2019年11月26日

ハイデルベルグ・ジャパン㈱では印刷関連機器の提供だけにとどまらず、印刷物の品質を第一に考えて厳選した印刷資材・消耗品を「Saphira(サフィラ)」というブランドの下に提供している。ユーザーの生産機器の性能を最大限に引き出し、印刷物の品質向上に貢献するとともに、生産機器の長寿命化、長期にわたる生産の安定性確保にも役立つ「Saphira」では、印刷業界で求められている環境保護基準を満たした製品も提供する。枚葉オフセット印刷において、もっともVOC(揮発性有機化合物)が放散されるタイミングは洗浄工程となる。したがって、VOC放散が抑えられる洗浄液を選択することがVOC排出を抑制するための大きな要素となる。そこで今回、同社ライフサイクルオペレーションズ本部プリントアプリケーション部の北原綱一郎氏に、「Saphira」で提供されている環境配慮型の洗浄液について話を聞いた。

 

引火点が高く揮発しにくい洗浄剤を使用することが

より良い工場環境とオペレーターへの健康配慮に

 

――実際の一般的な印刷現場における洗浄剤の使用状況についてお聞かせ下さい。

北原氏

北原氏

北原 どちらの印刷会社様でもコスト削減を考えられており、そのための方法の1つとして印刷資材の見直しが絶えず行われています。その際、やはり安価な製品をお求めになるケースが多いようです。

また印刷現場からの洗浄剤に対する要望としましては、サッと拭くだけでインキが落ちて、なおかつサッと乾いてすぐに次の印刷ジョブに取り掛かれるような洗浄液を好む人も少なくないようです。もちろんそれも一理はありますが、ただしインキがよく落ちてサッと乾く洗浄液というのは、有機溶剤が大量に含まれているものが多いのです。印刷現場においてそのような洗浄液を大量に繰り返し使用しますと、それだけVOCが放散されますので、印刷オペレーターのみなさまがVOCを呼吸や皮膚から吸い込み、健康被害につながる可能性も出てきてしまいます。また、どちらの印刷会社様でも人手不足の状況にある中で、優秀な技術者・印刷オペレーターを確保するには、工場環境もなるべく良くする方が望ましいでしょう。

 

――その中で、Saphiraブランドからは、どのような環境に配慮された洗浄液が提供しているのですか?

北原 有機溶剤を極力使用していない、VOCが揮発しにくいタイプの製品として、油性インキ用の洗浄剤「Saphira Wash502NV」を提供しています。

この「Saphira Wash502NV」は、サッと拭けばインキが落ちたり、サッと乾くタイプのものとは性質が大きく異なりますので、同じような感覚でご使用になりますと「使いにくい」という印象を持たれるものかもしれません。

 

――それでは、「Saphira Wash502NV」はどのような特徴を持ったタイプの製品なのですか?
北原 「Saphira Wash502NV」のVOC揮発量が少ないのは、引火点がとても高いからです。一般的な製品の引火点は55℃位ですが、それが100℃以上となります。引火点がとても高いため通常の印刷現場ではほぼ揮発しないのです。

価格につきましては、つうじょう一般的に使用されている製品よりも高額になりますが、少ない量で洗浄ができるため使用量が半分程になりますので、コストとしてはおおむね変わりません。その上、「Saphira Wash502NV」を使用すると洗浄時間も2/3程に短縮されます。ジョブの小ロット化が進む現代において、洗浄時間の短縮は稼働率向上に大きく寄与しますし、またジョブ替え回数が増加すると洗浄回数も増えることになりますが、その都度VOCを放散することになるかそれを抑えられるか、この差は環境面においてとても大きなものとなるでしょう。

洗浄性につきましては、「Saphira Wash502NV」はインキを溶かす・浮かす能力が高いものとなっています。それにより、たとえばローラーやブランケット洗浄でこれまでは洗浄剤を20回噴射していたところが5回で済むようになります。

 

1回あたりの洗浄時間も短くなり実生産に充てられる時間やOEEも向上

機械や資材のロングライフ化にも貢献するのでコストメリットにも

 

――「Saphira Wash502NV」を使用するための条件はあるのですか?
北原 揮発しませんので、しっかりとローラーのニップ調整がされていませんと洗浄剤が掻き取り部まで到達しないため洗えません。そのため、印刷機のメンテナンスがとても重要となります。メンテナンスがしっかりされていますと、少ない量の洗浄剤でインキと洗浄液を掻き落とすことができます。もちろん、ドクターブレードの刃が硬化して固くなっている場合には、それも新しくする必要があります。

洗浄剤の使用量や噴射回数が大幅に減りますので、印刷機の設定も「Saphira Wash502NV」用のプログラムに変更します。これにつきましては弊社スタッフが訪問してセッティング致します。

あるユーザー様では、洗浄液の噴射回数が14回から3回に、洗浄時間も半分に、洗浄に要していた回転数も605回転から274回転になったという事例があります。

 

――そのほかに「Saphira Wash502NV」を採用することによるメリットはありますか?
北原 揮発性が高い洗浄剤を使用しますと、インキローラーやブランケットなどのゴム製品の中にあるやわらかさを保つ成分が気化するたびに奪われることで、ローラーやドクターブレード、ブランケットなどの交換頻度が高くなります。したがいまして、長い目で見ますと環境配慮型製品を使用することにより、機械や資材のロングライフ化にもつながります。

 

――コスト増にならず、さまざまなメリットが享受されるのですね。
北原 はい。一般的な洗浄剤と「Saphira Wash502NV」を単純に同じ量で比べますと価格は高くなりますが、年間の購入コストで比較すればほぼ変わりません。

そして、地球環境や工場作業環境への配慮という面ですぐれ、かつ印刷機を導入してから担当オペレーターが変わっていく中で継承しきれていないメンテナンス法や本来やらなければならないことも理解・学習できます。コストはそのままに、安全な作業環境の実現、印刷オペレーターのレベルアップ、資材のロングライフ化も図れます。

我々の想いは、印刷機のメンテナンスの重要性を理解してもらって実際に運用して頂き、クリーンな工場環境を作って頂くことです。「Saphira Wash502NV」はその一歩目という位置付けになります。

 

日本印刷新聞 2019年10月28日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

 

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