2019年12月13日

たしかな印刷技術に裏打ちされた高品質な印刷製品を提供することで、同業者からも多くの支持を受ける㈱正栄堂(本社・東京都板橋区中丸町33の6、熊埜御堂敦社長)では、その高い能力を頼りにされてあらゆるジャンルの仕事が集まる。同社ではハイデルベルグ社製の菊全判4色印刷機「スピードマスターCD102-4」と菊半裁4色印刷機「スピードマスターSM74-4」の2台体制で生産をしてきたが、社内の生産環境の見直しと生産性向上を図るべく、平成28年2月にこの2台と入れ替える形で菊全判4色印刷機「スピードマスターCX102-4」を導入した。1台であらゆる仕事に対応できる柔軟性と既設機2台分以上の生産性を兼ね備えた「スピードマスターCX102-4」が、同社の生産環境を合理的なものに一新させている。

 

生産効率のいっそうの向上を狙って導入したスピードマスターCX102-4

稼働開始からわずか3年半程で累計通し枚数が1億4500万枚に

 

同社は昭和27年に創業して今年で68年目を迎える歴史を持つ印刷会社。その高い技術から生み出される印刷製品は印刷物を見る目がシビアなプロからも支持されており、その結果として同業者からの仕事が受注の多くを占めている。プリプレスから印刷、製本工程まで一連の設備を有し、主な印刷品目としては商業印刷物が中心ながらPOPなどの厚紙へ印刷する仕事もあり、あらゆるジャンルの仕事を幅広く受けている。

熊埜御堂社長

熊埜御堂社長

これまで使ってきた印刷機の「スピードマスターCD102-4」と「スピードマスターSM74-4」は、導入からそれぞれ16年・18年が経っていた。「印刷物がなくなるとは思わないが増加していくこともないだろう。印刷物を使用するターゲットをきちんと絞り、適切な数量だけを作るような時代がくると思っている。その中で、多くの印刷機を稼働させるスケール勝負をする会社もあるのだろうが、当社は与えられた仕事を確実に納品して、売上よりも利益を確保することを志向している。そこで、2台の印刷機はまだ品質的にも生産力的にも十分な働きをしてくれていたが、生産効率をいっそう向上させるべく新台の導入を決断した」と熊埜御堂社長は語る。

 

そのような経緯から導入した「スピードマスターCX102-4」だが、同社では驚異的な稼働実績を叩き出している。同業者からの下請け仕事が多いことから小ロットの仕事が多く、平均ロットは4~5000枚程。ロットが短いこと、それはすなわちジョブ替え作業が増えるので本刷りに充てられる時間は短くなるはずだ。そうであるにも関わらず、稼働開始から3年半強となる10月末の時点での累計通し枚数が約1億4500万枚にものぼっている。しかも、同社は24時間体制ながら完全週休2日制を敷いている。

これだけの期間でこれほどまでの印刷枚数に達した背景には、非常に高い生産効率を実現していることがある。平均的な国内印刷会社では20%前後となっているOEE【=総合設備効率、(平均稼働速度÷印刷機最高速度)×(本刷り枚数÷総通し枚数)×(印刷時間÷印刷機の電源が入っている時間)の数値】が、同社の「スピードマスターCX102-4」は通期で30%台後半を示し、月によっては40%を大きく上回ることもある。「この印刷機の実生産スピードの速さには驚かされた。印刷機の最高速となる毎時1万6500回転で稼働させている時がもっとも印刷品質が安定する。紙さえ通すことができればつねに最高速で回すようにしているので、1万6500回転が当社の標準速度となっている」(熊埜御堂社長)

 

40%に迫る高いOEE(総合設備効率)を実現

たしかな印刷技量を持つ人材の確保にも貢献

 

スピードマスターCX102-4

スピードマスターCX102-4

ただ、印刷スピードが速いだけではこれだけの生産性にはならない。同社の前準備時間は短いと5分程、難しいジョブも含めた全ジョブ平均でも15分程しかかかっていない。しかもこの「スピードマスターCX102-4」には自動運転機能は搭載しておらず、一般的な仕様となっている。それでいてこのようなジョブ替え時間の短さを実現できているのは、印刷技量の高さと充分に印刷機へのメンテナンスを施しているからだ。「当社は工場が狭いので乾燥待ちの印刷物を置いておけるスペースもないので、片面印刷後すぐに裏面印刷をしなければならない。それゆえに、湿し水量を絞った適正な状態で印刷する技量を身につけなればならず、またそれを継続して実現するための印刷機のメンテナンスも欠かすことができなかった。そのおかげで当社の印刷品質が上がり、刷り出しで損紙はほとんど使わないし、ジョブ替え時間も短くなっている。今は平均的に1シフトで20~25ジョブをこなしている」と熊埜御堂社長は同社の印刷技量が高まった背景を語る。その印刷技量に応えるだけの能力を備え、これだけのパフォーマンスを「スピードマスターCX102-4」はあげているが、この印刷機には特別な自動化機能を搭載しているわけではないので、同社でなくても「スピードマスターCX102-4」で同じパフォーマンスをあげることは可能なのだ。

 

この「スピードマスターCX102-4」では既設機2台分の仕事をこなしており、さらに、これまでは繁忙期に外注対応することもあったが、今では印刷機の判サイズに収まらない仕事以外で外注することはなくなったということから、2台分以上の仕事量をこなしていることになる。しかし、1台体制にするということは万一のトラブルの時には代替や補完するものがないことになる。その点について熊埜御堂社長は「2台を1台にすることへの不安もなくはなかったが、これまで使ってきた2台もその前の印刷機も長く使ってきた中で大きなトラブルがなかった。そのような実績からハイデルベルグ社製の印刷機には信頼を置いていたので、安心して1台体制へ移行する決断ができた」と振り返る。

同社の印刷部門では、印刷機が2台から1台に減らしても人数を減らしてはいない。「生産環境の合理化はしたが人員の合理化や人員整理はしていない。働き方改革が叫ばれるよりも以前から労働時間には気を配り、有給休暇も取得しやすい状況にしている。これからは、最低限の人数で回していくという時代ではない。たしかな技量がある人材を確保するためにも労働時間をきちんとコントロールして、彼らの高い技量をもって品質の高いものを提供し、さらなる顧客満足度向上を図っていく」(熊埜御堂社長)

 

日本印刷新聞 2019年11月25日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

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