2018年08月15日

品質追求を基本理念としてオフ輪印刷の技術開発に努めている栄進堂印刷㈱(本社・京都府京都市南区久世大藪町426、西藤栄祉社長)では平成28年5月、その一環として印刷時の湿し水量を絞る取り組みを始めた。この取り組みは、▽少ないインキ量で濃度を出す、▽ドライヤーの設定温度を下げる、▽火じわや波打ちの発生を抑制する――ことを目指したものだ。それを実現するために同社では、砂目構造が浅くて均一なことから湿し水量を絞るのに適しているアグフア社製の現像レスCTPプレート「アズーラ」を採用した。また「アズーラ」の採用と同時に、日本アグフア・ゲバルト㈱が提案する印刷機のメンテナンス手法も採り入れたことで湿し水量を絞った印刷を実現して品質追求のステップをさらに一段のぼるとともに、その技術力を背景にした新たな営業提案力も身に着けた。

 

オフ輪での耐刷力の問題もクリア

 

西藤社長

西藤社長

昭和28年に創業した同社が最初のオフ輪を導入したのは昭和52年。オフ輪導入当初から現在まで、チラシの印刷を主として営業しており、そのほかにカタログや学参物などのページ物の印刷も行う。現在の印刷機の構成は、B2判4/4色機が1台とB3判4/4色機が3台。また平成27年からは、午前中にデータが入稿されれば当日の夕方に発送をする「特急印刷」という印刷通販事業も開始し、営業の幅を広げている。

 

同社では現像レスCTPプレートについての認識はあったものの、そのメリットやデメリットについてしっかりと把握をしていたわけではなかったという。現像レスCTPプレートユーザーではない周囲の印刷会社での、「環境には良いが、耐刷力に難があってオフ輪には適さない」という評判に沿ったイメージを抱いていた。ただ、同社はオフ輪としては小ロットの仕事を得意としており、平均ロットはB2機で約6万通し、B3機で約2万3000通しなので、さほど耐刷力を要さない。「これまで使用していたプレートは、技術的な面白味がないという話を印刷現場から聞いていた。そんな時に“アズーラ”を紹介されるとともに、湿し水量を絞った低温乾燥印刷も提案されて興味を持った。当社はロットが短い仕事ばかりなので、仮に耐刷力がなかったとしてもあまり問題はない。印刷現場にも意見を求めたところ、メリットの方が大きそうなのでテストをしてみることにした」(同社・西藤社長)

 

ロットの平均値が小さかったとしても、実際の仕事における最大値で対応できなければ運用する上では問題となる。そこで同社では、最低でも30万通しに対応できることを採用のハードルに設定したが、それは問題なく超えていった。「全体としては100万通し以上の大ロットの仕事もあるが、現在のチラシ印刷の傾向として数千通しごとに一部差し換えによる刷版交換をしなければならない。したがって、数十万通しを一気に刷るケースはほぼない。差し替え部がない共通版については予備版を使うこともあるが、評判で聞いていたような耐刷力の低さは一切感じないし、運用上で困ることもない」と西藤社長は評価する。

 

湿し水量は簡単に絞れ
インキ使用量は4.6%減

 

前田ゼネラルマネージャー

前田ゼネラルマネージャー

耐刷力についてはクリアしたので、次は主目的となる湿し水量を絞る作業となる。刷版を「アズーラ」に替えたことで、湿し水量は簡単に絞れた。しかしながらその反作用として、エッジ部に汚れが出たりピッキングが起こるケースがあった。「湿し水量を絞ったことでローラーがすぐに乾燥し、ピッキングが発生した。また、当社の仕事のほとんどを占めるチラシは、印刷機から出てきたものを後加工せずに出荷するので、エッジ部の汚れについても対処しなければならない。そこで、日本アグフア・ゲバルトの技術指導や立ち上げのサポートをしてくれる面々と相談し、インキローラーのメンテナンス方法や湿し水関連ローラーの清掃方法、ニップ圧、エッチ液の濃度などを変更し、インキメーカーとも協議してインキの改良にも取り組んだ。さらに、インキローラーの洗浄頻度も週当たり1回増やした。刷版を替え、しかもより高い印刷技術と品質追求をしているので、当然ながら印刷機の使い方も変えなければならないが、スムーズに移行できるような指導・提案をしてもらえた」と、同社製造部の前田宏二ゼネラルマネージャーは語っている。

 

そして平成28年11月には、それまでは部分採用だった「アズーラ」について全面的に使用するとともに、2ラインあるCTPのうちの1つをアグフア社製の四六全判サーマルCTP「アバロンN8」へと切り替えた。その平成28年11月からの1年間で、仕事量はほぼ変わらないにも関わらず、湿し水量を絞ったことによってインキの濃度が上がることから同社のインキ使用量は前年比で4.6%減に。また、現像液購入費や現像廃液処理費がなくなったことで刷版部門のコストも4.9%減となった。

 

低温乾燥印刷で火じわの問題も解消

 

CTPは2ラインともアズーラの出力専用となっている

CTPは2ラインともアズーラの出力専用となっている

そしてドライヤーの乾燥温度については、紙面温度の設定で3~5℃下げている。「初めての取り引きとなる印刷会社が当社の工場を見学に来た際、その会社よりも紙面温度の設定が10℃も低いと驚いていたので、この取り組みが本当にうまくいったことをオペレーターも実感していた。また低温で乾燥するので、火じわが少ないという点も高く評価してもらえた」と西藤社長は湿し水量を絞った低温乾燥印刷への取り組みの手応えを表す。さらに、低温乾燥印刷による効果は後加工工程にも波及している。これまで52.3㌘/平方㍍の紙でB4シート出ししたものをB5に折るにあたり、火じわやカールのせいでたびたび機械が止まってしまっていたのだが、それがなくなったという。

 

チラシ印刷市場のコストダウン圧力は引き続き強いものがあり、同社も例外ではない。そこで同社ではこの技術をベースにして、生産性を落とさずにさらに薄い紙(45.2㌘/平方㍍)に印刷してシートカットすることに挑戦。この生産技術を確立したことにより、顧客からのコストダウン要請に対しても逆提案ができるようになった。さらに最近は、新聞購読者数の減少から新聞折り込みが減少し、折り加工をしてポスティング業者納めをする分量が増加している。そこで今年4月からは、B3機に㈱ミヤコシ製の「インラインウェブフィニッシングシステム」を連結させて短納期化を図る方針。湿し水量を絞った低温乾燥印刷による品質追求や薄紙印刷対応、そして短納期化や印刷通販事業などを駆使し、価格交渉以外の方法で仕事を獲得する武器を身に着けている。

 

日本印刷新聞 2018年2月26日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

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