2020年08月17日

愛知県の総合印刷会社、ネッツ(愛知県半田市潮干町1の23、榊原研社長)は、2019年9月、CTPセッターの更新を機に、富士フイルムの完全無処理CTPプレート「SUPERIA ZD-II」を導入し、作業の省力化や品質の安定化、コスト削減などの効果を挙げている。導入の経緯や、プレート性能に対する評価などを聞いた。

 

導入判断はオペレーターファースト

榊原研社長

榊原研社長

ネッツは1949年に「誠進堂印刷所」として創業し、活版印刷からスタート。52年からオフセット印刷へとシフトし、一貫して商業印刷を軸に事業を展開してきた。現在は本社・第一工場にオフセット輪転機3台、第二工場に枚葉UV機1台と中綴じライン5本、各種折機械5台を備え、情報誌やフリーペーパー、製品カタログなどをメインに手がけている。
3年ほど前からは、印刷事業と併行して人材事業にも力を入れている。2018年にはフィリピンのセブ島に技能実習生向けの日本語学校「まごころ日本語学校」を創設。日本語に精通した現地スタッフの協力を得て、日本語はもちろん、日本の文化や習慣なども含めた教育を行い、現在では多くの優れた人材を輩出している。
何事においても既成の概念にとらわれることなく、新しい分野に積極的に挑戦する同社は、本業である印刷事業においても、業界の流れを的確に読み、さまざまな視点から現場改革を進めている。CTPの完全無処理化も、その一環である。

 

西川高志取締役

西川高志取締役

「無処理化は何年か前から検討していたが、ちょうどCTPセッターの更新時期が近づいていたため、そのタイミングで切り替えようと考え、2019年の春ごろから、無処理プレートを導入されている印刷会社の工場を見学させていただくなど、情報収集を進めてきた。ただ、実際にテストを始めるまでは、汚れや耐キズ性、耐刷性など、若干の懸念点があった。現場も同じような不安を持っていたようだ」(西川取締役)
同社では、新たな生産設備や資材を導入する際、「オペレーター・ファースト」の考え方で製品の選定を行う。今回の無処理プレート導入でも、西川取締役は「現場のオペレーターが納得したうえで使えること」を優先的に考えた。

現場で使いにくい部分はないか。期待するメリットは得られるのか。テスト運用で検証を進めていく中、導入を決断する大きなポイントになったのが、富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(FFGS)の技術サポートだったという。
「何か疑問があったときに、すぐに答えを出してくれる。予期せぬ現象が起きたときも、迅速に解決できる。これはオペレーターにとって非常に大きな安心感になる。FFGSは、無処理プレートに関して多くの情報やノウハウが豊富なのはもちろん、プリプレスだけでなくプレスやポストプレスの知見もお持ちであるから、運用中に何かトラブルが起きた際にも的確に対応していただけると感じた。この安心感、信頼性の高さが、導入の最大の決め手だ」(西川取締役)

 

 

プリンター感覚でプレートを出力

 

19年9月、CTPセッターの更新と同時に、完全無処理化を達成。当初は、SUPERIA ZD-IIと他社無処理プレートを併用する形で運用をスタートした。

福本渉氏

福本渉氏

無処理化のメリットについて、プリプレス課の福本渉氏はこう話す。
「自現機のメンテナンスや現像液管理、廃液処理がなくなったことで、現場の負担は大幅に軽減された。現像工程が原因と見られる汚れの発生もなくなっている。極端ないい方をすれば、プリンター感覚でプレートを出力できるようになっており、現場としては非常にありがたい」
コスト面のメリットも大きく、薬品の購入費用、廃液処理費用、自現機の稼働に伴う電気代などがすべてゼロに。加えて、刷版工程の工数が減った分、より柔軟な人員配置が可能になったことも、会社としてのメリットになっている。
「無処理化による刷版工程の省力化効果は予想以上だった。刷版専任のオペレーターを置く必要がなくなったため、DTPオペレーターが刷版担当を兼任する形でも運用でき、作業分担の最適化が図れている」(西川取締役)

 

新海孝宏課長

新海孝宏課長

一方、印刷工程ではSUPERIA ZD-IIをどう評価しているのだろうか。
同社はオフ輪3台とLED-UVの枚葉機1台を運用しているが、導入前、とくにオフ輪の現場では、機上現像に対する不安や、耐刷性への懸念があったという。しかし、オフリン課の新海孝宏課長は「実際には何ら問題なく運用できている」と語る。
「機上現像に関しては、刷り出しの際の水の調整などに不安を感じていたのだが、FFGSのアドバイスにより最適な水量を把握できたため、実運用では安定して印刷できている。耐刷性についても、導入から半年以上経つが、問題になるようなことは一切ない」
また、西川取締役は、枚葉機におけるUV適性についても満足のいく水準にあると評価する。
「枚葉機では、当初から有処理プレートと同様の感覚で運用でき、切り替えもスムーズに進みた。現場からは、『他社の無処理プレートに比べて耐薬品性が高く、キズにも強いので扱いやすい』という声を聞いている」
さらに、印刷現場では意外な効果も出ているという。
「無処理プレートの場合、安定した機上現像のために、印刷機も日常のメンテナンスがより重要になるが、それによって現場の負荷が増えるかというとそうではなく、印刷機のコンディションが把握しやすくなるというメリットにつながっている。ちょっとした変化にも気づきやすくなる。そのため、印刷機の調整や日常メンテナンスに対するオペレーターの意識も変わってきたと感じている」(西川取締役)

 

現場での評価を踏まえ、ZD-IIに統一

 

大幅な省力化により、専任オペレーターが不要に

大幅な省力化により、専任オペレーターが不要に

大幅な省力化により、専任オペレーターが不要に。取り扱い性についても現場の評価は高い

取り扱い性についても現場の評価は高い

プリプレス部門、印刷部門ともに、SUPERIA ZD-IIに対するオペレーターの評価は高く、経営的観点から見ても、省力化による人員配置の最適化、現像に関わるコストの削減、環境負荷の低減など、明確な効果が得られている。こうしたことから、同社は20年3月、CTPプレートをSUPERIA ZD-IIに一本化した。
「プレート自体の性能に対する信頼感ももちろんだが、やはりFFGSの営業・技術スタッフの親身な対応による安心感も、私どもにとっては非常に重要な要素である。これからも引き続き、現場改善に役立つ提案やアドバイスなど、知見を活かしたサポートをお願いしたい」(西川取締役)
同社は今後も、市場の変化を見極めながら生産工程のさらなる効率化・省力化を進め、印刷事業の成長を目指していく考えだ。

 

 

最後に榊原社長は、経営展望について次のように語った。
「今回の新型コロナウィルスのパニックをきっかけとして、働き方や暮らし方が大きく変わろうとしている。日々の仕事においてはテレワークが推進され、リモートでのやり取りはさらに広まっていくだろう。私は、こんな状況だからこそ、紙に印刷されたもの、紙のテキストがますます重要になってくると考えている。私たちに変わる勇気さえあれば、印刷の未来を悲観する必要はない。当社では、持てる技術や設備を最大限に活かしながら、印刷の仕事にこれまで以上に邁進していく」(榊原社長)

 

ネッツ社屋外観

ネッツ社屋外観

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