2020年08月12日

本社に設置されたJet Press 750S。品質と用紙サイズが導入の決め手になった

「Jet Press 750S」。品質と用紙サイズが導入の決め手になった

栃木県の井上総合印刷(宇都宮市岩曽町1355番地、井上加容子社長)は2020年2月、クライアントへの提案力強化のための新戦力として、富士フイルムのB2サイズ・インクジェットデジタルプレス「Jet Press 750S」を導入し、小ロットのポスターや写真集、スポーツチームのグッズなど、幅広い用途に活用している。導入の背景や実際の活用方法、メリットなどについて、井上社長に聞いた。

 

井上総合印刷は、1966年、井上光夫現代表取締役会長が創業し、謄写印刷から事業を開始。その後オフセット印刷へと移行し、生産体制を拡充しながら、地域に根差した総合印刷会社として成長を続けてきた。

 

現在は、宇都宮市内に本社のほか平出工場・白沢工場の2工場を持ち、東京にも営業所を設ける。工場には、A横全判とB縦半裁のオフセット輪転機、H-UV枚葉機3台を備え、製本・加工設備も充実。デジタル印刷機は本社に集約し、Jet Press 750Sの他、「Color 1000 Press」「Versant 80 Press」などを仕事内容に応じて使い分けている。
クライアントは、官公庁および各種団体、一般企業のほか、印刷会社やデザイン会社、個人客と多岐にわたり、地元・栃木のプロスポーツチームの仕事も多く手がける。

 

「ミウラ折り」の印刷を一手に受ける

 

さらに同社は、㈱miura-ori labが特許を持つ「ミウラ折り」のオフィシャルパートナーとなっており、全国から発注されたミウラ折りの印刷を一手に引き受けている(折り加工はmiura-ori labが行う)。
地域貢献などのCSR活動にも力を入れており、その一環として、2017年には、宇都宮市内にレンタルスペース&カフェ「Cafe ink Blue」をオープンさせた。店内は、セミナーや会議、ワークショップ、音楽ライブなどさまざまな用途に利用できるスペースになっており、カラーPOD機による出力サービスも提供。印刷会社プロデュースならではの多目的空間として、地元の企業や団体から好評を得ている。

 

井上加容子社長

井上加容子社長

こうした事業を通じて「地域文化への貢献」を目指す同社がJet Press 750Sの導入を決めた背景には、高い品質が求められる小ロット印刷物のニーズが確実に高まっていること、そして、クライアントへの提案の幅をさらに広げたいという思いがあった。

 

自費出版が文字で綴る自分史から写真などの作品集へ

 

「たとえば、バスケットボールやサッカーなどのスポーツチームに対し、ファンの方々に喜んでいただけるような付加価値の高い印刷物を提案したい。そのためには、小ロット・バリアブルに対応でき、写真をオフセット並みにきれいに再現できるデジタル印刷機が必要だった。また、当社で長年手がけている自費出版のニーズが変化してきていることも導入理由の一つ。以前は、文章で綴る自分史が多かったが、最近は、写真や作品で自分の人生を振り返るという、写真集・作品集のような形が増えており、画質の高さが求められるようになってきた」(井上社長)
さらに、もう一つの大きな導入理由が、ミウラ折りの小ロット対応だ。そこでは品質もさることながら、用紙サイズも重要なポイントだった。
「miura-ori labさんから、提案用のサンプルを本紙でつくれないかという要望をいただいていた。以前はオフセットで印刷していたが、小ロットだからコストが高くついてしまう。しかしデジタル印刷機は、A3のトナー機しか持っていなかった。当社としては、ミウラ折りならではのダイナミックさを活かせるA2サイズまで出せるようにしたかった。その点、Jet Press 750Sは、品質もサイズも、私どもの求める条件にぴったり合っていた」(井上社長)
このようにさまざまな活用を視野に入れ、井上社長はJet Press 750Sの導入を決断。しかし折り悪く、国内で新型コロナウィルス感染が拡大し始めたタイミングだったため、社内では慎重な意見もあったという。
「設置したのが2月20日。まさに状況が深刻になりつつある時期だったので、役員からは『いま導入して、どれだけ仕事を回せるのか』という疑問の声も上がった。しかし実際には、Jet Pressがあったからこそお客さまに提案できた企画、受注できた仕事がたくさんあり、いまは皆『入れて良かった』と言っている。もし導入を見送っていたら、提案できるものがかなり限られてしまい、もっと苦しいことになっていたのではないだろうか」(井上社長)

 

 プロスポーツチームの案件を獲得 宇都宮ブレックス・栃木SCから受注

宇都宮ブレックスの写真集

宇都宮ブレックスの写真集

 

導入から約4カ月。さまざまな分野でコロナの影響が広がる中、同社は Jet Press 750Sを活用して着実に新たな受注を獲得していった。その好例が、プロスポーツチームの仕事だ。無観客での試合開催、あるいは試合そのものが中止になるケースが相次ぐ状況で、どのような提案を行ったのだろうか。
「たとえばバスケットボールのリーグでは、今シーズンの試合がすべて中止になってしまいました。当社は地元の宇都宮ブレックスさんと長年お付き合いさせていただいているが、シーズンチケットを買っていただいたお客さまに何かできないかということで、Jet Press 750Sの高い写真再現性を活かした、選手の写真集を提案した。1ページずつ、各選手の写真とサイン、メッセージが入ったものである。自由にページを取り外して順番を入れ替えることができ、自分の好きな選手のページを前に持ってきたり、1枚だけポスターのように飾ったりすることもできる。表紙にはファンの方の名前や会社名をバリアブルで入れ、『自分だけの写真集』として楽しんでいただこうと考えた」(井上社長)

栃木SCの試合で観客席に掲出された『黄援段』

栃木SCの試合で観客席に掲出された「黄援段」

 

一方、サッカーJリーグでは、6月下旬から徐々に公式戦が再開されたが、当面は無観客で試合を行うことに。これを受けて同社は、20年以上スポンサーを務める栃木SCに、独自の企画を提案した。
「試合の雰囲気を何とか盛り上げられないかと、サポーターの写真を印刷して観客に見立てた段ボールパネルを作成し、客席に設置するという提案を持ちかけ、採用していただいた。人型に抜くのではなく、敢えて四角いパネルのままで余白にスポンサー名を入れられるようにし、収益性にも配慮した」(井上社長)
サポーターの写真は栃木SCのWebサイトで募集。クラブカラーである黄色の服を着た写真を送ってもらうことで、一体感を演出した。パネルは、黄色・応援・段ボールから1字ずつとって「黄援段」(おうえんだん)と命名された。
「実はこの企画は、栃木SCさんを担当する営業にとって、初めて“提案らしい提案”を行った仕事だった。手書きで必死に企画書をつくり(笑)、Jet Pressで出力した実物大のサンプルもお見せして。その甲斐あって、『これはいいね』と評価され、詳細な仕様などの打ち合わせを重ねてこの形に辿りついた。本人の自信にもつながり、成長のいいきっかけになったと思う」(井上社長)
この「黄援段」は、7月5日の試合で実際に掲出された。Jet Press 750Sの再現品質やB2サイズ対応といった特徴に加え、屋外使用のツールであることから「インクの耐候性の高さ」も大きなメリットになったという。

 

「オフセット並みの高画質でバリアブル」が大きな武器に

 

写真集やポスターなどの色を重視する印刷物では、Jet Press 750Sの高画質が最大限に活かされている

写真集やポスターなどの色を重視する印刷物では、Jet Press 750Sの高画質が最大限に活かされている

耐候性を活かした印刷物としては、ポスターも挙げられる。地元の美術館などでは、極小ロットのポスターの需要が少なからずあり、同社はその多くをJet Press 750Sで印刷している。

 

「最近は栃木県も人口が減少傾向にあるが、どの街にも必ず1軒は美術館がある。ただ、どの美術館も、一回につくるポスターは4~5枚とごく少量。しかも大判インクジェットを使うほどの予算はとれない、というケースがほとんどなので、Jet Pressを活かせる領域の一つになっている」(井上社長)
また、同社が今後伸びる分野として注目しているのが、コスプレの市場だ。宇都宮はコスプレが盛んな街でもあり、撮影会などのイベントも多い。井上社長は「とくに写真集などは、Jet Press 750Sの広色域・高画質を存分に活かせる」と期待を込める。
「コスプレファンの方々の多くは、衣装を着て楽しむだけでなく、それを撮影して写真に残すことを一番の目的としているそうである。その写真をまとめて、いつか写真集をつくりたいと思っている方も多い。しかも、RGBとCMYKの違いなどもよくご存じで、『CMYKで印刷すると色が濁ってしまうからRGBのまま出してもらえるところに頼みたい』と、仕上がりにも強いこだわりを持っている。そんなニーズにも、Jet Press 750Sはしっかりと応えられると思う」(井上社長)
さらに、同社はバリアブルを活用した企画提案にも積極的に取り組んでおり、実際にJet Press 750Sで手がけたバリアブルの仕事の中には、トータルで50万部という大ボリュームのものもあるという。今後は、前述のミウラ折りでも、本紙によるサンプル制作や小ロット対応に加えて、ナンバリングや画像差し替えなど、新たな付加価値を提案していく考えだ。
「いままで、ミウラ折りでバリアブルという発想はなかったが、Jet Press 750Sの導入によってそれが可能になった。オフセット印刷並みの高画質でバリアブルができるというのは、大きな強みになる」(井上社長)

 

使い方を限定せず、さまざまな可能性を試す

 

導入後の立ち上がりは早かった

導入後の立ち上がりは早かった

一方、現場ではJet Press 750Sをどのように評価しているのだろうか。
現在の担当オペレーターは1人で、オフセット印刷機のオペレーションを約10年経験してきた。Jet Press 750Sの操作については、それほど戸惑うこともなく、すぐに慣れたという。
「まだ30代でデジタルに抵抗のない世代だということもあると思うが、Jet Press 750Sは搬送系などの機構がオフセット機と共通なので、馴染みやすかったと思う。導入後の立ち上がりは早かった」(井上社長)
また、その他の現場でのメリットとして、井上社長は、「両面バリアブル出力時の信頼性の高さ」と「オフセット印刷機とのカラーマッチングの取りやすさ」を挙げる。前者は、用紙の先刷り面に付加したバーコードを、後刷り面の印刷時にフィーダー部のバーコードリーダーで読み取り、先刷り面に合致したデータを瞬時に読み出して出力するという機構によるもので、出力後の検品作業の負荷軽減に貢献している。カラーマッチングについては、Jet Press 750Sの色域の広さと、色再現の安定性が大きく寄与しており、印刷品質の高さに定評のある同社にとって、極めて重要なメリットだ。
Jet Press 750Sの今後の活用について、井上社長は、「こう使うというルールは決めず、できるだけ幅広い用途に活用し、あらゆる可能性を試していきたい」と語る。単純に「小ロット=デジタル印刷」という考え方で使い分けるのではなく、クライアントの課題に対して何ができるかを考え、そこでJet Press 750Sの特徴を活かせる領域があれば積極的に活用していくという姿勢だ。
「Jet Press 750Sによって、いままでできなかったことができるようになり、提案の幅もぐっと広がった。まずは既存のお客さまにそのことを知っていただこうと、本格的に提案活動を始めているところだ。たとえば、色域の広さを実感していただけるよう、Japan Colorに準拠したCMYK4色の出力と、インクの発色を最大限に活かしたRGB出力とを比較できるサンプルをつくってお見せすると、非常にいい反応をいただける。今後さらに提案力を磨きながら、イベントの集客ツールなど、新しいものをお客さまと一緒につくっていきたい」(井上社長)

 

 

地域に根差した総合印刷会社

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