、食品計量ラベルや物流をラベル、医療での検体ラベルなどさまざまな用途でお使いいただいている「150LA-1」などの品種を来春から発売を開始し、今後は製造・販売する感熱紙を順次フェノールフリー化していき、最終的には全製品をフェノールフリー化します。そして、フェノールフリー化した感熱紙を世の中で広く使って頂くことで、感熱紙市場全体のフェノールフリー化をけん引し、人々の生活の質の向上(健康負荷軽減)やSDGsの達成に貢献していきたいと考えております。

 

日本印刷新聞 2020年11月30日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

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