2020年11月10日

印刷のコンビニエンスストアを標榜し、あらゆる商業印刷物のほか、書籍、美術印刷、ポスター、大判出力などさまざまな印刷分野のニーズに応えることで市場からの支持を集めている㈱アトミ(本社・東京都小平市小川東町5の13の19、五十嵐容子社長)では、今年6月、デジタル/オンデマンド印刷機群を集約した新棟「PODセンター」を開設した。

3台のLED-UV機「RMGT940ST」が並ぶオフセット印刷工場

3台のLED-UV機「RMGT940ST」が並ぶオフセット印刷工場

これまでオフセット印刷機と混在して設置されていたデジタル印刷機群をこの新棟に移設。

オフセット印刷工場には現在、リョービMHIグラフィックテクノロジー㈱製のA全判LED-UV印刷機3台が並んで稼働している。

同社ではこれまで、オフセット印刷機には別方式の他社製UV印刷機を採用してきたが、平成30年11月に4色機「RMGT940ST-4+LED-UV」、平成31年2月にも4色機「RMGT940ST-4+LED-UV」、そして今年9月に2色機「RMGT940ST-2+LED-UV」を立て続けに導入し、完全LED-UV印刷化を果たした。

 

ランプ式省電力UV印刷では熱によって原反がカールすることも

その課題解決に向けてLED-UV印刷に着目

 

同社は昭和44年創業の総合印刷会社。

本機校正、特色印刷、立ち合い印刷といった他社が好まないような仕事を積極的に受けていく中で顧客からの厚い信頼を勝ち得て、その顧客からの良い評判がまた新たな顧客を呼び込み、とても数多くの幅広い層の顧客を持つ会社に成長している。

五十嵐社長(左)と有田会長

五十嵐社長(左)と有田会長

幅広い仕事を受けている同社だが、オフセット印刷部門において問題となっているジャンルの仕事があった。

それは、薄紙印刷の仕事とクリアファイルの仕事だ。なぜならば、ランプ方式の省電力UV印刷は原反に熱を与えるため、これらの原反ではカールしてしまうからだ。

「近年、とくに官公庁を中心に薄紙を使用する仕事が増えてきている。A判で35㌔㌘や28.5㌔㌘といった薄紙で、さらには再生紙を使用するケースも散見される。これまで使ってきた印刷機は通常の紙厚ならば問題ないのだが、このような用紙だとフィーダートラブルが頻発してしまっていたので外注対応をしていた。片面印刷であっても印刷することが難しかったがこれが両面印刷となると、表面を刷ってUV乾燥するとその熱で紙がカールしてしまうので裏面の印刷ができない。そこで、UV照射において熱を原反に与えないLED-UV印刷機によってこの問題を解消しようと考えた」と同社の有田昌城会長は語る。

 

薄紙再生紙でもスムーズなRMGT製印刷機のフィーダーの安定性に魅力

フィーダートラブルの心配がないのでワンマンオペレーションも可能に

 

そこでLED-UV印刷のパイオニアであるリョービMHIグラフィックテクノロジー製の印刷機で薄紙印刷のテストを行ったところ、フィーダーからスムーズに紙が通り、かつその薄紙を表面印刷直後に裏面印刷しても印刷機の最高速度で安定したパフォーマンスを示した。

LED-UVのハイパワー化によって、用紙と原反との距離も離れているので厚紙印刷の仕事でも問題ないことが確認できたことから、「RMGT940ST-4+LED-UV」の導入を決めた。

「実機を見学した際、フィーダーの性能が良い点に惚れてしまった。一緒に見た当社の印刷責任者も、フィーダーがとても良いと評価し、そして印刷物自体も良い物が出ているということで採用を決めた。最初の“RMGT940ST-4+LED-UV”が納入されて印刷オペレーターの研修中だったが、その段階で印刷機の性能・パフォーマンスが間違いないと判断できたので、外注していた薄紙印刷の完全内製化をするため、すぐさま2台目の発注もした」(同社・五十嵐社長)

 

9月に導入した「RMGT940ST-2+LED-UV」

9月に導入した「RMGT940ST-2+LED-UV」

LED-UV印刷化した効果はすぐさま表れ、技術的な理由で外注に出すことはほぼなくなった。

各種自動化機能を搭載したこともあり、本機校正や特色印刷、小ロット印刷の仕事が多い中にあって、仕事替え時間が短くなり、かつフィーダートラブルによるチョコ停もなくなったことで実生産性が向上。

印刷部門の残業時間も減少して、今では多い月でも15時間程に抑えられている。

このような高いパフォーマンスを受け、今年9月に2色機の「RMGT940ST-2+LED-UV」も導入し、同社のオフセット印刷は完全LED-UV印刷化した。

印刷オペレーターは各機に1人ずつと紙積み専任者1人で、3台の印刷機を4人で回している。

フィーダートラブルが起こることがほぼないので、各印刷機にフィーダーマンを付ける必要がないのも、これらの印刷機を導入したメリットだ。

また、すべての印刷機が同一版サイズなので、たとえば同社が得意とする5~6色の特色印刷の仕事の場合、4色機で印刷してすぐさま特色を2色機で完成させるといった、柔軟かつ効率的な運用もしている。

 

デジタル印刷機を集約したPODセンターを建設

『印刷のコンビニエンスストア』としての設備と環境が整う

 

PODセンターの外観

PODセンターの外観

同社では今年6月、デジタル/オンデマンド印刷機群を集約した新棟「PODセンター」を竣工した。

デジタル印刷機の対応ロットが大きくなり、オフセット印刷と使い分ける分岐点は2000部程としている。

このような点もあり、オフセット印刷機を菊半裁からA全判にサイズアップした。

そのサイズアップした3台のオフセット印刷機を従来工場に並べて稼働させるため、デジタル印刷機群をこの「PODセンター」に集約させている。

この「PODセンター」では、小ロットの仕事を完成まで一貫生産できるワークフローを考え、1階にはデジタル印刷機群のすぐ横に断裁機・製本機を配置し、作業導線を効率化。

2階には大判インクジェット印刷機やカッティング機、ラミネーターを配置している。

 

PODセンター1Fには多くのデジタル印刷機が稼働

PODセンター1Fには多くのデジタル印刷機が稼働する

LED-UV印刷による薄紙両面印刷をはじめとした対応範囲の拡大、同一判サイズ機を揃えたことによる柔軟かつ瞬発性に富む生産体制、そして一貫生産体制によるデジタル印刷との使い分けができる体制により、印刷のコンビニエンスストアを標榜するに足る環境が整った。

五十嵐社長は、「今回の一連の設備投資や環境構築によって、高次元でのオフセット印刷とデジタル印刷の割り振りができるようになった。当社では皆が一丸となって良い製品を作るために邁進している。時代の変化に的確に対応して整えたこれらの設備を使い、それを実践していきたい」と将来展望を表した。

 

 

日本印刷新聞 2020年11月9日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

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