リコージャパン㈱(本社・東京都港区、坂主智弘社長)は7月26日、IGAS2018の同社ブース内で「RICOH Special Color Business Design Competition」の表彰式を行った。
このコンペティションはスペシャルカラー印刷が可能なリコー製カラーデジタル印刷機「RICOH Pro C7100S/7200Sシリーズ」のユーザーを対象に、同機の特徴である5色目として使用することができるスペシャルトナー(ホワイト、クリア、ネオンイエロー、ネオンピンク)の機能をうまく活用して、いかに実際のビジネスにつなげられるかという「デジタル印刷×スペシャルカラーをビジネスに活用する作品」を募集したもの。
今回が初めての試みにも関わらず30点超の応募作品が寄せられ、その中のすぐれた作品について表彰するとともに、ブース内でその作品展示も行われた。
表彰式の冒頭、あいさつに立った同社の武田健一取締役は「世の中全体、とくにオフィスではペーパーレス化が叫ばれて久しいが、実は紙に印刷されている量は毎年少しずつ増えている。なぜならば、1情報あたりの紙への印刷量はペーパーレス化の影響もあって減っているものの、情報の量そのものがペーパーレス化による減少分どころではない飛躍的なペースで増えているので、総量は増加している。この傾向は販促市場でも見られており、情報の渦の中にあって、視認性やインパクトといった特徴から、明らかに紙メディアが復権している。そのような時だからこそ今回、単純にデザイン性を競うだけではなく、ビジネスシーンでも活用できるかという観点に立ったコンペティションを開いた。顧客の購買動機につながるような素晴らしい作品が集まったので、ぜひ印刷業界のみなさまに参考にしてもらいたい」と、このコンペティションの開催意義を表した。
最優秀賞
㈱スリーライト 「視覚と触覚で感じるホワイト印刷」
作品コンセプトとポイント
「ホワイトトナーの持つ特性を最大限に活かした印刷表現を」というコンセプトで、アパレル会社のセール用DMを見立ててデザインパターンを複数作成。ホワイトの持つ特性をデザインに落とし込み、質感の感じられる印刷表現を目指した。具体的には、▽白紙にホワイトトナーで表情を付け、紙そのものを装飾。マットな質感を表現、▽ホワイトトナー特有の厚い膜厚により、簡易的な空押し風の印刷を表現、▽質感をデザインすることにより、手に取った瞬間に驚きを感じられるもの――にしている。
審査員のコメント
コンペティションのテーマである「商材としての価値」に鑑みると、ホワイトトナーの特徴を良く活かしている。このDMを気に留め、見て、触ってみることで、ターゲットの来店動機につながる作品。販促商品としては安価ではあるが、高級感のある良い商材である。
レギュラー4色でギミックを感じさせないようにテクスチャーをコントロールすることは難しいが、ホワイトトナーを活用することでこの作品は、完全にビジネスを見据えた付加価値の高いデザインを可能にした。テクスチャーをデザインすることによって、たとえば10円の用紙が100円の商材になり得る。そのイメージや狙いがアパレル会社のセール用DMという設定の中で展開され、しっかりと伝わってきた。
スリーライト プリプレスグループの佐野亮太デジタルプリントディレクターの受賞コメント
ホワイトトナーを使った触覚や光沢感について、「RICOH Pro C7100S」の導入時からいろいろと試行錯誤をしてきた。今回、出品しようと思ったのは、その後継機の「RICOH Pro C7200S」ではホワイトを先刷りできるようになったようなので、これまでは2パスで印刷していたものを1パスで、より簡単に、見当ズレを気にせず美しい仕上がりができると思ったからだった。今こそこの作品を、1パスで手間を掛けずに高い生産性をもって出力したいという想いを込めて製作した。
一般的なアパレル会社のDMは、たいてい服やモデルの写真が主となるが、今回はなにが売られているのか情報が伏せられている状態を前提とし、情報を伏せた状態を暗示するべく、敢えて白紙にホワイトを打っている。黒いDMでは、先にホワイトでSECLETという文字を打って、その上からリッチブラックを刷っているので、正面から見るとシークレットの文字は見えないが、触ったり斜めから見るとそれがわかる仕組みとなっている。「このセールは来てみてからのお楽しみ」という意味を込めたDMで、受け手に期待感を膨らませてもらえるよう、このようなデザインにした。
優秀賞
㈱大風印刷 「お酒用メッセージシール」
作品コンセプトとポイント
当社では市販の日本酒やワイン、焼酎などのお酒にオリジナルラベルを貼付した商品を販売している。従来のラベルは、オリジナル性は強いが、お客さまに貼り付けをする手間や製作コストを負担してもらわなければならないという問題を抱えていた。そんな課題に応え、従来のラベルを活かしつつ、コストを抑えた商品として考えたものが「メッセージシール」となる。お酒を購入したお客さまが、送る人へ気軽に想いを伝える手段として活用したい商品となっている。
審査員のコメント
少しの付加価値で購買動機に大きく貢献する商材。時期、催事、特別感など、小売の現場では「売るための工夫」をつねに考え、実施しなければならない。しかし、限られた予算やマンネリ化を防ぐなど、さまざまな要因があり頭の痛いところだが、従来の手法に「ネオンピンク」を使用することで新しさを感じる。ベースになる用紙や型抜きなどを加えることでまだまだ可能性がある。
優秀賞
㈱日版プリント 「COSMETIC RED LIPSTICK」
作品コンセプトとポイント
「女性が美しく見える赤い口紅」をテーマに掲げ、やさしく涼やかな、青みがかった赤、ブルーベース色でデザイン制作した。印刷は、高級感があるスペシャリティーズで光沢があるNo.305ペット系シルバーを選択。商品の下地にホワイトを入れ、その上に4色カラーで印刷し、表面加工には耐摩性のあるクリアを入れた。RICOH Pro C7100での印刷のため、1回転目はホワイト、2回目にカラー+クリアで、見当も少しズレることを考慮し、ホワイト版データを少し細らせて2回転目を印刷した。
当社は量産型のパッケージを手掛けているが、今後は小ロット多品種が進んでいくので、それに価格とスピードで応えられるような新しいチャレンジとして取り組んだ。2000個を製造するイメージで3丁付けにし、トムソンで加工している。デザイン性がとても高く反映されたでき栄えで、普段はオフセット印刷をしているが、まったくひけをとらないので、今後の新しい武器になると思う。
審査員のコメント
完成度がとても高く、技術的にすばらしい作品である。黒、シルバーという高級感ある色を巧みに使い、デザインの完成度もとても高い。また、高級感がありながら小ロットを当初から想定し、コストパフォーマンス的にも満足が得られるもので、顧客への提案としてバランスが良い。
優秀賞
パラシュート㈱ 「油絵具のようなデジタル印刷」
作品コンセプトとポイント
デジタル印刷のトナーを転写させることで生じる着肉が厚い点を活かし、より凹凸を感じられるように通数を増やして仕上げた。定着温度を下げてオフセット印刷のような光沢を抑えた仕上がりを好む傾向にあるようだが、デジタル印刷の光沢感、トナーの乗った感じは販促ツールとしては目に留まるポジティブ要素だと感じる。
制作のポイントとしては、油彩画の凹凸感を目標に、色の境目をどこにするかを工夫してホワイト版を作成し、プロセス4色との重なりを意識した。油彩画の立体感を表現すべく、ホワイトトナーを6回重ねて凹凸感を出しているが、繰り返して印刷しても見当のブレがほぼないことに驚いた。より効果的なホワイトの使い方を模索した作品となる。
審査員のコメント
PODの特徴と表現特性を熟知し、その良さが出ている。PODは小ロット、スピード、安価などの面が捉えられがちだが、ホワイトやネオンカラーなどの要素の可能性も探りながら作られた野心的な作品となっており、PODの可能性をこれからも追求してもらいたい。本コンペティションにおいては、このデザインを商材としてどう展開するのか、商売を想像できるような仕上がりであればいっそう望ましかった。
審査員特別賞
㈱クロスメディア「Pinky photo~Print service~」
㈱クロスメディア「桃色維新(Neon Pink Ishin)」
㈱スリーライト「英会話教室チラシ」
㈱みやもと「あじプリ名刺」
㈱村重スタジオ「花柄ブックカバー(文庫本サイズ)」
入選
㈱クロスメディア「歯科医院診察券」
㈱太陽社「集客のためのライブチケットのデザイン」