2018年08月14日

AMS Spectral UV社(以下、AMS社)の日本総代理店であるAJC㈱(本社・東京都台東区、関衛社長)がIGAS2018会期中の7月30日、東京ビッグサイト会議棟で「商業印刷とパッケージングのためのLED-UVの進歩」と題したセミナーを開講した。

多くの聴講者が集まったこのセミナーは、▽AMS社でCEOを務めるSteve Metcalf氏が、商業印刷およびパッケージ印刷における枚葉オフセット印刷機へのLED-UV乾燥装置の後付け搭載事例やその方法などについて解説するセミナー、▽平成27年に世界で初めて商業オフ輪にLED-UV乾燥装置を後付け搭載して実運用をしている、錦明印刷㈱の塚田司郎社長による事例紹介--の2部構成で行われた。

 

関社長

関社長

会の冒頭、あいさつに立った同社の関社長は「LED-UV装置が枚葉オフセット印刷機に搭載され始めた当初、出力がまだ小さかったので、これまでのUVランプを使った分野で活用することは難しかった。そこで我々は、十分な出力があるLED-UV装置を世界中で探し、AMS社と一緒にLED-UV装置を完成させて提供を始めた。国内では6年程前から提供を始めたが、それからどんどんと出力の高い仕様が開発され、現在はUVランプ2~3灯分にもなる強力なLED-UV装置もある。印刷業界が厳しい状況にある今、コスト面を含めたなんらかの形で当社が提供するLED-UV装置が役に立てると思い、このセミナーを開講した。枚葉オフセット印刷機での商業印刷やパッケージ印刷、さらにはオフ輪でも活用できるので、ぜひセミナーをヒントにして次世代の印刷環境について考えてもらいたい」と述べた。

 

 

セミナーはまず、AMS社でCEOを務めるSteve Metcalf氏の講演が行われた。

その大要は次のとおり。

 

Metcalf CEO

Metcalf CEO

当社はLED-UV装置に関する印刷業界のリーダー的存在で、現在はボールドウィン社グループの一員となっている。ボールドウィン社の財務支援を受けて研究開発に力を注ぎ、さらなる発展に向けて活動をしている。AJCとは10年程前からの関係で、どのようにして拡販するかを話し合い、先進的なユーザーの協力を得て今日にいたる。

当社ではこれまで、全世界で1000台超のLED-UV装置を納入している。もっとも多い納入先は欧州で、北米、日本と続く。菊全判機やそれ以上の判サイズの印刷機にも対応する1㍍超の長さの製品も取り揃えており、日本製/海外製を問わずあらゆるメーカー/機種の既設印刷機に後付け搭載できるのが特徴となっている。また、枚葉オフセット印刷機だけではなく、オフ輪、フレキソ印刷機、デジタル印刷機、グラビア輪転機などにも後付け搭載することができる。

ここからはLED-UV印刷の特徴を紹介する。LED-UV装置の登場によって印刷の世界を変えたが、それと同時にインキやコーティング、粘着剤の世界も変えている。LED-UV装置はUVランプと比べ、▽とても強力な硬化性がある、▽印刷機の最高速で実稼働ができる、▽発光効率が良いので低エネルギー、▽被印刷体に熱が加わらない、▽UVランプと比べて出力が一定、▽長寿命、▽オゾンが出ない、▽水銀灯を使わない--といった長所があり、かつすべての既設機に迅速で簡単に取り付けることができる。

このような長所があるLED-UV装置こそが、印刷業界のあり方を一変させる革新の糸口になる。印刷時のコスれや汚れ、パウダーにまつわるトラブルが解決され、同時に印刷物に加飾効果も付与できる。したがって商業印刷にとても適しており、新しい技術を付加するとパッケージ印刷分野でも威力を発揮する。実際、これまでにLED-UV装置を後付け搭載したユーザーが油性印刷やUVランプへと戻った例はなく、むしろほかの印刷機にもLED―UV装置を導入するケースがほとんどとなっている。

 

枚葉オフセット印刷でLED-UV装置を搭載すると、具体的にどのようなメリットが生まれるのか紹介したい。まず、即時乾燥するので印刷機の排紙部には乾燥済みの印刷物が出てくる。したがってパウダーを使う必要がなく、ボタ落ち、汚れなどの印刷品質上の問題が解消される。また、UVランプと比べて臭いが発生しない、どんな紙にでも色が鮮やかに発色する、即日出荷も可能になるといったことも挙げられる。さらに、ニスコーティング処理によって、高付加価値な部分ニスや部分マット加工、疑似エンボス加工といった加飾加工もできるほか、高付加価値なフォイル紙やプラスチックといったインキを吸収しにくい材料への印刷も可能となる。そして、LED-UV装置の導入により、印刷工程だけでなくポストプレス工程の生産性も大幅に上がる。それは紙が伸縮や変形しないからで、そのため後加工がとても楽になる。

 

続いて、オフ輪にLED-UV装置を搭載するメリットについて話していく。私の講演の後に錦明印刷の塚田社長からも講演して頂くのでその詳細についてここでは語らないが、1つだけ強調しておきたいのは、錦明印刷の取り組みはこの分野で世界の先頭を切っているということだ。錦明印刷ではゴス・インターナショナル製のM600という機種にLED-UV装置を搭載し、上手に運用されている。

オフ輪でLED-UV印刷をするということは、ガスを使ったドライヤー装置でインキ乾燥させるのではなく、そのドライヤー装置を取り外してLED-UV装置を搭載する。もちろん、ガスによって紙面が高温になることもないので冷却ローラーも必要なくなる。オフ輪でLED-UV印刷をすることによる最大のメリットは、ガスドライヤーによる高温乾燥工程がないので火じわや波打ち、紙の伸縮が起こらないので、印刷品質が枚葉オフセット印刷機に匹敵するレベルに達することだ。そのほかにも、エネルギー効率の良さ、ガスドライヤーを使用しないことにより電気代が約半分になること、ガスドライヤーと比較してメンテナンスコストも低いこと、プラスチックや合成樹脂といった熱に弱い被印刷体も使用できること、インキのマイレージも伸びること、機械設置面積が減少すること、前準備での損紙が減少するといったメリットもある。もちろん、枚葉オフセット印刷機の時にも紹介したが、紙が伸縮しないので製本工程も楽になるので、LED-UV印刷化した多くのユーザーは製本加工機をさらに充実させて生産性を上げる例が多い。

このように、LED-UV装置は印刷機の価値を向上してくれるものだ。おうおうにして印刷オペレーターはミスや事故による損害を出したくないので、必要以上に低速で慎重に運転しがちだ。しかし、LED-UV印刷化すると品質に関するトラブルの心配がなくなるので、印刷機を最高速で回すという現象が世界各地で見られる。LED-UV装置を搭載することで印刷オペレーターは操作に自信を持ち、その自信が高速稼働につながり、その結果として生産量が増えるとともにトラブルや事故も減少して利益が上がる。LED-UV装置を導入することでこのような好循環が生まれ、儲かる方程式ができる。

 

XP-I

XP-I

次に、当社が将来に向けて開発した、LED-UVの未来とも言える新製品を紹介したい。まずは広波長域LED-UV装置だ。これまでのLED-UV装置は1つの波長だけを強力に発する単波長だったが、これは3つのピーク波長を発するものとなる。これにより、LED-UV専用インキではなく従来のUVランプ用のUVインキ/ニスを使用しても硬化させられるようになるので、これまで通りのインキや消耗品が使え、特色インキを作り直す必要もない。もちろん、LED-UVの特徴であるエネルギー消費量の軽減、被印刷体への熱影響の除去はそのままなので、パッケージ印刷に新たな潮流が生まれるだろう。

また、ボールドウィン社ではIoTに関する通信インフラ設備を持っているのでこれを利用して、世界初となる「インテリLED」というIoTの仕組みを構築し、IGAS2018のAJCブースでもデモンストレーションをして紹介している。この「インテリLED」は、LED-UVの照射部とコントローラーとの間にIoTボックスを入れたものだ。このIoTボックスでは、LED-UVの稼働状況のほか、キャビネットやLED-UVの温度情報、冷却水の品質検知、硬化品質管理、工場の温湿度といった周辺条件といったデータを毎秒ごとに取り込んでいる。これらのデータを取り込んでいるのは、運転停止につながるような不測のトラブルを事前に防止するため。トラブルの予兆を識別するとスマート警報を発する仕組みになっており、それに応じてしかるべき処置をしてトラブルを取り除き、運転停止を回避することができる。さらに、「インテリLED」によって得た情報データを収集すると各々の仕事についてうまくできた硬化の条件、温湿度や機械速度が記録されるので、その蓄積したデータをAIで処理することで、初めての仕事でもどのような設定をすればうまく印刷できるかを示すことができるようになる。

この「インテリLED」を搭載したLED-UV装置の新世代モデルが「XP-I(アイ)」となる。「XP-I」で採用している「SC-Xインテリジェントコントロール」という制御システムは、24時間365日にわたる運転が停止することを避けるため、機密密閉されて紙粉やインキミストから保護されている。「NSシリーズ」LEDチップは、耐水性なので結露や漏れにも強く、また周囲の機械の影響で緊急に高電圧が流れてきてLEDチップが壊れてしまうことが稀に起こるが、これを回避するような設計も採り入れている。生産性向上のために寿命を3万時間以上に延長しているほか、チップの交換も簡単にできるようにした。

 

 

セミナーの第2部では、平成27年に世界で初めて商業オフ輪にLED-UV乾燥装置を後付け搭載した錦明印刷の塚田社長が、その狙いと効果について語った。

その大要は次のとおり。

 

塚田社長

塚田社長

当社では、平成24年に枚葉オフセット印刷機に、そして平成27年にはオフ輪に、AMS社製のLED-UV装置を後付け搭載している。ただ、LED-UV印刷技術が発表された頃に、その印刷物を見た私の感想は「即乾することはたしかだが、乾くことと引き換えに印刷品質が落ちるのではビジネスにならない」という程度だった。しかしその後、ハードや材料面などの進化があったので、まず枚葉オフセット印刷機でテストをしてみた。当社は品質要求度の高い顧客が多いので、普通にLED-UV印刷をするとインキが立ってしまうことが予測されるので、レベリングをする時間が稼げるロングデリバリーが付いた5色コーター機でやってみた。すると、品質の変化は感じられず、その刷り出しをなにも知らない担当営業スタッフに見せたところ、毎月の定期物にも関わらず誰一人として品質の違い、印刷方式の変更に気付かなかったので、これならば大丈夫だと確信した。

印刷現場では、コスレや裏付きの問題がなくなった上、乾きが悪い紙や平滑性が紙に油性インキで印刷するとパウダーを多く撒きつつこまめに板取りしなければならないが、その必要がなくなった。印刷速度についても、毎時8000枚程度が平均だったが、LED-UV装置を搭載してからはロットが長いものだと機械最高速の毎時1万3000枚で回している。LED-UV装置を搭載したことで、オペレーターが不安から解放されて自信がつき、また板取りや印刷物に風入れをする手間もなくなった。さらに、後加工でもすぐに折ることができる。現代は光の速さで情報や文字が飛び交う時代なので、印刷メディアだけがのんびりと乾燥待ちをしていては勝ち抜けないと思う。

 

話をオフ輪に移したい。一般的に中小規模の印刷会社がオフ輪を保有する場合、自社の仕事だけではオフ輪の生産能力分を埋めることが難しいので、機械を遊ばせないように同業者からの仕事を受ける。しかし、紙メディアの減少傾向によって同業者からの仕事も減っていたので、正直な話をするとオフ輪をやめることも考えていた。ただ、枚葉オフセット印刷機にLED-UV装置を搭載してからの3年間、そのパフォーマンスを見ていて、もしオフ輪にもこれが付けられれば可能性があると思い、テストをした。

当社のオフ輪は、主にチラシを印刷するB列のものではなく、書籍などを主とするA列のもの。オフ輪はドライヤー装置でガスを使った熱風乾燥をしてインキを乾燥させるのだが、その熱によって紙が波打つ。近年では、文庫本であっても波打つことに対して作家からNGが出るようで、大ロットのものでも枚葉オフセット印刷機で刷ることも珍しくない。そこで、オフ輪にLED-UV装置を搭載できれば、またオフ輪で印刷できるようになると考えた。

 

テストではA全判4/4色機「M600」の最終胴後の紙面の上下に、AMS社製のLED-UV装置「XP-9」を1ユニットずつ設置して印刷をした。その結果は期待通りで、紙の波打ちや火じわがなく、枚葉オフセット印刷と同品質となり、しかもヒートセットによる紙の伸縮やダメージがないので後加工適性も増した。これならば、枚葉オフセット印刷でしかできないと世の中で思われている仕事でもできると踏んだ。

また、損紙もこれまでの半分程に減少するので、台数物の仕事ならば2000部でもこの機械でできるし、カタログなどでも7~8000部ならばこの機械でやっている。ロットの下限ラインも下がり、枚葉オフセット印刷機のような汎用性もあるので、大ロットの4色封筒といった仕事もこの機械でできる。一般論で言うところのオフ輪の仕事は限られているが、この機械ならばマッチする仕事が社内に多くあるので、今となっては同業者の仕事を入れなくても社内の仕事だけでこの機械のスケジュールが埋まってしまう。

電気使用量については約4割減となり、工場内に熱風も出なくなったのでエアコンも弱目の設定で済み、印刷オペレーターの作業環境も改善された。脱臭装置も不要となり、機械サイズもコンパクトになってきれいになり、LED-UV化したことは成功だった。

 

 

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