2020年11月25日

大日本印刷は、市谷事業所(東京都新宿区)の再開発プロジェクトの一環として、1926(大正15)年の竣工以来「時計台」の愛称で親しまれてきた旧営業所棟の建物を修復・復元し、活版印刷の技術とその魅力を伝える文化施設「市谷の杜 本と活字館」(東京都新宿区市谷加賀町1の1の1)として2021年2月11日(木)から一般公開する。

 

市谷の杜 本と活字館

市谷の杜 本と活字館

 

「市谷の杜 本と活字館」は、DNPの事業の原点である活版印刷の職場を一部再現し、文字のデザイン、活字の鋳造から、印刷・製本までのプロセスを展示、紹介する施設。昭和初期の印刷機が稼働する様子や活版職人が作業する姿も動態展示の形で公開する。また、参加型ワークショップなど、来館者に活版印刷のモノづくりを体験する機会も提供する。「市谷の杜 本と活字館」は、印刷所でもあり、モノづくり工房でもある“リアルファクトリー”。

 

DNPは、その前身の1社である「秀英舎」時代の1886(明治19)年、東京・市谷に出版印刷の製造拠点を構えた。この工場はその後、都心にありながら世界最大規模の出版印刷工場となり、2010(平成22)年からのDNP市谷地区全体の再開発工事によって閉鎖になるまでの間、数多くの雑誌や書籍を製造してきた。DNPは創業時から続けてきた活版印刷の作業を03年に終了したが、それ以降も活字や鋳造機、活版印刷機などを多数保存してきた。

 

印刷・製本関連業は新宿区の地場産業の一つでもあり、DNPは区内の出版社や印刷・製本会社とともに、その発展に尽くしてきた。そうした地域的特性も踏まえ、大正期の建築を市谷で復元するとともに、活字や活版印刷機を一部公開し、活版印刷文化を未来に残していくための施設を開設するもの。

 

DNPは現在、独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、幅広い分野で事業を展開している。その基礎にあるのは出版印刷で培ってきた数々の技術である。「市谷の杜 本と活字館」は、その出版印刷の原点である活版印刷について、来館者に理解を深めてもらうとともに、親しんでもらうことを目的としている。

 

「市谷の杜 本と活字館」を開設する建物(通称「時計台」)は、秀英舎(1876年創業)が50周年を迎えた1926(大正15)年に「営業所」として竣工した。その後、太平洋戦争時の空襲でも被災せず、増築を行いながら社屋として使用してきた。歴史的遺産ともいえるこの建物は、土居松市(東京高等工業学校教授)と宮内初太郎(宮内建築事務所)が手掛けた分離派(セセッション)様式の建築で、鉄筋コンクリート・鉄骨構造が採用されていた。土居はこの建築構造の研究における第一人者だった。

 

【「市谷の杜 本と活字館」の構成と主な企画内容】
 

○1F
・文字(秀英体)のデザイン、活字の型の彫刻(母型彫刻機)、活字の鋳造、活字を拾う文選、活字を組版する植字、印刷、製本など、活版印刷の各工程を展示。
 

文選

活字を拾う文選

 

植字

活字を組版する植字


 

○2F
・活版印刷機(テキン)、リソグラフ、UVプリンター、レーザーカッターなど、多様な印刷機や加工機を備えており、来館者参加型のワークショップ等を開催。

・ワークショップで使う紙や雑貨、印刷・製本に関わる道具や書籍を販売。

・印刷や本づくりにまつわる企画展を開催。
 

活版印刷機(テキン)

活版印刷機(テキン)

 

今回、竣工時の姿に復元するため、床のタイルの一部を当時のまま残したほか、天井や柱のレリーフも当時の状態を再現している。

モノクロ写真しか残っていなかったため外壁の色の特定に苦労したが、同時期に建てられた「表参道同潤会アパート」の復元の際に壁面調査に携わった加藤雅久(居住技術研究所)の協力を仰ぎ、当時の色の再現に取り組んだという。

ファサード(正面デザイン)は、秀英舎と日清印刷の合併により大日本印刷が発足した35年当時の姿を復元した。52(昭和27)年に増築した3階部分については、撤去して竣工時の姿に戻した。

1階に展示した、大正・昭和初期に使用されていたと思われる平台印刷機については、稼働できる状態で保存されていなかったため、駆動方法の調査を行い、不足部品を設計・製作し、動力を組みつけるなどして復元した。建物および印刷機の復元のプロセスがわかる動画は、館内で視聴できる。

 

「市谷の杜 本と活字館」 https://ichigaya-letterpress.jp/

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