2019年10月28日

㈱ミヤコシは10月23・24日の両日、千葉・八千代の同社POD開発事業部クリーンルーム/デモルームで「紙ストロー生産機 内覧会」を開催した。2日間でのべ220人もの来場者が訪れたこの内覧会では、使い捨てのプラスチックごみ問題に端を発した脱プラスチック化をする上で世界中から注目されている紙ストローについて、国産初の量産製造機となる「STO-001」を披露した。「STO-001」は最高生産速度毎分150本(6φ×200㍉)、リール数は最大5本、製造可能なストロー径は6~10φ、ワンマンオペレーティングが可能な仕様で、機械・資材ともに食品衛生法に準拠している。この紙ストロー生産機「STO-001」の技術的背景、開発の経緯・意図などについて、同社営業本部国内事業部L&I営業課の藤谷慎次長に話を聞いた。

 

――印刷・加工機メーカーである貴社が、紙ストロー生産機を開発・製造した背景についてお聞かせ下さい。

藤谷次長

藤谷次長

藤谷 食品の一次包装用で超薄紙に対応する、水性フレキソ印刷機をご採用して頂いたあるパッケージコンバーター様からの、「紙ストローの生産機を作ることってできる?」という問い掛けがきっかけでした。当社が持つ用紙のハンドリングや加工の技術を評価して頂いた上で、お問い合わせをして頂いたようです。

正直な話、その時はピンとこなかったのですが、その市場について調べてみますと、世界的な脱プラスチック化の流れもあり、かつ紙製ストローへの移行というのはその象徴的なものとなっています。また、国内の多くの食品メーカーや外食産業でもSDGs実現に向けた取り組みとして、脱プラスチック化をすでに展開していることから、将来的なビジネスの可能性そして社会的貢献の面からも有益と考え、検討の俎上に載せました。
昨年の暮れ頃から設計を開始し、今年3月には機械ができあがりました。紙ストロー生産に適した紙や糊の組み合わせ、クリアすべき条件などがわからないので、製紙メーカーや糊メーカーに教えて頂き、テストを繰り返した結果、ご使用頂けるレベルの製品ができあがりましたので、今回の内覧会でみなさんに見て頂く運びとなりました。

 

――現段階での国内における紙ストローの普及具合はいかがですか?

藤谷 当社製の紙ストロー生産機は、すでに1台を納入させて頂いています。実際の国内で流通している紙ストローにつきましては、海外製の紙ストローを輸入したもの、もしくは海外製の紙ストロー製造機を使って国内生産したものの2通りとなります。プラスチック製のストローは長い間にわたって使われており、大量生産・流通の仕組みができあがっていますのでとても安価で、1本あたりの単価は1円未満です。一方の紙ストローは、海外製の紙ストローでも1本あたり2~3円台、海外製の生産機で国内製造した場合はそれよりももう少し高くなり、プラスチック製のストローと比べると10倍近い価格になります。その価格差を超えてでも企業イメージや環境配慮を重視する、たとえばホテルや空港、航空会社をはじめとした企業・ブランドから、紙ストローの採用が始まっています。

 

紙ストロー生産機「STO-001」

紙ストロー生産機「STO-001」

――紙ストロー生産機「STO-001」で使用する原材料はどのようなものになりますか?

藤谷 原材料は紙と糊のみです。プラスチック製ストローや中国製の紙ストローと対抗していかなければなりませんので、いかにして紙ストローの製造コストを抑えるかにフォーカスしましたので、紙にコーティング剤で処理をするような仕様にはしていません。できるだけ原材料を使わないようにするため、コーティング剤を使わず、製紙メーカーに耐水性のある紙を供給してもらい、それに糊でくっつけて巻くというシンプルな仕組みです。もちろん使用する糊につきましては、FDAをはじめとした食品接触材の各規格に適合したものとなっています。

 

――紙ストロー生産機「STO-001」の開発にあたり、技術的に難しい点はありましたか?
藤谷 機械自体よりも、紙や糊と機械のマッチングに苦労しました。たしかな強度を実現しつつ、生産工程・スピードにマッチした糊の塗布量にすること。また、糊を塗布して巻く時には糊はウェットの状態を保たなければなりませんが、巻いた後に1本ごとにカットをする段階では糊がウェットな状態だと切れが悪くなります。そこで、糊が乾燥するまでの時間や塗布量によって、工程間の用紙走行距離を変えるという試行錯誤を繰り返しました。

 

――「STO-001」は、すでに販売されている海外製紙ストロー生産機と比べ、どのような利点があるのでしょうか?
藤谷 すでに海外製の紙ストロー生産機を導入されている複数の企業様が、当社の工場に見学にいらっしゃっています。そこで頂いたご評価では、生産性がはるかに高いこと、そして糊の塗布ムラがないという声を頂きました。やはり、当社がこれまでフォーム印刷・加工機の開発・製造で培ってきました用紙搬送の安定性、糊の塗布やカット刃の技術、機械の堅牢性が転用されています。
品質安定性、連続高速生産性のほかに、ご採用後のサービス・メンテナンスにつきましても、印刷機同様に日本全国へのフォローを致します。また、当社は印刷・加工機でもお客様のご要望を柔軟にお受けしてオーダーメイド・カスタマイズ生産を得意としていますが、このストロー生産機につきましても、たとえば熱風、高周波乾燥機などの乾燥システムを付けたり、ストローの紙袋包装までワンパス処理する仕組み、異物検査機を組み込むといったことにもお応えします。

 

――今後の予測についてお聞かせ下さい。
藤谷 この「STO-001」の操作には、特別なスキルはまったく必要なく、誰にでもお使い頂けます。言い換えますと、この分野へ新たに参入する際の、製造面でのハードルはとても低くなります。
また、ショッピングバッグにも脱プラスチック化の波がきていますが、当社では紙袋を生産するための角底製袋機も提供しています。
来年には東京オリンピック、2025年には大阪万博など、国際的なビッグイベントが開催されることから、それにあわせて紙ストローへの移行による環境配慮をアピールする企業も少なくないでしょう。社会的な注目度も高いので、紙ストローの需要が高まることは予測され、その伸び代は大きいでしょう。当社でもそのような社会全体の動きに対応、貢献すべく努めてまいります。

 

日本印刷新聞 2019年10月28日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

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