2019年12月11日

㈱モリサワ(森澤彰彦社長)の2019年2月期(72期)の売上高実績は前年同期比3・8%増の135億9900万円だった。フォントを中心に堅調に推移した。20年2月期はほぼ横ばいの見込みである。今後の重点指針は①フォントビジネスの市場拡大②海外事業の強化③ブランド価値向上の取り組みの3点。同社は「文字を通じて社会に貢献する」を社是としてこれからも歩んでいく。
 

森澤彰彦社長

森澤彰彦社長


 

同社は19年12月4日、東京・九段下のホテルグランドパレスで事業報告会を開き、①実績報告②19年度のハイライト③経営計画④重点指針について森澤社長が説明した。森澤武士常務、山口幸治経営戦略部部長、高桑剛経営戦略部戦略マーケティング室担当課長、河野博史経営戦略部広報宣伝課課長代理、酒井大倫広報宣伝課係長、相田浩美・高井幸代広報宣伝課員が同席した。
 

モリサワの売上高推移

モリサワの売上高推移


 

同社は2017年3月から開始した3年間の中期経営計画に基づき事業を行っている。19年がその最終年になる。
中期経営計画では「新たな価値を広げよう」をテーマとし、新しい製品開発やサービス価値の向上にチャレンジしていくことで事業を進めてきたが、変化の激しい時勢に即応するために、当初の複数年の中期経営計画を19年から単年ベースの計画に変更した。
 
加えて現在の事業部体制を見直し、フォント開発および海外展開など、より戦略に即した新組織に移行した。また、20年に開かれる東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルサポーターとして「東京2020公式フォント」の提供など大会の成功とスポーツの発展に貢献している。
 

19年の企業活動のハイライトは次の4点である。
 
①字游工房をグループ会社化
設立以降、数々の優れた書体開発を手がけ多くのユーザに支持されてきた有限会社字游工房の全株式を取得し、19年3月1日付でグループ会社とした。今後は、字游工房の強みである書体開発力や、書籍向け本文書体の制作実績などを生かし、モリサワグループ全体としてより飛躍していく方針。
 
②タイプデザインコンペティション2019
新たな表現力とチャレンジ精神に溢れたタイプフェイスデザインの追求を目指し、3年ぶりにタイプデザインコンペティション2019を開催した。国内外から過去最多となる813点(和文部門258点、欧文部門555点)の作品が寄せられた。表彰式を9月に行った。コンペティションの開催をきっかけに世界各国での、同社の認知が高まっている。未来にわたって豊かな文字文化を継承できるように、同社ならではの取り組みを国内外で続けていく。
 

③AtypeI 2019 Tokyo
長い歴史と権威を誇るタイポグラフィのカンファレンス「ATypI(エータイプアイ)」が63回目にして日本に初上陸、モリサワが運営事務局を務めた。9月4日から7日まで日本未来科学館で開催。4日間の会期中、500人以上が訪れ大盛況のうちに幕を閉じた。世界中のタイポグラファーたちが、モリサワをはじめ日本のタイポグラフィの知識を深め、有益な情報交換の場とすることができた。
 

④東京2020オフィシャルサポーターとしての取り組み
いよいよ開催の迫った東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、モリサワはオフィシャルサポーターとして、「東京2020公式フォント」を組織委員会に提供した。それに伴い、大会1年前となる19年の夏には特設サイト(https://www.morisawa.co.jp/tokyo2020/)をオープンした。20年の夏に向け、引き続き取り組む。
 

単年ベースの経営計画に移行し激変する時勢に即応 事業部体制も見直し

 

2017年3月から開始した3年間の中期経営計画では「Expansion of new value~新たな価値を広げよう~」をテーマに据え市場対応力の強化を目的に組織を事業部体制へ移行したが、変化の激しい時勢に即応するために19年から単年ベースの計画に移行するとともに、現事業部体制を見直し、新たな組織体制で取り組む。
 
新体制では、組織バリューチェーンということで、製品開発において、商品やサービスが、顧客に届くまでをワークフローごとに分類し、そのフローにそった部門を配置することで、各部門の役割、かかるコスト、全体としての事業戦略への貢献度を明らかにし、強い組織作りを行っている。
 

経営計画推進の重点指針は3つ

 

経営計画を進めるうえで、特に強化するポイントとして、次の3つの重点指針がある。
①フォントビジネスの市場拡大
②海外事業の強化
③ブランド価値向上の取り組み
それぞれの重点指針の施策は次のとおり。
 
①フォントビジネスの市場拡大
主力商品である「MORISAWA PASSPORT」の書体数は毎年順調に増加しており、今後も引き続きサービスの拡充を図っていく。
 

また、19年はモリサワのUDフォントの認知度が高まった年となった。東京都内で初めて包括協定を結んだ世田谷区をはじめ、埼玉県三芳町、東京都荒川区教育委員会など、全国のさまざまな自治体や教育委員会での導入・活用事例が増えている。
 
特に、「UDデジタル教科書体」は学習指導要領に沿って開発されており、かつ、幅広い子どもたちにも読みやすいと評判が広がっている。過去の実証では、「一般的な教科書体と比べて約9%読み速度が改善した」との結果も出ている。
 
加えて、モリサワフォントがiPadで使えるフォント提供アプリ「MORISAWA PASSPORT for iPad」をリリースする予定である。これにより、ユーザは今までのデスクトップ上での作業に加え、iPad上でもモリサワフォントを使うことができるようになる。
 

今後も、モリサワは、ユーザの使用デバイスを問わず、「いつでも」「どこでも」快適なデザイン環境が実現できるよう、フォントの面からサポートしていく。
 
19年度は、10月に新書体第1弾、20年2月に第2弾を追加予定である。第1弾ではデザイン系書体のほか、人気書体UD新ゴの英数字を、ネイティブデザイナーとともにリデザインした書体をリリースした。
 

第2弾の注目書体はデザイン系の「赤のアリス」。11月にテレビでモリサワのデザイナーの特集が組まれた際にも、この書体が取り上げられ話題になるなど、心待ちにしているファンが多い書体である。
 

今後の書体開発の計画としては、デザイン系書体と多言語書体のさらなる拡充を目指す。
 
②海外事業の強化
アメリカでフォントダウンロード販売サービス「Fontelier」(フォンテリエ)を開始した。サービス名は「Font+Atelier」(フォント+アトリエ)から作られた名称で、「美しくデザインされたフォントが創造され続けるプラットフォームでありたい」という意味が込められている。現在はアメリカ国内だけで提供しているが、今後は、日本でのローンチ含め、全世界での展開を目指す。
 
また、世界的な書体デザイナー、マシュー・カーター氏をメインデザイナーに迎え、Shotype Design、岡野邦彦氏、モリサワの3社のコラボレーションワークによって、欧文書体「Role」を制作、リリースした。4つのスタイル(セリフ、サンセリフ、スラブセリフ、ラウンデッド)と3つのサイズシーン(本文用、小見出し用、大見出し用)に最適化されたデザインのバリエーションを持ち、各書体最大9つのウエイトが用意された合計200書体におよぶファミリーである。「Role」は「Fontelier」内で提供している。
 
③ブランド価値向上の取り組み
11月に都内で開催されたイベント「ParaFes2019」に、オフィシャルパートナーとして協賛した。このイベントは、東京2020パラリンピック競技大会での活躍を狙うパラアスリートと音楽アーティストが共演する、今年で4回目のライブエンターテイメントイベントである。今回の協賛を通じ、一般の人がモリサワの社名やロゴに触れる機会を創出することで、モリサワブランドを広くアピールできたと考えている。
 
また同じく11月に、(一社)日本車いすバスケットボール連盟(JWBF)とオフィシャルサポーター契約を締結した。
 

車いすバスケットボールは1940年代にアメリカで生まれ、競技スポーツとして徐々に世界で盛んになったスポーツで、日本でも障がい者スポーツの人気競技の1つである。今後、国際大会で活躍される車いすバスケットボール選手のサポートのみならず、国内での競技のさらなる普及と発展を支援する。
 
 

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