2019年03月01日

枚葉オフセット印刷機でのLED-UV印刷技術の誕生から約10年が経ち、もはやLED-UV印刷は一般的なものになりつつある。そして今、オフ輪でのLED-UV印刷化が始まった。平成27年に錦明印刷㈱が世界で初めて商業オフ輪(A全判4/4色機)にLED-UV乾燥装置を後付け搭載して実運用に成功し、それ以降もオフ輪へのLED-UV乾燥装置の搭載例が続いている。オフ輪でのLED-UV印刷ではより高い乾燥性能が求められるが、その高い出力性能によって市場から高評価を受けているのがAMS Spectral UV社製の「PEAK LED-UVシステム」だ。その日本総代理店のAJC㈱の関衛社長に、オフ輪におけるLED-UV印刷の現状と将来性について話を聞いた。

 

 

――貴社の枚葉オフセット印刷機へのLED-UV乾燥装置の搭載実績についてお聞かせ下さい。

 すでに50台超の枚葉オフセット印刷機に、当社が提供するLED-UV乾燥装置を後付け搭載しています。搭載した印刷機は国産機/輸入機を問わず、あらゆるメーカーのもので実績があり、現在もすべての印刷機が稼働しています。

市場から多くの支持を頂けている背景は、しっかりとインキが硬化する照射エネルギーの大きさにあります。まず、「PEAK LED-UVシステム」は大型化したチップLEDで発光効率を高めています。また、一般的なLED-UVシステムは多方向からのUV照射を1点に集めて紙面に当てる焦点方式を採っていますが、「PEAK LED-UVシステム」ではUV光を反射鏡に照射してから紙面に当てる方式を採っています。これにより強力なUV照射ができ、かつ照射距離による減衰も小さく、しかも紙がバタついて照射距離がズレても焦点方式ではありませんのでしっかりとインキが硬化します。

 

関社長

関社長

――オフ輪でLED-UV印刷をすると印刷品質は変わるのですか?

 オフ輪の短所として、インキ乾燥で120℃前後の熱風ドライヤーをかけますので、その影響で紙の水分が飛ぶことで収縮が起きて波打ちや火じわが発生し、またインキの表面も焼けてしまうことが挙げられます。これは熱風ドライヤーをかける代償として避けられないものですが、LED-UV印刷ではこのような問題は起きません。印刷再現性も良く、紙に火じわや波打ちも起きませんので、枚葉オフセット印刷と同等の印刷物ができるようになります。また、枚葉オフセット印刷で油性からUV印刷へ移行する際、印刷品質や艶の差を気にするケースがありますが、オフ輪でLED-UV印刷をする場合は最終胴から2~3㍍後ろで照射しますのでインキが立ってしまう現象も起きにくくなります。

オフ輪のLED-UV印刷は、超薄紙での使用にも適しています。紙への熱影響がほぼないことに加え、UV印刷はインキが紙に浸透しないため裏抜けしないからです。また、その理由はわかってはいないのですけれども実運用において得られた結果として、ドライヤー通過後の静電気がLED-UV印刷では約6割も落ちています。オフ輪でシーター出しをする際に静電気の影響がないので、紙揃えがとても良く、次工程にも円滑に進みますし、紙質によって印刷速度を落とす必要もありません。

 

――LED-UV印刷をする際の印刷速度についてはいかがですか?

 「PEAK LED-UVシステム」にはXP-3、XP-5、XP-7、XP-9、XP-11というラインナップがあり、数字が大きくなるにしたがって高出力になります。現在、オフ輪で搭載されているものはいずれもXP-9で、これを表裏1灯ずつ搭載します。A横全判の4/4色機で毎分600回転で稼働しており、しっかりとインキは乾燥しています。テスト印刷では毎分700回転でも問題ありませんでした。

今年中にXP-11をオフ輪に搭載する計画がありますが、毎分800回転超でも問題なく乾燥しますので、最新のオフ輪であっても本機の生産能力をフルに活かしてLED-UV印刷ができるようになります。

 

――オフ輪でのLED-UV印刷におけるコスト面での考察についてお聞かせ下さい。

 LED-UV用インキは安くなる傾向にありますが、もちろん従来オフ輪インキと比較すると高額です。一方で、LED-UV印刷化すると乾燥脱臭装置や高温になった紙面を冷ます冷却ローラーが不要になるほか、それにともなうガス代・電気代なども不要となります。それに加えて大きいのは、刷り出し損紙が大幅に削減されることです。これまではドライヤー、折り機、シーターを通過してから印刷チェックをしますが、LED-UV印刷ではLED-UV部を過ぎた段階でチェックできるからです。

さらに、印刷中になんらかのトラブルが起こりますと、印刷機を止めて、ドライヤーのふたを開けて熱を逃がしてから対応します。そして印刷を再開する時には、ドライヤーのふたを閉めて温度が再上昇するのを待ち、それからふたたび乾きや色などのチェックをしなければなりません。LED-UV印刷ではそのようなこともありませんので、生産効率も高くなります。これらの点を総合的に勘案しますと、オフ輪のLED-UV印刷は経済的にすぐれていると判断することもできます。

 

――それ以外にオフ輪でLED-UV印刷をするメリットがあればお聞かせ下さい。

 先程も触れましたが、枚葉オフセット印刷と同等の印刷品質が実現できます。すでにオフ輪でLED-UV印刷をされている会社では、枚葉オフセット印刷機で刷っていた定期物の仕事をオフ輪でのLED-UV印刷に変えてみたところ、社内の技術者を含めて誰も印刷方式を変更したことに気付かなかったということです。それほど高い印刷品質が実現できるということは、これまでは品質面の問題から枚葉オフセット印刷でやっていた仕事をオフ輪に移行できますので、オフ輪の稼働率向上が図れます。しかもオフ輪の最大の強みである高速での両面印刷、加工までのワンパス処理ができますので、枚葉オフセット印刷で長時間かけていた大ロット物もできるようになります。また、損紙が少なく切り替えもスムーズですので、これまでよりロットの小さな仕事にも対応できるようになります。

オフ輪をLED-UV化すれば、チラシ専用・書籍専用といったように用途を決めつけず、紙サイズが合う仕事であればどのような仕事でもできるようになります。また、付け合わせ(ギャンギング)印刷をうまく活用して1ジョブあたりの刷り部数を増やせば、さらに多くの用途が生まれるでしょう。枚葉オフセット印刷でしかできなかった仕事をオフ輪でもできるようになるLED-UV化は、オフ輪復権への切り札となります。

 

――オフ輪へのLED-UV乾燥装置の今年の納入予定はいかがですか。

 XP-9については後付けで2台、新台で3台、XP-11も新台で1台が予定されています。

これらの納入機では、IGAS2018で発表しました「インテリLED」という、LED-UV乾燥装置では世界初となるIoT機能が搭載されています。この「インテリLED」では、LED-UVとコントローラーの間にIoTボックスがあります。そこではLED-UVの稼働状況のほか、キャビネットやLED-UVの温度情報、冷却水の品質検知、硬化品質管理、工場の温湿度といったデータが収集されます。これらのデータは運転停止につながるトラブルを事前に防止するために収集されており、トラブルの予兆を識別すると警報を発します。そうすることでトラブルの要因を取り除けますので運転停止を回避することができ、安心して印刷作業に打ち込めて生産性を高めることができます。

 

日本印刷新聞 2019年2月25日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

 

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