HPは、HP Indigoデジタル印刷機とHP PageWideデジタル輪転機の新製品を発表した。
さらなる高速化と生産性向上を可能とする技術革新を基に開発されたこれらの新製品群をもって、印刷市場のアナログ印刷からデジタル印刷への移行を促進し、新たなビジネス機会創出のサポートをする。
㈱日本HP(本社・東京都江東区、岡隆史社長)は4月9日、オンライン記者説明会を開催してその詳細について説明した。
会の冒頭、あいさつにたった同社デジタルプレス事業本部の岡戸伸樹常務執行役員は「消費者は、より早く、そして自分の好みに合ったものを求める傾向にある。またブランドオーナーは、自社の製品をいかにして魅力的に見せるか、また自社製品を模造品からいかにして保護するかという点に関心を持っている。このような動向に応えるために必要となるのがデジタル印刷技術となる。バリアブル印刷によるイノベーション、膨大な種類にのぼるジョブを効率良くさばくオートメーションの2つを果たすことができるデジタル印刷化を推進することで、印刷会社のみなさんには高収益を達成するブルーオーシャンへと進んでもらいたい」と、印刷市場における傾向分析とその中でデジタル印刷および同社製品が果たすことができる役割や魅力について述べた。
今回発表された新製品は、「HP Indigoデジタル印刷機」シリーズでは、「HP Indigo100K」、「HP Indigo15K/15K HD」、「HP Indigo35K」、「HP Indigo90K」、「HP Indigo V12」のほか、ラベル・パッケージ向けの「HP Indigo25K」、「HP Indigo8K」、「HP Indigo6K」、商業印刷向けのA3判機「HP Indigo7K/7eco」。
さらにインクジェットデジタル輪転印刷機「HP PageWide T250HD」も加えた、計10機種が発表された。
「HP Indigoデジタル印刷機」シリーズの新機能
【Spot Master】
新しいカラーオートメーション技術で、特色の色合わせ作業や印刷中の色の安定性を自動化する機能となる。
具体的には、まず色見本や印刷データなどから色を測定してLab値を取得し、カラーエンジンにSpot Master用の色として特色を登録する。
印刷オペレーターがそのジョブを印刷してSpot Master機能をONにすると、面付けの印刷位置に合わせて特色のカラーパッチが自動で印刷される。
これを印刷機内の分光光度計で自動計測して色差をDFEへ自動で戻すというプロセスを3回繰り返すことで特色の色合わせが自動で行われる。
この機能によって、従来は約10分かかっていた特色の色合わせ作業が3分程度に、複数の特色があった場合でも5分以下で完了する。
さらに、Spot Masterで登録した特色は印刷中に色がズレてきた場合は自動補正もされる上、計測された色はクラウド上のPrintOSxへとアップされ、リアルタイムに印刷している印刷物の色の精度がスコアカードとして表示される。
【PrintOSx】
クラウドアプリケーションを、AIを活用したサービスおよびサポートインフラと統合し、ユーザーが印刷機を最大限に活用できるようにするもの。
注文から出荷までのエンドツーエンドの生産自動化ソリューション「HP Site Flow」、HP Indigoデジタル印刷機との接続を介して自動でG7カラー認証を可能にする「Color Beat」などの新機能を備え、印刷効率の最適化、カラーの品質管理、生産のオートメーション化など、これまでは印刷機周りの管理だけだった機能が大きく広がった。
【Predictive Press Care】
人工知能とクラウドを使用し、印刷機に故障が発生する前に予防する技術。
印刷機の各所に搭載されているセンサーで取得したログはPrintOSxへ自動的に送られ、それを受けたPrintOSxではAIのディープラーニングによる分析を行い、印刷機が壊れそうな兆候を自動で発見し、それを印刷機に知らせる機能となる。
実際の印刷機の画面には、故障の兆候を知らせるアラートが出るとともに、印刷オペレーターに修正手順を知らせてくれる。
主な新機種の特徴
【HP Indigo100K】
オフセット印刷のようなスピードと機構を持ちつつもHP Indigoデジタル印刷機の操作性を持った、オフセット印刷会社がより多くの作業をデジタル印刷へ移行しやすくするB2判4色機で、毎時6000枚の高速生産性とノンストップで大量のジョブを生産できる配慮が施されている。
オプションで2つの給紙ユニットを追加でき、計5ヶ所の給紙ユニットを装備することができる。
これにより印刷中の用紙積み替えが可能になるほか、迅速なジョブ替え、複数種の用紙での連続生産も可能となり、真の意味での連続デジタル印刷を実現できる。
さらに、自動パレット交換機能、自動印刷用紙排出機能により、連続印刷中は印刷用紙の排出作業も不要となる。
用紙搬送機構についても改良を施し、枚葉オフセット印刷機で採用されているようなグリッパー搬送による用紙搬送システムを新開発。
これにより高い精度と正確なポジショニングでフィーダーから圧胴に用紙を受け渡すことができるようになった。
さらに、分光光度計を搭載して印刷を止めることなくカラーキャリブレーションを行える自動カラー計測システムを搭載し、ノンストップ稼働をサポートする。
【HP Indigo15K】
商業印刷向けのB2判モデルながら紙厚0.6㍉の厚紙に対応するので、インパクトのあるDMやパッケージも製作できる。
1600dpiの高解像度によってスムースな人肌の再現が可能になるほか、細線や極小の2バイトフォントの再現性も向上する。
さらに、データと印刷物のスキャニング結果を比較して不具合を検出、検出シートを自動で排出、不具合が検出されたシートを自動で再印刷する「自動警告エージェント2.0」も搭載している。
【HP Indigo35K】
高品質な小ロットの紙器ビジネス向けのB2判印刷機。
1600dpiレーザーヘッドによるすぐれたディテール表現や平滑性を実現。
インキステーションは7つで、インキの種類はC、M、Y、K、オレンジ、バイオレット、グリーン、標準ホワイト、プレミアムホワイト、蛍光イエロー、蛍光マゼンタが用意されている。
また、Spot Master機能を搭載しており、特色再現の迅速化と安定化も図られている。
【HP Indigo90K】
ロール給紙タイプでシーター付きとなる、B1判に対応する紙器用の印刷機。
1600dpiの解像度で、紙厚は0.04~0.55㍉に対応。
印刷ユニットの後にはUVもしくは水性の全面/スポットニスを施すことができるニスコーターユニット(オプションでラミネーターも用意)から、シーターでB1判に断裁してスタッカーへと流れていく構成。
インキステーションは7つで、インキはC、M、Y、K、オレンジ、バイオレット、グリーン、標準ホワイト、プレミアムホワイト、蛍光イエロー、蛍光マゼンタが用意される。
商業印刷にも使用でき、B1判4色カラーポスターでは毎時1700枚(高生産モードで2300枚)、モノクロでは6900枚の生産性を持つ。
さらに、壁紙などのアプリケーションにも活用することができ、そのような場合ではロールtoロールにすることもできる。
【HP Indigo V12】
2022年に発売開始を予定している、次世代のHP IndigoLEPxアーキテクチャを搭載したラベル生産向けのナローウェブ印刷機。
その特筆点は印刷スピードで、従来のHP Indigoの4倍以上となる毎分120㍍を実現している。
この高速化を実現したのは構造を変えたことにある。
HP Indigoは、まず液体トナーで画像を共通版胴にイメージングするが、版胴1回転で1色分ずつイメージングをしていくので、4色印刷だと4回転を要する。
ここでイメージングされた画像がブランケットを経由して紙へと転写していく。
それを高速化するための次世代LEPxアーキテクチャでは、印刷エンジンを小型化して6つ(1つの版胴あたり2色分の印刷ユニットを擁している)並べ、それぞれの版胴にイメージングした画像を長尺の共通ブランケットベルトへ転写する方式を採った。
これにより、6色分のイメージング画像が共通ブランケットベルト1回転分で完成するので、6色以下の印刷の場合は毎分120㍍、7~12色印刷の場合は共通ブランケットベルトが2回転するので毎分60㍍という高速印刷ができる。
白インキや特色インキも含む12色インキによる色再現の広さと1600dpiの高解像度でオフセット印刷に迫る品質も実現。
対応原反幅は240~340㍉で、最大リピート長は5.33㍍となっている。
【HP PageWide T250HD】
22インチ(約56㌢㍍)幅の高速輪転インクジェットシステムの最新機。
新インク「HP Brilliant Ink」を搭載しており、とくに赤と青方向により色域が広がっているほか、グロスレベルやインク定着性、にじみの改善が施されている。
印刷メディアの多様性も広がっており、インクジェット専用紙ではこのインクのみで印刷でき、オフセット印刷用コート紙やオフセット印刷用上質紙に対しても下地処理剤の「オプティマイザー」を印字部のみに塗布することで対応できる。
また、水性/UVニスのハイブリッドで切り替えが簡単にできてインライン接続ができるニスコーターも用意されている。