2019年10月28日

㈱吉田印刷所(本社・新潟県五泉市、吉田和久社長)と日本アグフア・ゲバルト㈱(本社・東京都品川区、岡本勝弘社長)は平成28年8月、「ムダのない印刷物作りを目指す」をコンセプトに「フレッシュプリント・コンソーシアム」を発足させた。

現在、日本全国から56社が参加するまでに成長したこの会は、吉田印刷所が開発・提供する、納品はしたものの1度も使われずに廃棄されてしまう印刷物を極力減らすことを目的としたサービス「フレッシュプリント」を広く普及・浸透させることで、印刷業界全体で考えるべき環境負荷軽減となる新しいビジネスモデルの確立を目指している。

そこで今回、「フレッシュプリント・コンソーシアム」の取り組みと、吉田印刷所における「フレッシュプリント」の展開について、同社の吉田社長に話を聞いた。

 

1度に大量印刷・納品をせず複数回に分けて小口納品

納品の都度、掲載内容をフレッシュに更新できる仕組み

――まず、御社が以前から展開している「フレッシュプリント」というサービスについて、簡単にお聞かせ下さい。

吉田社長

吉田社長

吉田 企業が製品カタログを製作する際、1度に大量印刷していた印刷物を数回に分ける小口分割印刷での納品形態に変更する提案です。これにより印刷物を発注する側の在庫管理をしやすくして、納品総数を実際に使われる実需に近付け、使われずに廃棄される印刷物のムダを限りなくゼロに近付けます。しかも、小口で回数を分けて印刷をするため、そのたびに内容を変更し、新鮮(=フレッシュ)な情報を掲載することが可能となります。情報の陳腐化を防ぎ、鮮度の高い活きた販促ツールとして使用できるため、印刷物の価値向上に大きく寄与します

 

――そのサービスを日本全国に広げるための組織が「フレッシュプリント・コンソーシアム」なのですね。
吉田 納品はしたものの1度も使われることなく捨てられてしまうムダな印刷物を作り続けていては、印刷業界は紙や資源を濫用する産業だと社会から見られかねません。それは産業全体にとって大きなマイナスであり、あってはならないことです。そのような想いから、平成28年8月に日本アグフア・ゲバルトとともに立ち上げたのがこの会で、現在は同じ志を持った56社のみなさんが参加しています。
会の実際の取り組みとしましては、「フレッシュプリント」とはどのようなものか、成功事例の紹介、印刷発注者側の評価や感想、実践する上での製造面・営業面・経営面でのポイントなどをお伝えする説明会やセミナーを全国で開催しています。

 

損紙量や印刷前準備時間の極小化が実践する上で必須

印刷機の操作に即時反応するプレート選びが大きな鍵

――「フレッシュプリント」を実践する上で難しい部分はありますか。

ハイデルベルグ製CTPとアズーラTS用のクリーニングユニットを接続して運用している

ハイデルベルグ製CTPとアズーラTS用のクリーニングユニットを接続して運用している

吉田 本来は大ロットのジョブを数回に分けて印刷しますので、損紙量や印刷前準備時間は、分けた回数に応じて増えます。それを極小化することが重要なポイントとなりますが、そのための方策として、印刷機の即時反応性つまり立ち上がりを早めるための徹底したメンテナンスと、湿し水量を極限まで絞る「乾燥促進印刷」技術をもって臨んでいます。「乾燥促進印刷」によって湿し水量を極限まで絞ることで、紙の変形や過乳化によるインキの劣化を限りなく軽減でき、安定的に高品質な印刷をすることが可能となります。それを実践する上で当社が全面的に使用していて、もはや必要不可欠なものがアグフア社製の現像レスCTPプレート「アズーラTS」です。
プレートの選択は、印刷機がオペレーターの操作に即時に反応し、セット時間を短縮するための重要な要素です。しかしながら、現在は水幅が広いプレートが主流で、誰が印刷しても同等の結果が得られるものが好まれる傾向にあります。しかし水幅が広いプレートを使いますと、湿し水の調整に印刷機がすぐには反応してくれません。なによりも問題となる湿し水の量が増えてしまいますので、乾燥性と印刷品質に課題が残ります。そこで当社では、砂目が細かくて印刷時に水が切れる、アグフア社製の現像レスCTPプレート「アズーラTS」を全面採用しています。このプレートはオフセット印刷の原理原則である、湿し水を極限まで絞った印刷が可能となり、しかも湿し水量を調整するとその結果がすぐに印刷品質に反映されます。さらに、現像工程がないのでCTPで焼いた通りの網点品質を保ったまま印刷できる、プロが使うべきプレートだと判断しています。

湿し水量を極限まで絞る乾燥促進印刷により、向こう側が透けて見える程の超薄紙への多色カラー印刷も実現している

湿し水量を極限まで絞る乾燥促進印刷により、向こう側が透けて見える程の超薄紙への多色カラー印刷も実現している

また製造面のほかにも、経営者の心構えも重要なポイントの1つです。ムダをなくして納品総数を減らすという提案は、売上を落とすという考えにつながります。売上面でのマイナスを技術面で補うことは決して簡単なことではありません。その分コストもかかるという認識を持たれるでしょう。しかし、さまざまな工夫を積み重ねることがプラスを生み出すことを当社は何度も体感しています。「乾燥促進印刷」によって資材や時間・労働力の無駄が減りますので、それが利益につながります。また、納品総数を少なくすることは売上減になるかもしれませんが、企業経営にとって大事なのは売上の中の利益です。ムダをなくす環境活動によって利益を捨てているわけではないことは、当社が実証しています。そのような考え方や想いも「フレッシュプリント・コンソーシアム」を通して共有し、最初は不安に思うかもしれませんが、ぜひとも未知の可能性に挑戦して頂きたいと思います。

 

――「フレッシュプリント」を展開するための「乾燥促進印刷」を発展させたサービスも展開しているそうですね。

吉田 「フレッシュプリント」を行うために必須となる湿し水量を極限まで絞った印刷技術を応用して、超薄紙へのカラー印刷「スーパーライトプリント」という進化型の印刷物も提供しています。0.024㍉の薄紙へのカラー印刷ができますので、グラシンペーパーやカラペ、和紙などへの印刷製品を提供しています。これは湿し水量を極限まで絞らなければ絶対に刷ることができません。また、分厚いカタログになりますと持ち運びが大変で使い勝手も悪くなりますので、薄紙印刷技術を活かし、使いやすいカタログを作る提案もしています。

 

印刷物を製作する真の意図、それは効果や利益をあげるため

納品した印刷物が果たした効果を追跡・集計する仕組み作りを目指す

 

――それでは、御社での「フレッシュプリント」に続く次なる展開についてお聞かせ下さい。
吉田 企業が印刷物を製作する真意は、それを使って売上と利益を上げるといった効果を求めていることにあります。その効果測定ができるような「カタログ・トレーサビリティ・システム」というサービスを展開しようと考えています。
このサービスは、カタログを使用される際に、「いつ、誰が、どこに、何を、どれだけ」配布したのかを集計するものです。多くの企業は営業日報をつけていますので、これに該当する情報を営業日報から抽出し、実際に使用した部数を明確にします。さらに、配布したカタログの反応と効果を計測することによって、売上にどれだけ寄与したかが判断できます。納品したカタログの意義は、受け取った顧客がどのように反応して、売上にどうつながったのかが重要なのです。たとえ高品質ですぐれた出来栄えのカタログを製作しても、それによって効果が得られないのでは意味がありません。そこで印刷発注者とともに手を組んで、製作した印刷物の費用対効果が計測できる仕組み作りによって、営業効果を高め、利益創出をサポートしたいと考えています。
もちろん当社にとってもこのサービスを通じて納品先のカタログの残部数が把握できますので、次の提案時期や製作のタイミングもわかります。これにより効率的な動きが取れることは言うまでもなく、使われずに廃棄されるカタログを限りなくゼロに近付けることができます。
印刷物の品質は良くて当たり前、もはやそんな時代になりつつあります。そうなりますと、印刷に付帯したサービスやシステムの価値や、評価してもらえる仕組みを印刷発注者と一緒に開発する時代になるのではないでしょうか。印刷発注者が利益を生み出すサポートをするためのツール、その一歩と位置付けている仕組みがこの「カタログ・トレーサビリティ・システム(CTS)」なのです。

 

日本印刷新聞 2019年10月28日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

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