2018年10月22日

「このままでは製本会社がなくなります!」
 
――全日本製本工業組合連合会(田中真文会長、全製工連)は、10月16日、製本会館会議室で記者会見を開き、旧態依然の取引慣行に起因する低価格や過剰品質などが製本会社の経営を圧迫していることから、取引先事業者に対して、製本業界の窮状に理解を求めるとともに、事業の継続、製品の安定供給を可能にするため、取引慣行の改善と適正な取引条件について配慮するよう訴えていくことを表明した。全製工連では11月の「下請取引適正化推進月間」に合わせ、主要業界紙に意見広告を出稿するのをはじめ、要望書「製本業界の窮状に対するご理解のお願い」を作成し組合ホームページに掲載するほか、組合員の任意の判断で取引先に配布していく。
 

田中真文(左)と本間敏弘

田中真文会長(左)と本間敏弘専務


 

最盛期に比べ7割減の728社に

 

記者会見には、田中会長と本間敏弘副会長兼専務理事が出席。田中会長が今回の趣旨について次のように説明した。
 

「全製工連の組合員数は現在728社で、最盛期の昭和50年には2352社だったので7割減少している。これだけ製本専業者が減ってくると印刷会社・出版会社も仕事の発注先がなくて困っているという現状が散見される。製本業界の単価は30年来変わらず、むしろ20年ぐらい前から下がっているのではないか。製本原価の約半分は人件費が占めており、5割を超えると経営がかなり厳しいと言われる。平成元年の東京都の最低賃金が525円だったのが、平成30年には985円と約9割上昇するなど大変厳しい経営環境なので給与も多く払えず人手不足に陥っており、後継者不在、設備も老朽化している。得意先業界も同様でとくに印刷会社同士の価格競争に巻き込まれている。さらに過剰品質も大きな問題になっている。そこで、製本業に係る全般の経営環境が悪化している現状をご理解いただきたい。その上で、製本業界として今後も事業を継続して印刷産業の発展に貢献したいという思いから意見広告を出稿することを決めた。もし、製本会社がなくなったら、フィニッシングはすべて印刷会社が内製化しなければならず、総合印刷会社だとたまにしか使わない製本設備も揃えなければならず採算が取れない。それよりもわれわれ専業者をご利用いただいた方が、印刷会社も出版社も収益が上がると確信している。得意先各社の存続のためにも、製本専業者を生き残らせていただきたい。決して値上げの要求ではないということをご理解いただきたい」
 

専業者ならではのメリットを訴え

 

このあと、本間副会長兼専務理事が意見広告の文書を朗読した。

 
意見広告は全製工連と会員11組合の連名で出稿。「このままでは、製本会社がなくなります!組合員数の最盛期2352社(昭和50年)が現在728社と約70%減少しています」とのタイトルで始まり、直面している喫緊の課題として、旧態依然の取引慣行に起因する低価格と過剰品質とし、さらに製本業の収益の低下を招いている要因として短納期化、物流費の高騰、人手不足による賃金相違の上昇を上げ、「個々の企業の努力だけでは到底追い付けない危機的な状況にあります」と窮状を訴えている。さらにアンケート調査で、契約書や発注書の不在、後指値、支払の先延ばし、過剰なクレームによる返品・やり直しや全数検品、急な仕様の変更などが日常的にまかり通っている実態を示し、「早急に解決しなければ、個々の会社経営が成り立たないだけでなく、製本業という業種そのものが存続できなくなる」「すでに製本・加工会社が不足しており、お客様と生活者の皆様にご迷惑をお掛けする事態となりかねません」と訴え、適正な取引関係の構築を求めている。
 

今後も製本会社を利用するメリットとして「1つ1つの仕事がオーダーメイドの性格を持つ製本・加工にはプロの専業者でなければ対応しきれない難しさがあります。長年にわたりノウハウを積み上げてきた私たち専業者をご利用いただくことが、お客様の業務効率の向上と品質の担保にもつながる。さらに専業者の視点からアドバイスさせていただくことで、より正確、かつ付加価値の高い製品を生むことにもなる」と強調している。
 
意見広告には、全製工連の今後の取り組みについても「常に最適な製本・加工の技術とサービスをご利用できるように、全製工連としても、さまざまな仕事に応じた組合員各社の得意分野などの情報をしっかりと発信し、良い関係づくりと仕組みづくりに努めていきたい」と言及している。
 

全製工連では、田中会長が今年度掲げた取引慣行の改善活動の一環として、年末および年度末の繁忙期も見据え、「下請取引適正化推進月間」の11月上旬に発行する主要業界紙3紙に意見広告を出稿するほか、意見広告の内容をA4・1枚に要約した要望書も作成してホームページに掲載。組合員は任意の判断でダウンロードして得意先に配布して取引慣行の改善と適正な取引条件の構築を訴えていく。
 

要望書「製本業界の窮状に対するご理解のお願い」

 
さて、ご承知のとおり、現在製本業を取り巻く経営環境は日に日に厳しさを増しています。紙媒体の需要減少に加え、従来からの取引慣行に起因する価格と品質に関わる問題、さらに物流費の高騰、人手不足による賃金相場の上昇も製本業の利益の低下を招いており、自助努力だけでは解決できない困難な状況に置かれています。
 
組合員企業へのアンケート調査からは、契約書や発注書の不在、支払いの遅延、過大な品質要求、急な仕様変更などが経営を大きく圧迫している実態が明らかとなりました。個々の会社経営が成り立たないだけでなく、製本業そのものが存続の危機に直面しています。
 
製品を安定供給していくためには、従業員の雇用と育成、設備の更新、作業環境の整備などが欠かせず、そのための原資が必要です。しかし、実際には、最低限の原資さえ確保することが難しいのが実情です。
 
廃業の増加により、全日本製本工業組合連合会の組合員数は最盛期に比べて7割も減少しました。すでに製本・加工会社が不足しており、お客様にご迷惑をお掛けする事態となりかねません。製本・加工は複雑な工程とノウハウを伴うものであり、繁閑の調整としても私たち専業者をご利用いただくことが、お客様の業務効率の向上と品質の担保にもつながると考えます。
 
全日本製本工業組合連合会、そして弊社といたしましても、仕事に関する有益な情報やご提案をしっかりと発信し、お互いの利益につながるより良い関係づくりに努めていきたいと考えています。
 
お取引先様におかれましては、製本業界の窮状についてご理解いただき、製品の安定供給を可能にする適正な取引条件について特段のご配慮をいただきますよう、切にお願い申し上げます。
 
 
(「日本印刷新聞」2018年10月22日付)
 
 
「日本印刷新聞」2018年11月5日付掲載意見広告
 
 

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