2020年03月09日

アンコンシャス・バイアス(Unconscious Bias以下、UB・無意識の偏見)という言葉をご存じであろうか? 自分自身が気付かずにもつ偏った見方・考え方のことである。実例として、「子育て中の女性にメインの仕事は無理」「高卒より大卒の方が仕事ができる」、また「女性だから」「血液型がB型だから」などステレオタイプな思い込みもあてはまる。これら無意識の偏見は、職場においても悪影響を及ぼし、ひいてはダイバーシティ推進を妨げる要因として、現在ビジネスシーンで注目されている――。
 

日本印刷産業連合会・企業行動委員会女性活躍推進部会(澤田千津子部会長)においても、UBに着目し2月3日、東京・新富の日本印刷会館で「第4回女性活躍推進セミナー『皆が働きやすい職場の実現に向けて~アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)をなくす方法!!』」を開催した。会員各社から90人(男50・女40)が集まり、関心の高さを証明した。
 

プログラムは、日印産連・櫻井醜(トッパン・フォームズ㈱相談役)副会長による講演「ダイバーシティ・マネジメント―“ガラスの天井”を打ち破る―」と、講師にアパショナータ,Inc.のパク・スックチャ代表を迎え「ダイバーシティの推進を阻むアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは」の2本立て。
パク氏は韓国籍の日本生まれ。米国の大学で学士・経営学修士を取得。日本で米国系運輸企業に入社。2000年退社、日本でコンサルタントとして独立。専門はダイバーシティ、UB、ワークライフバランス、テレワーク。無意識の偏見が発生する原因と解決方法について、多くの事例を参考にして解説した。
 

セミナーは澤田部会長の司会進行のもと、日印産連・堆誠一郎(宝印刷社長)常任理事の開会あいさつで始まった。「現在ダイバーシティ分野においてはUBが注目されている。講演では無意識の偏見とはどのようなものなのか、明確に解説していただく。改善方法を習得するよい機会である」
次に櫻井副会長による講演が行われた。
 

「『ジェンダーギャップ・男女格差』では153カ国中121位、『ガラスの天井(労働参加率、女性管理職・役員数、育休取得率など10項目)』では29カ国中28位である。私たちが慣れ親しんだライフスタイルそのものを、日本が改善できず、世界から取り残される要因となり、男女格差になっているのではないか?
女性自身が声をださないと男性は変わらない。上司に対してモノを言うことを心がける。男性はそれを受け入れ、女性はそれを主張していく。これからは男女とも主張していくことが大切。経営者自らは聞く耳をもっているが、ややもすれば同質性を求める傾向がある。言うことを聞く奴が出世の早道だ、ということがないようにコントロールをお願いしたい」
 

違いが活かされる組織づくりへ

 

休憩をはさみ、パク氏の講演が行われた。
「UBは、知名度が低い言葉であるが、ダイバーシティ推進企業では取組むところが増えてきた。UBは、ダイバーシティ発祥の国アメリカから生まれた。60年代、人種問題が激しかったころ、公民権運動から取組まれるようになった。取組んでいるうちに多様な人材が活躍する会社の方が『儲かる』ということが分かり、職場でも社会でも多様な人たちの存在感が増してきた。しかし2000年前後から進捗が鈍化した。一昔前は米国の女性は専業主婦が圧倒的に多かったが、ダイバーシティの進捗に従い、社会に進出していった。80年代前半、ついに大学卒業学士・修士取得者の女性割合が男性を上回った。女性の方が高学歴になり、企業でも役員管理職の割合が半々になるのかと思ったら、米国にかかわらず、どの国でも就業者→管理職→役員と昇進するにつれ、女性割合が低くなってしまう。
偏見の影響を減らすためには、誰もが受け入れられる組織風土が必要になってくる。目指すのは無意識の偏見に取組むことが目的ではなくて、誰もが受け入れられ、違いが活かされ、能力を最大限発揮できる組織づくりである。これをインクルージョンという。皆の違いが活かされて、受け入れられている状態が普通になっていることで、多くの多国籍企業が『ダイバーシティ&インクルージョン』を進めている。バイアスに対応していくというのも、公平性とインクルージョンを確保するためである」
 

ここからスクリーンに映された人物を見て、一緒に仕事をしたい人を選ぶ、隣の席の人と自社にはびこるUBについて意見交換するなど、参加型・能動的なカリキュラムになり、脳の機能と限界を学んだ。
 

参加者のUBの事例を紹介する。
東京・女性社長 「面接のとき、地方出身者の長男である場合、いずれは国に帰って、家の後継ぎをするんじゃないかと考えてしまう」
宮崎・女性社長 「地方にはその土地独自の仕事があるが、他県からの人や派遣の人も多い。そういう人は馴染めるのか?やはり地元出身がいいと思うときもある」
 

パク氏は「クラシックオーケストラ楽団員は1970年代までは、白人男性が95%だった。ある楽団では、実技オーディションの時、応募者と審査員の間にスクリーンを置いた(ブラインドオーディション)。その結果、80年12%、2009年37%、現在40%が女性楽団員となった。女性だけではなく、アジア国籍、ノンホワイトの楽団員も増えた。バイアスがブラインドで抑えられたのだ。
女性活躍は、女性に下駄を履かせることと言われるが、ここで分かったのは下駄を履いていたのは男性だったということ。女性活躍精神というものは、私たちにも下駄を履かせて、ではなくて男性と同じ評価基準で評価して、ということを求めている。ダイバーシティマネジメントは誰も有利・不利にしないが、バイアスが無意識的に有利・不利を作ってしまう。マジョリティは有利になり、それ以外は不利になる結果になる。そこを是正しなければならない。
人間は誰でも偏見を持っている。それは生き残るための本能のようなもので、時々は気を付けて対応していく必要がある。自分にもバイアスがあるということを見つめて、何に対してあるのかという意識を高めてほしい。人を判断したり、評価する時はじっくりと考えて事実をもとに憶測、表面的なことではなく、事実ベースで評価する。様々な人と接していけば偏見の影響は減っていく。
出産前後で、社員の接し方が違うと多くの女性が言っている。上司は子どもがいると海外出張は無理と思いがちだが、リサーチすると3、4割は引き受けられる人がいる。男女かかわらず、まず一番の適任者に聞いてみることが必要である。
人材採用もそうである。なぜ多様な採用チームが必要かというと、自分と同じようなタイプの人間を採用するからだ。人間は偏見をなくすことはできない。影響を抑えることはできるが、まったく偏見なしにすることはできない。だから削除するというよりは、自分の偏見に気付き、影響を抑えるような形にもっていくことがベターなアプローチであろう」としめくくった。

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