2019年03月08日

オフ輪印刷市場は需要よりも供給力の方が過剰な傾向にあることから、激しい競争状態にある。そのような市場環境だからこそサンケイ総合印刷㈱(本社・埼玉県戸田市喜沢南1の5の43、鶴田東洋彦社長)では高品質な製品の提供こそが営業効果につながると捉え、印刷の原点に立ち返った技術向上を図っている。その技術向上を図るために、ポイントを押さえた印刷機のメンテナンスを施すことで印刷時の湿し水量が絞れるようになり、その結果としてインキ濃度や網点再現性が向上しつつ、インキ乾燥温度の低下や刷り出し時の損紙低減も図れる、日本アグフア・ゲバルト㈱が提唱している現像レスCTPプレート「アズーラ」を用いた「アズーラ低温乾燥印刷」を採用している。

 

B縦半裁の連結機

B縦半裁の連結機

同社は新聞印刷などを主品目とする印刷会社と一般商業印刷を主品目とする印刷会社とが合併してできた会社で、新聞、フリーペーパー、書籍、教科書、ポスター、カレンダー、一般商業印刷物と、営業品目は広範にわたる。そのため印刷機の構成もバラエティに富み、オフ輪はA横全判4/4色機1台とB縦半裁のカラー機2セット/モノクロ機3セットを連結したモデル、枚葉印刷機についてはダブルデッカーの菊全判10色機、菊全判4色機、菊半裁4色機が稼働している。A横全判機については16ページ折り出し専用機で、カタログや雑誌などの仕事を、B縦半裁機については仕事の8~9割が業界紙・専門誌、フリーペーパーなどの新聞印刷用途が占め、そのほかに単機でチラシ印刷もしている。

 

同社が現像レスCTPプレート「アズーラ」を使い始めたのは平成26年の秋頃。ダブルデッカータイプの枚葉印刷機でファンアウトが発生して見当精度が低下していたことから、その対策として日本アグフア・ゲバルトが提唱していた湿し水量を絞る印刷技術「アズーラ速乾印刷」の技術習得を目指すとともに、プレートも「アズーラ」へと切り替えた。その速乾印刷を行うためには、まず印刷機を新台の状態へと近づけるべく、ローラーの親油・親水処理、ニップ調整、ゼロ点調整などの集中メンテナンスが最重要となる。これを枚葉印刷機3台すべてで行ったところ、湿し水量が格段に絞れ、インキ乾燥時間や刷り出しにかかる時間も短縮した。また、ファンアウトも改善し、印刷品質にも明らかな向上が見られたことから、この技術をオフ輪にも水平展開することを決めた。

 

川口工場長

川口工場長

オフ輪については平成26年11月から、まずはA横全判機でスタートを切った。まずは枚葉印刷機と同様に2~3日かけて集中メンテナンスを施し、印刷機の状態を新台時に近づけた。すると、同社では元々、湿し水量を絞ってインキ乾燥温度をなるべく下げる取り組みをしていたが、これまで以上に湿し水量が絞れるようになり、インキ乾燥温度も約10℃下げることができた。「A横全判機で印刷するものは商業印刷物なので、新聞印刷よりも要求品質が高い。湿し水量を絞って少ないインキ量でも濃度を出すという印刷の原点に立ち返ったこの取り組みにより、インキ本来の色が出て艶感や光沢が増し、しかも紙に火じわや波打ちもなくなり、印刷品質が大きく向上した。A横全判機の仕事は約8割が同業者からの仲間仕事が占めているので、印刷品質に向けられる視線は鋭いものがあるが、その一方で良い物に対しては正しく評価もしてもらえる。おかげで大手印刷会社の品質監査でも上位にランクされ、印刷現場の士気も上がっている」と同社の川口泰弘工場長はその効果を語っている。このような効果から、平成27年11月からはB縦半裁機でも「アズーラ低温乾燥印刷」を開始し、同社が使用する刷版は「アズーラ」に一本化された。

 

ただ、「アズーラ」の全面採用について不安な点が1つだけあったという。それは耐刷性だ。同社のオフ輪での平均ロットは10万部弱だが、定期物で20~30万部という仕事もある。「アズーラ」のメーカー推奨値は10万部だが、同社としては20~30万部を耐刷性の最低ラインと考えていた。「版替えを要するか否かというのは利益率に関わることなので、耐刷性は刷版の選定において重要な要素となる。印刷条件によって変わるが、結果的には通常のコート紙で55万部まで印刷でき、最低ラインをクリアするどころか期待値も超えていた。B縦半裁機では条件が悪い新聞用紙への印刷が主になり、これについては十数万部で版替えが必要となるもののおおむね問題はない」(川口工場長)

 

2ラインともアズーラ出力専用のCTPとなっている

2ラインともアズーラ出力専用のCTPとなっている

「アズーラ低温乾燥印刷」が同社にもたらしたものは、印刷品質の向上だけではない。損紙低減効果については、枚葉印刷機よりもオフ輪の方がその効果は大きいという。徹底したメンテナンスを施すことで印刷機の色出し反応が早くなることから損紙枚数も減り、これまでは1500~2000枚だったものが1000枚以下に、台数物で損紙が抑えられる仕事では500~600枚で正紙に入るケースも増えている。当然、損紙が少なければその分のインキも使わずに済み、かつ濃度が出るようになったことから同じ色でも少ない量で済むので、全体のインキ消費量も大きく削減された。そしてもちろん、インキ乾燥のためのガス代、生産効率向上にともなう稼働時間減少による電気代の削減にもつながっている。

 

同社では印刷品質向上を目指した取り組みの一環として、高精細XMスクリーニング「スブリマ」ですべての仕事の印刷を行っている。「とくにコート紙やマット紙の仕事では高精細印刷による違いが際立つので、お客さまから高い評価を頂けている。スブリマやアズーラ低温乾燥印刷をしたことによって当社のオフ輪印刷の品質は大きく向上した。たしかな印刷品質がお客さまからの信頼獲得につながって、定期案件の流出防止にもなり、さらには高品質印刷による実績がほかの仕事の発注先選定でも良い影響がもたらされてくるので、営業面でも多大な効果がある」と、高品質化がオフ輪市場の激しい競争に打ち克つ術の1つであることを川口工場長は表した。

 

日本印刷新聞 2019年2月25日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

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