2020年08月11日

経営動向実態調査集計結果報告

 

 

全日本印刷工業組合連合会(滝澤光正会長)が毎年実施している「印刷業経営動向実態調査」の令和元年度調査結果がまとまった。同調査は、中小印刷業の経営動向を的確に把握するため売上高、加工高、原価状況、損益状況、人員構成および労働時間など所要事項と、これらに密接な関連を持つ事項の調査とを継続的に実施。その結果から経営者にとって欠かすことのできない重要な経営数値を把握し、経営戦略の決定に資することを目的に令和元年11月から令和2年2月にかけて全組合員を対象にインターネット上で行い、4173社のうち290社(有効回答232社)から回答を得た。
 

収益性を見ると、1人当たり売上高は4年ぶりの増加、経常利益率は微減だがほぼ昨年と同水準。加工高比率は低下したが、売上高の増加によって収益性は保たれた。製品別の売上高構成比を見ると、この4年は商業印刷・事務用印刷・出版印刷・包装印刷のシェアには大きな変化がない一方、受注先は一般民間企業が増えている。また、印刷機種別の売上高構成比はデジタル印刷機がオフセット輪転機を超えていて、印刷方式が徐々に変化していることがわかった。
 

安全性を見ると、自己資本率・流動比率は長期的な改善傾向が続いて財務安全性は十分な水準にあり、短期債務への支払能力も備えている。反面、安全余裕度は、十分といえる水準になく、財務構造には問題ないものの収支構造が課題となっている。
 

生産性を見ると、1人当たり売上高は4年ぶり、1人当たり加工高は5年ぶりに下げ止まった。1人当たり機械装置額は、21世紀の最少を2年連続で更新した反面、1人当たり人件費は2年連続で増加した。これらの結果から投資が設備から人員に向かっている様子がうかがわれる。結果、生産性は改善したものの収入に占める人件費と固定費の相対的な重さが増したため、収支の改善には至らなかった。
 

人的資源を見ると、長期的に人員配置の重点が管理部門から生産部門にシフトするような傾向が続いたが、平成28年以降はこの傾向が見られなくなって、近年は部門ごとの人員配置が固定化する傾向にある。ただし、内訳をみていくと生産部門内において、プレスが減ってプリプレスとポストプレスが増えるような人的資源配置の組み換えが進んでいることを確認できる。
 

調査結果からは、生産性を収益性に結びつけることが課題になっていること、安全性には大きな問題が見られないこと、収益性と生産性向上のためには費用増加を吸収するだけの成長性獲得が何より業務改善への大きな鍵を握ることが浮かび上がった。
 

■売上高
1人当たり売上高は4年ぶりの増加で1830万9000円。主要製品別の構成比をみると、シェアは商業印刷(43・9%)・事務用印刷(21・2%)・出版印刷(13・1%)・包装印刷(8・5%)の順に多く、この上位4製品で印刷売上高の86・7%を占める。製品別のシェアは昨年とほとんど変化なく実質的に横ばい。出版印刷は昨年より微減だが長期的に見れば史上最少を更新。その他特殊印刷は史上3番めの多さで長期的には増加傾向。出版印刷が減ってその他特殊印刷が増えるようなシェアの変化となっている。
 
■生産方式と受注先
印刷機種別売上高構成比は、オフセット枚葉機(63・5%)、デジタル印刷機(11・3%)、オフセット輪転機(11・1%)。長期的にはオフセット輪転機の減少、オフセット枚葉機とデジタル印刷機の増加という趨勢をたどってきた。オフセット輪転機は10年で半分以下に減少、デジタル印刷機は2%から11%と5倍以上に増えた。デジタル印刷機も足踏み状態だがオフセット輪転機を上回るのは平成29年に次ぐ2度目。
受注先の構成比は、その他(62・1%)、印刷業(24・8%)、国・自治体(官公需13・2%)の順。平成29年以降は同業比率が低下して一般民間向け比率が上昇する構図になっている。
 

■収益性
営業利益率2・1%、経常利益率2・8%ともに昨年から横ばい。加工高比率は史上最低の47・0%。売上高対材料費比率は4年ぶりに増加して21・4%。外注加工費率はこの10年で最高の22・5%。昨年史上最少水準だった材料費は4年ぶりに増加。外注加工費も緩やかな増加傾向のため、利益の源泉となる加工高比率は史上最低を記録。人件費と販売費・一般管理費も高止まりのため、1人当たり売上高は増えたが営業利益率・経常利益率は横ばいだった。
 

■安全性
返済不要な資本の割合を意味する自己資本比率は史上最高の昨年に続く46%台。1年以内に返済期限の到来する短期的な支払い能力を表す流動比率は史上最高を更新。資本蓄積・短期支払い能力とも十分な水準にあり、全体として財務構造の安全性は高い。一方で、安全余裕度は十分といえる水準になく、収益構造に大きな課題が見られる。
貸借対象表には、平成28年以降の負債の減少、減少傾向と自己資本の増加傾向が認められる。機械装置額の総資産に占める割合は7・6%(平成30年8・2%、29年9・2%、28年9・5%、27年10・0%、26年10・4%)と5年連続で低下した。印刷会社の資産構成に占める設備の割合が継続的に低下している様子がうかがわれる。
 

■生産性
1人当たりの加工高860万4000円、1人当たり人件費は501万8000円。1人当たりの機械装置額は164万3000円。1人当たり売上高は4年ぶりの増加、1人当たりの加工高は5年ぶりの増加、生産性は4~5年ぶりに下げ止まった。1人当たり機械装置額は21世紀の最少額をさらに更新する一方、1人当たり人件費は2年連続で増加した。人件費負担は増しているのに生産性は思うように上がらない状況となっている。
保守的な設備投資によって労働装備率が低下、過度の装置依存を弱める方向に進んでいると見ることもできるが、生産性を高める設備投資ができていないとの見方もできる。
人件費の高騰しがちな社会情勢も背景にあって、いつになく人的投資と設備投資のバランスを考えた生産性改善が課題になっている。
 

■人的資源
労働分配率は58・9%。総人員の雇用契約別構成は、常勤役員5・3%、正規従業員81・7%、パート・嘱託などの非正規従業員13・0%で昨年と比べてあまり変化がない。部門別の人員配置は、役員4・6%、管理部門16・6%、生産部門58・2%、営業部門20・5%。長期的に管理部門の縮小、ポストプレスの強化といった傾向があったが、平成29年以降はその動きが止まっている。
収入に占める人件費の割合を示す労働分配率は、史上最高水準に高止まりして、収入に占める人件費の相対的な負担が重くなっている。

 

 

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