2020年04月03日

RMGT製の両面LED-UV印刷機を核に自動化工場を実現

 

B縦半裁のオフ輪を数多く擁し、チラシなどの商業印刷物の製作を主体として展開してきた㈱ニシカワ印刷(本社・埼玉県狭山市笹井671の1、西川誠一社長)では、市場の変化を敏感に捉えて書籍・ページ物用途のA列のオフ輪や極小ロット向けのPOD機など、その時々の動向に応じて適切な設備投資をしている。

3台のRMGT920PF-8+LED-UVが並んで稼働している

3台のRMGT920PF-8+LED-UVが並んで稼働している

そのような同社ではB縦半裁のオフ輪のメーンコンテンツであるチラシの市場が縮小傾向にあることを踏まえ、新たな事業分野への拡大を図るべく5年前に枚葉オフセット印刷機を新規導入した。これは大手印刷通販会社と協業して、そこで受注したものの生産を担当することを見据えた展開だ。印刷通販ビジネスでは発注者側が自身でいろいろなサイトを見るだけで価格を比較できることから、印刷価格が比較的低くなりがちになる。その生産を担う側は、定められた売価に合ったコストで生産するため利益率が薄くなることから、できる限り多くのジョブ量をこなす実生産性の高さ、高効率化を果たすことが肝要となる。そこで同社ではリョービMHIグラフィックテクノロジー㈱製のA全判両面兼用8色LED-UV印刷機「RMGT920PF-8+LED-UV」3台を続けて導入し、これを核とした工場全体の自動化を進めることで、1日当たり135ジョブ/42万枚超という高い実生産性と高効率化を果たしている。

 

3台のA全判8色機で1日当たり
135ジョブ/42万枚超を処理

 

同社が最初に枚葉オフセット印刷機を導入したのは2015年2月。協業する印刷通販会社に勧められる形で「RMGT920PF-8+LED-UV」を1台導入した。オフ輪印刷では両面をワンパスで印刷し、かつ印刷物はインキが乾いた状態で排出される。ワンパスで両面カラー印刷ができてインキも即乾する「RMGT920PF-8+LED-UV」は、オフ輪印刷専業だった同社にとってとりかかりやすく、また印刷通販ビジネスにおいて必須となる短納期対応という点からも適していた。同社には枚葉オフセット印刷機のオペレーション経験者はいなかったものの、リョービMHIグラフィックテクノロジーで研修を受けてノウハウを身に着けることで、とてもスムーズに立ち上がった。

西川社長

西川社長

同社の印刷工場は埼玉県内に2ヶ所(狭山市にある本社笹井事業所と日高市にある日高事業所)あり、1台目の「RMGT920PF-8+LED-UV」は最新設備が揃った本社笹井事業所に設置した。その稼働開始から半年も経たずして、順調な滑り出しとなったことからさらなる生産能力拡大を図るべく、2台目の枚葉オフセット印刷機を同年6月に導入することとなった。その時の設備増強についての着眼点について同社の西川社長は「最初の枚葉オフセット印刷機に関しては、オフ輪専業だった当社にはあまり知見がなかったので、協業パートナーとなる印刷通販会社のアドバイスを重視して機種選択をした。順調にビジネスが拡大していき印刷機を増設するにあたっては、それまでの稼働実績や運用傾向、ビジネス形態を踏まえ、印刷機1台当たり・スタッフ1人当たりの実生産性を高めることが重要であり、それを実現できる環境を作らなければならないと判断した」と振り返る。ちょうどその頃にもう1つの印刷工場となる日高事業所で、長らく稼働していた大型のオフ輪を廃棄して広いスペースができることになっていた。そこで、そこに枚葉オフセット印刷機部門を移設・集約するとともに、プリプレスからポストプレス、配送までの工程全体を自動化・高効率化する工場全体のリニューアルを図った。

 

つねに機械の最高速度で印刷
期待に応える安定性と耐久性

 

中村取締役

中村取締役

最初に導入した「RMGT920PF-8+LED-UV」について同社の中村博信取締役は、「実生産性を高くするために24時間体制でつねに最高速度で印刷しているが、その期待に応える安定した稼働をしてくれている。また、しっかりとしたオペレーター研修をしてもらったことで立ち上がりも早く、ユーザーフレンドリーな機械で使い勝手も良く、さらにアフターフォローも良かった」と評する。その実績を高く評価したことに加え、自動化や効率化を進める上で印刷機の版サイズを統一すると、もしどちらか1台でスケジュールが予定通りに進まなくても空いている方の印刷機にジョブを柔軟に振り分けることができるという点も加味し、2台目にも1台目と同じ「RMGT920PF-8+LED-UV」を選んだ。

 

最初の印刷機は、つねに最高速度で印刷し続けて5年が経過しているが耐久性や稼働状況に問題はなく、スペック通りの実生産性を見せている。もちろん、最高速度で稼働し続けられることも重要ではあるが、同社の枚葉オフセット印刷機で行うジョブの平均ロットは約3000通しという小ささなので、ジョブ替えや準備時間を短縮しなければ実生産性は高まらない。そこで、同時自動刷版交換装置やブランケット洗浄とプリセットインキングの並行処理機能などを搭載している。さらに2018年10月に増設した3台目の印刷機に関しては、用紙を抜き取らずにインラインのカメラによって自動欠陥検知、自動濃度制御、自動見当調整が行える印刷品質管理システム「PQS-D(I+C+R)」を搭載している。「印刷通販のジョブでは自社基準濃度に合わせて印刷をするので、この“PQS-D”の自動濃度制御機能は大きな力を発揮する。全紙のカラーパッチの濃度をインラインのカメラが読み取り、それに応じて印刷機のインキキーが自動制御されて色合わせ作業が行われる。同じ用紙のジョブを連続させて、かつ小ロットのジョブをなるべくこの印刷機に割り振るようにすることで、全体の生産性がさらにいっそう高められた」と中村取締役は語る。

 

生産性を高めるための工場環境
人の動きやすさを追求した自動化

 

ロール紙をカットするシーター「SHS-V」

「SHS-V」でロール紙を印刷用のサイズにカットする

同社では「RMGT920PF-8+LED-UV」1台を1人のオペレーターで運用しており、それに加えて3台分の給紙を1人の専任者が担う体制を採っている。このような少人数体制が実現できているのは、さまざまな自動化を図った工場環境を構築しているからだ。3台分の枚葉オフセット印刷機の給紙についてはハイニックス㈱製のシーター「SHS-V」を使って専任者がロール紙からカットし、そのパレットをハンドリフトで使用する各印刷機へ運搬する。これにより、給紙の専任者が紙積みといった重労働をすることもなく、また印刷オペレーターが次のジョブの用紙を取りには行く必要もなく、印刷機が自動ジョブ替え作業をしている間に用紙をフィーダーにセットするだけで済む。また、印刷後の印刷物を次の断裁工程に運搬する際にはハンドリフト型のAGV(自動搬送ロボット)を活用している。印刷機のデリバリー部から印刷物のパイルを出す時は手動ながら、そこから次工程となる断裁機までの約40~60㍍を自動搬送する。工場内のAGVの走行ルートには磁気テープが敷かれており、オペレーターが運搬先をボタンで指定するだけでそれが運ばれていく。AGVにはセンサーが付いているので、運搬中に人やフォークリフトなどを検知すると停止する。

 

刷版については、少なくても1日当たり1000版超にものぼる量を使用するため、1200枚積みのパレットのままプレートをCTPへ直接装填できるアグフア社製の「エキスパート・ローダー」や、そのCTPから排出されたプレートをインラインで自動版曲げして使用する印刷機ごとのスタッカーへ自動振り分けする「プレート・トランスポーテーション・システム」を装備している。

CTPから出力された刷版は使用する各印刷機のスタッカーへと自動で振り分けられる

CTPから出力された刷版は使用する各印刷機のスタッカーへと自動で振り分けられる

そして各印刷機のオペレーターは、印刷機のすぐ横に位置しているそのスタッカーを自身で運んでくる。このような工場デザインをした基本思想について西川社長は、「そこで働く人にとって動きやすい、働きやすいことを最優先事項として、現場のスタッフにも一緒に考えてもらいながら自動化を進めた。たとえば、AGVが印刷機のデリバリー部まで入って運搬させることも技術的にはできるが、デリバリー部にAGVが入っている間は危ないのでオペレーターの動きが止まってしまう。ロボットや機械のペースに合わせて人が動くのではなく、人が自身の動きに合わせて機械を使いこなすという環境を作らなければ、真の意味での働きやすさ・効率化は成功しないと思う。また、ロール紙からカットした用紙を印刷機のフィーダー部へ運んだり、出力された刷版を各印刷機に運ぶことについてもAGVを活用しようと思ったが、印刷機周りのスペースが狭いことやそれによって得られる実生産性向上への寄与、費用対効果などを総合的に勘案し、当社のこの工場ではその部分については人が運ぶ方が良いと判断した」と話し、工場環境や現場の事情を把握した上で自動化するべき部分とそうではない部分を見極めたことを明かした。

 

人の動きと自動化機能を高次元で融合
様々な顧客ニーズに応える生産体制に

 

3台目として導入したRMGT920PF-8+LED-UV

3台目として導入したRMGT920PF-8+LED-UV

同社では枚葉オフセット印刷機の機付人員について、自動化をさらに進めることによって現在よりも少人数化を図ることは考えていないという。24時間体制でつねに印刷機の最高速となる毎時1万3000回転で印刷するには日頃から印刷機をメンテナンスする人が必要となる上、もしトラブルが発生した時に対応できる人も必要となるからだ。西川社長は今後の展開について、「業務内容をなるべく標準化・定型化して、特定の人や特別な能力に依存しない仕組みに基づいて作ったのがこの工場となる。ポストプレス工程や出荷工程はまだまだ人海戦術に頼っているので、この部分をどのような形で自動化させていくかが今後の課題となる」と見通している。

 

さらに「枚葉オフセット印刷は製作できるアプリケーションが豊富なので、顧客に対してその豊富さを活かした提案ができるようになった。印刷物というのは数ある広告手段の中の1つにすぎないので、電子メディアも含めたあらゆる顧客ニーズに応えられる制作・生産環境を整備しなければならないと思っている。その点からも枚葉オフセット印刷という新しい分野を確立できたことは当社にとって大きな価値となる。その中で、どんなに自動化を進めていっても人材は大事なので、人が行うべき役割と機械との協業を高い次元で融合させていきたい」とさらなる進化の方向性と新時代の印刷工場像を示した。

 

断裁機のそばにAGVが到着

断裁機のそばにAGVが到着

ハンドリフト型のAGVで印刷物を取り出す

ハンドリフト型のAGVで印刷物を取り出す

磁気テープに沿ってAGVが自動搬送

磁気テープに沿ってAGVが自動搬送

 

 

月刊 印刷界 2020年4月号掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

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