2018年08月15日

日本アグフア・ゲバルト㈱では平成28年から、印刷会社と一体になって工場・現場を改善することで埋もれている利益を創出して経営を改革するコンサルタントプログラム「A-SAP(AGFA System And Printing:エイザップ)」を展開している。このプログラムでは、印刷工場内の無駄を抽出して削いでいき、洗練された工場・ワークフローにすることで利益を創出して経営改革へと導くことを狙っている。その改革については、自社提供製品の範囲だけにとどまらず、印刷工程や複数拠点を統合した次世代ワークフローの構築、社員の士気向上にまで及ぶ。

惠友印刷㈱(本社・東京都板橋区大原町46の2、萬上孝平社長)でもこのA-SAPによって企業風土や事業環境の改革を遂げた。その効果について、同社の萬上社長、大澤俊雄取締役、藤本恵課長代理に話を聞いた。

 

 

萬上社長

萬上社長

――まず、貴社の概要についてお聞かせ下さい。

萬上 平成7年の創業から学習参考書をはじめとした出版印刷を主品目にしており、四六全判のダイレクト製版機という珍しい機械を持っていたこともあって、同業者からの仕事を数多く受注していました。それまではモノクロ印刷ばかりしていましたが、平成20年に菊全判4色機を導入して以降、カラー印刷を強化し、現在は菊全判4色機(油性機とH-UV機が各1台)、菊全判両面兼用2色機2台、四六全判1/1色機の5台14胴が稼働しています。

拠点体制は、本社工場では刷版出力から印刷以降の工程を行い、東京・文京の白山事業所で営業・デザイン制作・プリプレス部門をしています。

 

――貴社とアグフアとの最初の接点についてお聞かせ下さい。

萬上 平成23年2月に、これまで使用していた刷版から現像レスCTPプレート「アズーラTS」に切り替えたことが最初の接点でした。元々、現像レスプレートに強い興味があったわけではなかったのですが、環境面、現像液購入や現像廃液処理のコスト面、手間や使い勝手の面などでメリットが出ることは認識しており、当社の諸条件と「アズーラTS」が合っていたので切り替えました。

当社は少部数印刷を苦にしておらず、平均ロットは2000~3000通し、少ない場合は300通しという仕事もあります。「アズーラ」の導入前、耐刷性について懸念がありましたがなにも問題はなく、テスト印刷をしても安定していたのでスムーズに切り替えられました。それと同時に、CTPの「アバロンN8」、プリプレスワークフローシステム「アポジー7」も導入しています。

当初は現像有り版と併用していましたが、導入直後に起こった東日本大震災の際、アグフアのサービススタッフがその日の夜にすぐに駆けつけてくれ、また水道が止まっても「アズーラ」は出力できるので、仕事が滞りませんでした。このような対応の良さもあり、間もなく刷版を「アズーラTS」に一本化しました。

 

大澤取締役

大澤取締役

――現像レスプレート以外で、その当時にアグフアから提案されたことはありますか。

大澤 プリプレスワークフローシステム「アポジー7」の機能の1つ、自動面付けソフト「アポジーインポーズ」の活用による多能工化があります。「アポジーインポーズ」の採用によってアナログ製版部門のオペレーターにもその役割を担ってもらえるようになり、人材の多能工化とデジタルシフトが果たせました。

藤本 それまでは専任のオペレーターが知識と経験をベースに、多くのテンプレートを作成・管理しながら面付けをしていましたが、「アポジーインポーズ」は、印刷製品の仕上がり仕様や印刷機の情報といった印刷条件を入力すると、あらかじめ設定したルールに基づいて最適な面付けをその都度計算し、瞬時に自動生成してくれます。ボタン操作だけで自動的に面付けをしてくれるので使いやすく、アナログ部門のスタッフも容易に移行できました。

 

藤本課長代理

藤本課長代理

――その頃、ほかに課題はありましたか。

藤本 「アポジー7」のほかに2社のワークフローシステムが混在し、複数のプロファイルを当てるなど、複雑な運用のせいで混乱していました。そこでプルーファーの色調整の際、アグフアのスタッフに立ち会ってもらったところ、問題点を突き止めて工場全体の最適化提案をしてくれました。ワークフロー全体の流れを掴んだ上でカラーマネジメント環境の構築サポートをしてくれ、運用面の無駄を省けてシンプルな形が構築できました。

大澤 カラーマネジメント環境を構築するにあたり、なにから手をつけてどのような道筋を辿れば良いのかもわかりませんでした。そこでほかの機械メーカーに相談してみると、そのメーカーの機械の範囲内のことしか対応してもらえませんでした。A-SAPでは、他社製品との連携が必要ならばアグフアのスタッフも立ち会ってくれて、自社のシステムだけではなく俯瞰の立場から道筋を示してくれました。

 

――貴社ではプリプレス部門以外にもコンサルティングを受けたそうですが。

萬上 印刷機のローラーのグレーズ除去法や、印刷機の状態を高レベルに保つ取り組みとして速乾印刷を提案してくれました。当社は印刷機の判種が豊富で、印刷機個別の事情に応じた現場依存型でした。そこに、一本の筋が通った平準化の技術を教えてもらいました。

大澤 カラーマネジメントをするにあたり、印刷機の安定化・標準化は必須となりますが、それまでは印刷機に対するオペレーターのオーナーシップが強い傾向がありました。したがって、当初は個々の印刷機の事情ややり方を主張・優先しようと、コンサルティングに対して反発も起こりました。しかし、全員がこの取り組みに参加・継続しなければ目的は達成できません。その意識改革についてもA-SAPを通して力を注いでくれました。オペレーターの意識が変わった結果、つねに印刷機を良い状態にしようとしますし、そうすると網点再現や印刷品質も良くなります。

 

アズーラを出力しているCTPライン

アズーラを出力しているCTPライン

――貴社では平成29年6月にH-UV印刷機も導入しています。

大澤 短納期がどんどん進んでいるので、それに対応できるようにUV印刷機を導入しました。H-UV印刷での「アズーラ」の実績はほとんどないと印刷機メーカー側から言われましたが、これまでのサポート体制への信頼もあって「アズーラ」で運用すると決めていました。心配していた耐刷性について、当社の仕事内容や油性印刷機と振り分けする上での採算分岐点を踏まえ、1万枚を最低ラインに設定してテストしましたが、それは軽々と超えました。

H-UV機と油性機のカラーマネジメントについてもアグフアのスタッフにサポートしてもらい、ワークフローを変えることなく、油性とH-UVとでCTPの出力カーブを変えたり、色調整することもなく運用できるようになっています。たとえば、油性機で印刷する予定のものが、絵柄を見たらベタが多かった場合でも、その刷版をそのままH-UV機にかけられます。また、「アポジーインポーズ」のおかげで急に印刷予定が変わっても瞬時に面付け変更ができるので、柔軟な印刷スケジュールが組めます。印刷機によって出力カーブが違うとこうはできません。A-SAPによる標準化と「アポジーインポーズ」によって、印刷機の運用の自由度・柔軟度が飛躍的に高まりました。

 

――顧客から印刷品質の変化について反応はありましたか。

萬上 これまでは本文のモノクロ印刷のみ受注していたある出版社から、高い写真品質が求められる製品やキャラクター物の仕事を当社指名で頂けるようになりました。また、ある製品の付随物の印刷・納品したところ、ECサイトのその製品のレビュー欄に「印刷がとてもきれいだった」というコメントがあり、印刷現場も自分達の取り組みの成果について大きな手応えを感じています。

 

――貴社の今後のさらなる取り組みとA-SAPに期待することについてお聞かせ下さい。

大澤 これからは労働人口が減り、採用が難しくなることが予測されるので、MISやクラウド技術を活用した業務全体の効率化などの対策をアグフアと一緒に取り組んでいこうと考えています。

藤本 その一環で、今年3月にファイルサーバーをクラウド化した「アポジードライブ」を導入しています。これまでは本社工場内にファイルサーバーを置いていましたが、時間帯によっては通信速度が落ちるので、事業所間でのデータのやり取りに時間がかかることもありました。この「アポジークラウド」を使うと、ソフトはつねに最新版にアップロードされ、社内でサーバーの保守をすることも不要となります。試算では、容量はこれまでの1.5倍以上になりますが、ファイルサーバーの購入費用とそのファイルサーバーの想定使用期間分のクラウド使用料は変わりません。

萬上 アグフアから提案してもらった機器やシステムに関しては、おおむね期待通りの結果が出ています。3年程前のプレートの契約更新時期に、ほかのプレートのテストもしましたが、印刷現場から「A-SAPによるサポートは続けて欲しい」という声が上がってきました。印刷現場でそれほどまでの信頼があるので、迷わず契約を延長しました。業務改善や印刷現場サポートといったトータルサポートがあるからこそ、当社ではアグフアを選んでいます

 

 

日本印刷新聞 2018年6月25日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

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