2019年11月11日

ハイデル・フォーラム21(=HDF21、塚田司郎会長)は10月31日、東京・港の品川プリンスホテルで「第22回全国合同地区大会・高付加価値セミナー」を開催した。

たくさんの来場者を集めた今回のイベントでは、働き方改革、働くスタイルの多様化への対応は中小企業にとっても重要な経営課題のひとつとして認識されていることから、人々の働き方に影響を及ぼすと言われているAIについて着目した講演が行われた。

また、会の席上、ハイデルベルグ・ジャパン㈱の水野秀也社長が同日をもって完全退任し、ヨルグ・バウアー取締役営業本部長が新社長に昇任することが発表された。

 

DSCN6056[1]今回の高付加価値セミナーでは、①HDF21の第23期事業報告、②百年コンサルティング㈱の鈴木貴博社長による「仕事消滅は起きるのか?~AIによって2020年代はどう変わるか?」を演題とした講演、③独・ハイデルベルグ社のライナー・フンツドルファーCEOによる「世界の印刷産業の現状と未来像」を演題とした講演――が行われた。

 

セミナーの1つ、百年コンサルティング㈱の鈴木貴博社長による「仕事消滅は起きるのか?~AIによって2020年代はどう変わるか?」を演題とした講演では、AIが今後どのような進化を遂げ、それによって印刷産業にどのような変化が起きるのか、企業や個人にとってのチャンスはどこに生まれるのかについての予測・解説を示した。

 

その講演の中で、まず鈴木氏は、経営をするにあたって長期経営計画を立てるが、その前提条件となる目論見が外れると経営上の大きなインパクトを受けることになると指摘。そして、▽目論見を外さない未来予測をするには自社の専門領域以外の情報も集める、▽生産年齢人口の減少を踏まえ、外国人労働者にしっかりと技能を教えつつ適切な賃金を支払うことで、労働力の他産業への流出を防ぐ、▽AIなどの技術革新によって想定されることを予測した経営計画を立てる――ことなどが肝要になると説いた。

その上で、AIの得意分野、任せることができる仕事の領域などについて解説。ロボットに適した領域は肉体労働の分野だが、AIが適した領域として経験と頭脳を使う専門職を挙げた。そのAIが活躍する恩恵を受けやすい分野として、自動車、金融、ホワイトカラーの一般事務を例示した。

そして、印刷会社においてAIの活用に適した分野として、デザインやクリエイティブ部門、校閲といった専門性の高い部門を挙げ、それぞれの顧客の好みや校正のやり取りにおける癖、色を修正する傾向なども踏まえた制作をするという未来像を語った。これにより生産性の飛躍的な向上が図れると同時に、熟練したスタッフではなくても仕事ができるようになることから従業員の非正規化が進み、その非正規労働者の必要人数をいかにして揃えるかが次の課題になるという予測を示した。逆に、AIが不得手だったりできない仕事として、AIに学習させること、コミュニケーションが必要なリーダー・営業の仕事、頭脳だけではなく観察・調査が必要な仕事があるので、その部分を正社員に担ってもらうことが、AIが普及した将来の印刷会社における社内の人員配置像になるという考察を示した。

 

 

------------------------------

同日をもって退任したハイデルベルグ・ジャパンの水野社長が、会の最後にあいさつに立ち、謝意を表すとともに、将来の印刷業への提言を述べた。

その大要は次のとおり。

水野社長

水野社長

「私が40年前にサービスマンとして入社した頃、私の周りは職人だらけだった。その頃は、勘と経験と度胸が印刷における原点と言われており、私もその頃はそんな職人に憧れを持っていた。しかしある時、私は師から“印刷は科学である”という教えを受けて考えを改めた。周りには職人しかいないので印刷に学問があるとは思っていなかったが、すぐれた職人がしていることには必ず最大公約数があり、数学で割り切れるという意味だと理解し、それからの私の40年間は、どうしたら“印刷は科学である”と証明できるかということを追求してきた。この40年の間で印刷機も印刷現場もデジタル化された。たとえば、昔はコントロールストリップも測色器もなかったが、今ではどこの工場にでもある。やはり印刷は科学だった。しかし、科学によって生産性を上げても、それをビジネスにつなげるための答えには辿り着いていない。

将来の印刷業を考えると、第1に印刷業は受注産業、というよりは受注産業根性から脱却しなければならないと思う。AIが発達・浸透してきたこの時代に、なぜ印刷物の受注を予測することができないのか。“お客様がそう言うから、お客様がまだできないから”というお客様の都合や意向にすべて合わせようとする声ばかり聞くが、そこを変えていくべきだ。印刷製造現場は科学で割り切れるようになったが、営業から始まるプロセス、とくに受注から生産管理の部分はまったく科学になっていない。その点について、印刷産業人の英知を結集すれば印刷業が受注産業ではなくなり、受注予測ができると同時に生産管理が前もってシミュレーションできる姿を作れると信じている。

もう1点は、印刷業でも航空券やホテルなどのように需要状況の多寡によって価格を変える、ダイナミックプライシングの採用を考える時代がきていると思う。世の中全体が、需要状況に応じて価格が変動するのは当たり前だという認識がされている今こそ、自社内でダイナミックプライシングのような仕組みを考えることが大切だ。すぐに実践できなかったとしても考えることはできるし、シミュレーションしてみると気付くことがあるだろう。そこでもAIは活用でき、なぜお客様はこの価格、このタイミングで発注したのかという分析をすることで、ダイナミックプライシングができるようになるはずだ。

国内印刷市場は縮小傾向にあるが、それでも勝つことはできる。生産性と売上を向上させる、事業領域を拡大させるなど、AIを自社の成長戦略と結び付ければ未来が見えてくる。もちろんこれは簡単なことではないが、経営者の覚悟・意志、なにをするために印刷業をやっているのかというミッション、将来はどうなりたいのかというビジョンを持ち、世の中の変化を踏まえながらデジタル技術やAIをベースにして、印刷業とはどうあるべきなのかを考えてもらい、それと同時にハイデル・フォーラム21を活用してその議論を深めてもらいたい」

 

 

 

 

イベント 企業 団体-関連の記事

PAGE TOP