2019年08月09日

北島義斉社長

北島義斉社長

大日本印刷の北島義斉社長は8月1日午前11時半から東京・丸の内のクラブ関東で印刷関連マスコミと懇談し、①就任1年間の成果②就任時に打ち出した「第三の創業」への取り組み③4月に刷新した人事制度の狙い④部門別の現況など就任以来推進してきた数々の「変革への挑戦」を説明した。杉田一彦常務執行役員、コーポレートコミュニケーション本部・田村高顕本部長、佐々木大輔副本部長、久保田幸子広報室員らも同席し、質疑に応えた。
 

7%の営業増益を達成 20年3月期は営業利益510億円目指す

 
7月24日に2020東京オリンピックの1年前を迎え、9月には、ラグビーのワールドカップも始まるなど、国内では新たな動きが活発化している。一方、米中や日韓の貿易問題や、海洋プラスチックなど環境問題の影響も大きくなっている。
このように世の中が大きく変わっていくなかで、新しい価値を提供していくため、就任1年間で、さまざまな「変革への挑戦」を行ってきた。
例えば、DNPには国内外で高いシェアを獲得している製品・サービスが数多くあり、そうした事業に注力するとともに、さらなる拡大に向けて設備の増強などを進めた。また、「P(印刷)とI(情報)」の独自の強みを掛け合わせて、社会課題を解決するとともに、人びとの期待に応える価値をつくり出す取り組みを推進した。

こうした事業活動を加速させるために、全国の職場を訪問し、現地の社員と直接対話する機会を設けている。19年8月までに、広島・岡山・北海道など10カ所を回って、製造現場や研究開発、営業や企画の人たちに直接メッセージを伝えて、社員の声を聞いている。今後も海外を含めてこうした機会を作っていく。
 
これらの取り組みの結果、19年3月期は、7%の営業増益を達成することができた。
20年3月期も、510億円の営業利益の達成を目指して、取り組みを進めていく。
 

「第三の創業」へ3つの重点施策

 
「第三の創業」は、DNP独自の「P&I」の強みを掛け合わせるとともに、DNPとは異なる強みを持ったパートナーとの連携を深め、社会の課題を解決するとともに、人びとの期待に応える新しい価値を生み出していく取り組みである。この「第三の創業」の実現のために、事業ビジョン「P&Iイノベーション」を推進し、「オールDNP」で総合力を発揮しながら、以下の3つの重点施策を推進している。
 
①「成長領域を中心とした事業の拡大による新しい価値の創出」
4つの成長領域「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」に対して、DNPの技術やノウハウ、外部のパートナーの強みの掛け合わせを一段と強化して、SDGsに代表される社会課題の解決などに努めていく。
例えば、東京大学と共同開発した「スキンディスプレイ」や、成育医療研究センターと共同開発した「ミニ腸」など、外部の研究機関との共同研究も多数手がけている。また、市谷や五反田にある共創スペース「P&Iラボ」を活用して、多くのパートナーとのコラボレーションを積極的に行い、具体的な成果に結びつけるようにしている。
 
②グローバル市場に向けた価値の提供
現在、バリューチェーンや情報ネットワークはグローバルに広がり、緊密に連動している。DNPも世界各地で事業を展開しているが、その際、各地域の特性や課題、ニーズを的確に捉え、DNPの製品・サービスがそこで価値あるものになるかどうかをしっかりと見極めるように努めている。DNPは1964年から海外でビジネスを行っており、現在は約5000人の現地社員が海外の拠点で働いている。今後はさらにグローバル市場に向けたビジネスを拡大していく。
 
③あらゆる構造改革による価値の拡大
価値への対価が利益となるため、その価値を確実に高めていくことが重要である。そのためには、事業競争力を維持・強化していく必要があり、常に「価値」という視点から戦略や戦術、市場などを見直していくとともに、社内の体制やルールなども常に見直していくようにしている。これまでも、事業部門やグループ会社の統合・再編に取り組んできたが、今後もさらに構造改革を進めていく。
 

より働きやすく人事制度を刷新

 
社内のルールの見直しの1つの事例として、今年4月、人事諸制度の改定を実施した。これは、急激に変化する社会全体を視野に入れ、より風通しの良い組織をつくり、より働きやすく、価値を創出しやすい体制を目指したものである。
社内外の多彩なキャリアを持った人たちや若手社員を対象とした制度改定を行い、例えば、社外の視点を積極的に取り入れる雇用関連制度を充実させた。特定の専門分野での有期雇用形態やジョブ・リターン制度を導入したほか、副業・兼業を認めるようにした。
さらに、在宅勤務など時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方を推進し、テレワークの導入や管理職の働き方改革の推進などで、生産性を高める職場づくりに取り組んでいる。
 
19年3月期(通期)の連結売上は、1兆4015億円で前年比0・8%の減少となったが、営業利益は498億円と7・6%の増益を確保することができた。
 

出版社向けにイノベーション展開催

 
「情報コミュニケーション部門」は、出版市場の不振が続いたほか、商業印刷分野でもカタログやチラシなど紙メディアの需要減少の影響があって部門全体の売上は減少したが、ICカードやBPOが増加して、増益となった。
出版メディア関連では、出版販売データをAI(人工知能)で予測して書店の需要予測を行うなど、出版業界全体のビジネスモデルの変革につながるような取り組みを進めている。
7月には、出版社向けのプライベート展示会「出版イノベーション展」を開催し、出版社の業務革新とコンテンツの利活用を支援するさまざまなソリューションを紹介して、高い評価をいただいた。また、いかに読者の期待に応えるコンテンツを提供するかということが大切であり、日本の魅力的なコンテンツと、VR(バーチャルリアリティ)などのDNPのソリューションを組み合わせ、雑誌や書籍に限らず、利用者にとっての多様な「体験価値」として提供していく。
キャッシュレス化で拡大しているICカード事業や決済サービス関連の事業に注力するとともに、人手不足や働き方改革への対応として、企業の業務を代行するBPO事業を積極的に展開している。高度なセキュリティを備えた国内のBPOセンター14拠点を活用し、AIなどの最新技術も導入しつつ、企業の多様なニーズにきめ細かく対応している。
イメージングコミュニケーション事業では、スポーツやイベント会場などで写真撮影からプリント出力まで行うサービス「DNPマーケティングフォトブースシェアリングボックスプライム」などを展開している。世界トップシェアの写真プリント用部材の強みを活かし、写真の楽しみを訴求する「コトづくり」事業に、グローバルで力を入れている。
 

ミラノサローネでデザイン力を示す

 
「生活・産業部門」では、リチウムイオン電池用バッテリーパウチなど産業資材分野は好調だったが、包装や建材関連は、個人消費の勢いが感じられないなかで売上が伸び悩み、利益についてもフィルム材料など原材料の値上がりの影響が大きく、大幅な減益となった。
包装分野では、環境配慮製品・サービスの開発・販売に力を入れている。植物由来の原料を使用した「バイオマテック」シリーズや、よりリサイクルしやすいモノマテリアル(単一素材)のパッケージ、分別廃棄しやすい容器などを提供している。
例えば、「バイオマテック」を使用したパッケージについて、DNPの18年度の年間出荷量からCO2の削減量を算定したところ、石油由来のパッケージを使った場合よりCO2排出量が2500トン(17・8万本の杉が1年間で吸収するCO2量に相当)以上減少したという結果が得られた。
建材関連では独自のEB(電子ビーム)コーティング技術を活かした環境配慮製品や、木や石などの質感を演出する内外装用アルミパネル「アートテック」に注力している。こうしたDNPのデザイン力・技術力を世界にアピールするため、今年4月に世界最大のデザインの祭典「ミラノサローネ」に初出展した。1週間で約2万7000人がDNPブースに来場し、イタリア国営テレビでも紹介された。ネットや雑誌の記事でDNPのデザイン力・技術力が高く評価され、この成果を世界の建築家やデザイナーとの関係構築に活かして、グローバルな事業の拡大につなげていく。
モビリティ関連では、EV化の進展にともなって車載用途が大きく増加しているリチウムイオン電池用バッテリーパウチのほか、自動車の軽量化に貢献する曲面樹脂ガラスや、意匠性と機能性を兼ね備えた加飾フィルムなど、高機能で高品質な製品・サービスの拡大に重点的に取り組んでいる。
「DNP多機能断熱ボックス」は、環境対応の価値が高く評価され、19年度の「地球環境大賞」の“大賞”を受賞した。本製品は、電力を使わずに一定の温度を長時間保てる断熱性能があり、また、ボックス内の温度変化をシミュレーションする独自開発ソフトによって適切な量の保冷剤を算出することで、長距離の低温輸送を可能とするコールドチェーンの構築に貢献する。電気やドライアイスを使わず、また、冷蔵品・冷凍品と常温品を混載できるため輸送効率も改善可能で、CO2排出量削減の大きな効果が期待されている。
 

有機EL用光学フィルムが好調

 

「エレクトロニクス部門」は、スマートフォンの世界的な伸び悩みなどによって、業界全体の状況は厳しくなってきているが、有機ELディスプレイ用の光学フィルムなどが好調に推移し、増収増益となった。
今後もスマートフォンなどの市場環境や需要動向などを的確に把握し、最先端技術の開発に今まで以上に注力していく。
2020年以降は、5Gの普及によって、高速通信で大量のデータをやり取りできるようになり、フォルダブル(折り畳み式)ディスプレイの普及が見込まれている。この動向に対して、スマートフォンの薄型化に貢献する、表示画面に貼付できる5G用アンテナや、液晶からの切り替えが進む有機ELディスプレイ向けの部材を拡大していくとともに、需要が減少していく液晶カラーフィルターの生産体制の見直しなどを行っていく。
電子部品だけでなく光学製品やライフサイエンスなどの分野で、これまでは不可能だと思われていた性能や機能を実現するために、ナノメートルレベルの高精細パターンを施した部品に対する需要が高まっている。こうした需要に向けて、フォトマスクで培ったナノインプリント技術を活用し、顧客の高精細パターン製品の製品設計から量産までをワンストップで支援するソリューションを提供している。
 
 

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