2019年04月23日

Koenig & Bauer社製のRapida106-4 LED-UVを新規導入

 

資材価格は相次いで高騰する上、価格競争は引き続き激化し、印刷市場を取り巻く環境はますます厳しくなっている。そのような中、印刷製品に付加価値を与えて印刷単価を上げられればいいが、それも簡単なことではない。そこで亜細亜印刷㈱(本社・長野県長野市大字三輪荒屋1154、藤森英夫社長)では、圧倒的な生産性向上による人件費および外注費削減を図り、その分を営業面での競争力へと変換することを狙い、Koenig&Bauer社全判4色LED-UV印刷機「Rapida106-4 SW2 SPC」を昨年8月に導入した。両面印刷時において毎時1万8000回転という基本性能の高さに加え、ジョブ替えから本生産までを完全自動で処理する機能「エルゴトロニック・オートラン」を活用した本刷り時間の極大化が相まって、より高収益体質へと進化する階段を上っている。

 

 

LED-UV化による即乾の効果で
インキ乾燥トラブルと外注費を削減

 

同社は専門書や学術書をはじめとした出版・書籍印刷を主品目にする印刷会社で、昭和38年の創業以来この分野に特化した展開をしている。とくに特殊な文字や記号、図表などを読みやすくて美しいレイアウトに収める組版技術に秀でており、組版部門には約40人のスタッフが従事する。そして現在、同社では年間で2500以上の書籍を製作している。また組版部門だけでなく印刷部門の技術獲得にも積極的に取り組んでおり、2011年および2017年の技能五輪国際大会では同社社員がオフセット印刷部門の日本代表として選出され、すぐれた成績を収めている。

 

大塚取締役

大塚取締役

そのような同社が保有する印刷機は3台。いずれも油性機で、書籍の本文印刷用としてダブルデッカータイプの四六全判2/2色機と菊全判4色機(2/2色との兼用タイプ)、本文以外のカバー・ジャケット・表紙・扉・はがきといった細かな仕事をする用途として菊半裁4色機という構成だ。各印刷機の用途が明確化されており、「Rapida106-4 SW2 SPC」はその中の菊全判4色機との入れ替えで導入した。「当社の仕事の9割以上を出版・書籍印刷が占めている。ほかの商業印刷物ならば許されると言うつもりはないが、書籍の場合はそれ自体が商品となるものなので、発注者は印刷品質に対してシビアになる。中には価格が数万円にもなるような図録などもあるので、発注者もとくにナーバスになる。そこで、風合いのある紙でもコスれや裏付きが生じないよう、LED-UV印刷を採用した」と、同社の大塚成二取締役工場長は印刷機を入れ替えた理由の一端を明かす。「Rapida106-4 SW2 SPC」の導入前は、インキ乾燥にまつわるトラブルが起こりそうな案件があった場合、UV印刷ができる会社へ外注に回していたが、現在、その手の仕事についてもすべて内製化している。

 

エルゴトロニック・オートラン
完全自動でジョブ替えから本刷りまで

 

同社が導入した「Rapida106-4 SW2 SPC」は、菊全判4色機。2胴目と3胴目の間に反転機構を備えており、4色片面印刷と2/2色印刷の両方を行うことができ、2胴目と4胴目の後にはLED-UV乾燥装置が備えられている。また印刷品質の安定化をサポートする機能として、印刷機内のカメラで全印刷物のカラーパッチを読み取って印刷機のインキキー開度を自動調節する機能やインライン欠陥検出装置、そしてインフィード部に引き針がなく用紙通過時にセンサーで用紙の位置を検知してそれに応じて印刷機側のグリッパーが移動する方式で針飛びによる見当不良が起こらない「ドライブトロニックSIS」なども備えている。

 

Rapida106-4 LED-UV

Rapida106-4 LED-UV

なにより、同社がこの「Rapida106-4 SW2 SPC」導入を決めた理由は、実生産性がとても高いことだ。両面印刷時で毎時1万8000回転という超高速機であることはもちろんのこと、サーボモーターで各印刷ユニットを独立して直接駆動させることで刷版交換と同時に各種洗浄作業ができることからジョブ替え時間の極小化が図れる「ドライブトロニックSPC」、さらには自動運転機能「エルゴトロニック・オートラン」も搭載されており、本刷りのスピードとジョブ替え時間の極小化の双方を両立している。

 

この「エルゴトロニック・オートラン」は、前のジョブが完了するとすぐに完全自動でジョブ替えから次ジョブの本刷りまで行う機能。一般的な自動運転機能ではオペレーターがジョブを呼び出して印刷順を計画する必要があるが、この「エルゴトロニック・オートラン」では、刷版の余白部にジョブ情報と紐づけられたマトリックスコードを入れておき、刷版が印刷機にセットされるとそのマトリックスコードがカメラで読み込まれる。すると、絵柄データ、紙情報、生産数などをはじめとしたジョブ情報を印刷機がサーバーから取得して自動で生産を開始するので、オペレーターがわざわざジョブを呼び出したり順番に並べたりする必要がない。

 

 

印刷機の自動化機能を駆使して
ワンマンオペレーション化を実現

 

刷版の余白部に入れられているマトリックスコード

刷版の余白部に入れられているマトリックスコード

同社が「Rapida106-4 SW2 SPC」を導入したのは昨年8月で、17年稼働させてきた菊全判4色反転機と入れ替えた。やはり、17年も稼働させていると故障なども起こる上、実印刷速度も遅く、かつ油性印刷機なので即乾も得られなかった。そこから「Rapida106-4 SW2 SPC」に替えた結果、飛躍的な生産性向上が図れた。その効果について大塚取締役は、「とにかく印刷速度が速く、両面印刷で毎時1万8000回転という点に魅力を感じた。LED-UVによる即乾も含めたスピードは、会社にとって大きな力になる。以前の印刷機の実稼働速度は毎時9000~1万回転だった。この印刷機では薄紙印刷が多いにも関わらず、実稼働速度は毎時1万5000~6000回転で回すことができる。平均ロットは1000~2000部で、書籍印刷なので台数物が主となる。用紙交換作業がない台数物だからこそ“エルゴトロニック・オートラン”による自動運転の威力は絶大なものがあり、ジョブ替え作業、見当合わせや色合わせといった確認、そして本刷りがノンストップで流れていく」と当初の想像をはるかに超える効果が表れていることを強調する。具体的な所要時間としては、刷版交換は全胴分が約30秒で終わり、「エルゴトロニック・オートラン」機能を使うと前のジョブの刷了から次のジョブの本紙を得られるまで、標準印刷では3分程度しかかからないという。

 

印刷現場のオペレーターからの評判も上々だ。同社では3台の印刷機ともワンマンオペレーションをしており、その3台分の紙積みを1人の専任者が行う体制を敷いているので、できる限り印刷機の自動化機能によってオペレーターの負担を減らすことを目指している。「インラインでインキ濃度のコントロールがなされ、刷版を差せばジョブは自動で変わり、印刷物はデリバリー部では乾燥して出てくるので紙がどのように落ちても大丈夫なので、安心して印刷作業ができることから、以前の印刷機には戻りたくないという声があがっている。さらに、横針がないので針飛びによる見当不良がまったく起きない“ドライブトロニックSIS”が絶対的な安定稼働を担い、しかも“Rapida106-4 SW2 SPC”は紙厚が変わってもそのための設定が不要なので、本文の薄紙もカバーなどの厚紙も気軽に印刷でき、汎用性がとても高い」と大塚取締役は語る。

 

 

驚異的な実生産性で繁忙期もクリア
従来比3倍の生産性で外注を8割削減

 

この「Rapida106-4 SW2 SPC」、すでに充分過ぎる程の生産性を発揮しているが、同社ではさらにいっそう生産性を高められるような機能を搭載している。それは「フライングジョブチェンジ」機構だ。この機構は、たとえば1/1色印刷を連続して行う場合、1胴目と3胴目で最初のジョブをしている間に空いている2胴目と4胴目に次のジョブの刷版をセットしておくと、刷了とともに2胴目と4胴目を使って次のジョブを開始する。ジョブ替え時も印刷機の駆動は止まらずフィーダーからの用紙供給だけを止めているだけなので、極めて迅速に次ジョブへ移ることができる。大塚取締役は「この“Rapida106-4 SW2 SPC”の実生産性はこれまでの倍以上で、年末・年度末の繁忙期も余裕をもって乗り越えられている。ただ、我々が目指しているのは、従来の3倍の生産性だ。“フライングジョブチェンジ”については、まだ社内の運用ノウハウの面でうまく活用できていないが、これを使いこなすことで従来比3倍という目標を達成したい」と語る。実際、これまでは社内で生産しきれなかった仕事やインキ乾燥にまつわる事故の恐れがある仕事は外注していたが、現在は「Rapida106-4 SW2 SPC」の高生産性とLED-UVによる速乾性によって外注費が8割以上削減されている上、逆に同業者からの受注も増加している。

 

ここまで同社が生産性にこだわるのには、明確な根拠と経営ビジョンがある。「新しい印刷機を導入したから、LED-UV印刷にしたからといって、印刷単価を上げられるわけではない。また、資材コストは上がるし、市場の価格競争も激しくなっている。そこで、生産性を高めて自社の足元をしっかりと固めることで、利益率向上と外注費削減につなげ、それを営業的な競争力(=価格設定の柔軟性)へとつなげていきたい。それが我々の当初からの狙いで、生産性を高めることによるさまざまな効果が出てくると、思い切った設備投資および油性インキと比べて高額となるインキを使っていても大きな実を採ることができると踏んでいる」と大塚取締役は、「Rapida106-4 SW2 SPC」による製造基盤強化を踏まえた将来展望を語った。

 

月刊 印刷界 2019年4月号掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

 

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