2018年07月30日

凸版印刷㈱(金子眞吾社長)は7月12日午後、東京・千代田区丸の内の「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」のスーパープレゼンテーションルームで2018年夏季記者懇談会を開き、2018年3月期の業績概況、今年度の経営方針、経営課題などについて説明した。2018年3月期の業績は連結売上高1兆4527億円(前期比1・5%増)、連結営業利益522億円(同1・3%増)、連結経常利益546億円(同9・9%増)、当期純利益422億円(同29・9%増)で6期連続の増益となったが、既存ペーパーメディアの減少が想定を超えたスピードで進展したことが大きな要因となり、下方修正した公表値630億円は達成できなかった。金子社長は今年度の経営方針について「今期は事業基盤の強化を図り、その上で戦略を再構築して、収益力向上をめざしていく」と、3つの経営課題である『グループを含めた構造改革の遂行』『新事業・新市場の創出』『グローバルな事業展開の加速』にスピードを上げて取り組んでいく考えを示した。

 

記者懇談会には、金子眞吾代表取締役社長、中尾光宏取締役常務執行役員、「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」の浦野信彦館長が出席し、緒方宏俊広報本部長の司会で進められた。はじめに、金子社長が2018年3月期の業績概況、今年度の経営方針、経営課題と基本戦略などについて説明したのち、中尾常務取締役が6月7日に東京・丸の内に開設した「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」を活用した事業概要と展望について説明した。金子社長の会見要旨は次のとおり。
 
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日本経済は、政府による経済政策の効果などにより、企業収益や雇用・所得環境に改善の兆しが見られる中、全体としては緩やかな回復基調が続いている。
一方で、中国をはじめとするアジア新興国経済の減速による景気の下振れリスクや、米国との通商問題など先行きは不透明な状況で推移している。印刷業界では、ペーパーメディアの減少とデジタル化がさらに進展し、従来の印刷事業のあり方が、転換期に差しかかっている。その変化は、AIやIoTなど、技術革新が加速しており、まさに革命といえるほどであり、既存の印刷事業を取り巻く環境は、今後も厳しい状況が続くことになると考えている。
 

2018年3月期の業績は、連結売上高が前期比1・5%増の1兆4527億円、連結営業利益が同1・3%増の522億円、連結経常利益が同9・9%増の546億円、当期純利益が同29・9%増の422億円だった。
また、2018年度通期の業績見通しは、連結売上高は前期比3・9%増の1兆5100億円、連結営業利益は同5・2%増の550億円、連結経常利益は同8・0%増の590億円、当期純利益は同17・2%減の350億円を見込んでいる。
前期は、営業利益522億円で6期連続の増益となった。一方で残念ながら、下方修正をした公表値630億円は達成できなかった。既存ペーパーメディアの減少が、われわれの想定を超えたスピードで進展したことが大きな要因となった。この結果を真摯に受け止め、今期は事業基盤の強化を図り、その上で戦略を再構築して、収益力向上をめざしていく。
 

デジタルトランスフォーメーションが成長・競争力強化に重要な意味をもつ

 
■経営課題と施策

引き続き、「グループを含めた構造改革の遂行」「新事業・新市場の創出」グローバルな事業展開の加速」の3つの経営課題に取り組みながら、基本戦略として①デジタル変革実現に向けた支援強化②「4つの成長領域」における新たなビジネス創造③生活・産業事業分野を中心に、旺盛な海外需要に対応の3つの柱を中心に進める。
 
1つめの「デジタル変革実現に向けた支援強化」では、データの重要性を根幹に据えて取り組みを進める。現在、デジタルトランスフォーメーションが、企業の成長や競争力強化に重要な意味を持つようになっている。
具体例として、流通業界では、ネット通販の急成長により従来の販促手法が通用しなくなった。これにより販促施策が大きく変わり、より生活者の行動に影響を与えるような施策をめざし、得意先における販促予算の構造変化が進んでいる。これはまさに流通業界におけるデジタルトランスフォーメーションとなる。
当社は従来、「デジタルマーケティング」に取り組んできたが、2017年夏ごろからその進化系として“より生活者にリーチできるCRMの構築”をめざし、得意先とともに方向性を模索してきた。この取り組みを加速させるため、2018年1月には新たにデジタルマーケティング専門の新組織を立ち上げた。現在、非常に手ごたえを感じており、約500人体制の組織を2020年には倍増となる1000人規模に拡大していく計画である。
さらに、デジタル化の得意先ニーズは業界によりさまざまである。現在、得意先の課題解決に向けて、業界ごとに最適なサービスを提供すべく、取り組みを進めている。
たとえば、メーカーや流通業界における“顧客主体のマーケティング変革”というニーズに対しては、当社が展開する国内最大級の電子チラシサービス「Shufoo!」によって獲得した、店頭周りのデータが強みとなる。「Shufoo!」は、2018年3月時点で参加店舗数が、約11万店を超え、月間のユーザー数も1千万を突破し着実に成長している。加えて、BPOで培ってきた運用ノウハウや、施策を現実の形にする企画力は、システム会社などにはない、当社の強みである。これらの強みを基点に、川上のデジタルと融合させることで、サービスを拡充させていく。一方で大量のデータ分析技術や専門人材がこれからますます必要になってくる。すでに技術を有する他企業とのアライアンスなどを通じてさらなる機能の強化を図っていく。
こうした取り組みが成果として実を結ぶには、ある程度の時間が必要となる。今まで築いてきた販促分野での強みをベースに2020年までに、情報コミュニケーション事業分野における主要な柱にしていく計画である。
 
2つめの「成長領域における新たなビジネス創造」では、①健康・ライフサイエンス②教育・文化交流③都市空間・モビリティ④エネルギー・食料資源――の4つの成長領域を設定し、トッパンの幅広いソリューションを提供することにより、社会的課題の解決に寄与していく。
ここで、具体的な事例として、「教育・文化交流」の取り組みを紹介したい。現在、トッパンは、政府が進める国家施策を背景に、地方創生・観光立国の実現を支援するビジネスを推進している。引き続き、自治体向けのコンサルティングや、地方の文化財の価値化、情報発信などを行うとともに、当社の強みであるVR技術の展開分野を広げ、新しいコンテンツの価値を創出することで、質の高い観光資源の開発をサポートしていく。さらに、この取り組みを加速させるため、「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」を自治体などをはじめとするパートナーとの共創の場として2018年6月7日に開設した。オープニングレセプションには40を超える自治体関係者にご列席いただいた。自治体をはじめとする企業などパートナーとの共創の場として活用いただく。現在、新たな協業や協力について多数の問い合わせが来ている。
さらに「教育・文化交流」領域では、スポーツ関連ビジネスにも注力している。来年(2019年)に控えたラグビーワールドカップや、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどを視野に専門組織を立ち上げ、スポーツ関連ビジネスにも取り組んでいる。これらの相乗効果を生み出しながら、直接・間接の受注獲得をめざす。
 
3つめの「生活・産業事業分野を中心に、旺盛な海外需要に対応」では、とくに生活・産業事業分野を中心に展開する。
北米では、バリアフィルムの生産拠点「ジョージア工場」の稼働が軌道に乗り、有望な現地メーカーのバリアフィルム需要の獲得が進んでいる。今後は北米・欧州でのビジネス拡大のため、新たな分野への進出なども視野に、事業を推進したい。
また、ASEANでは、旺盛な現地需要の取り込みを図る。2017年8月に資本提携した、インドネシアにおける軟包材企業や、タイの総合パッケージング企業とのシナジーの創出を図り、食品・トイレタリー分野を中心に事業を拡大していく。さらに、エレクトロニクス事業分野では、中国における半導体市場の拡大を見据え、上海における半導体フォトマスクの先端品製造に取り組んでいる。
 
これら3つの戦略を柱に、今後も事業の変革と、さらなる成長を目指す。
 
■新体制について
本年からコーポレートガバナンス強化の一環として、執行役員制度を改定した。経営と執行の役割分担を明確にするため、業務執行を担う取締役は、執行役員を兼務することとした。また、「上席執行役員」を廃止し、新たに「専務執行役員」「常務執行役員」などの「役付執行役員」を設置している。新たな体制で経営の質を高め、スピードを上げて経営課題に取り組んでいきたい。
 
■社会貢献/文化貢献について
印刷博物館は、おかげさまをもって2016年10月に来館者が50万人を突破、現在は55万人を超えるなど、引き続き高い評価を得ている。本年1月には企画展「キンダーブックの90年―童画と童謡でたどる子どもたちの世界」に、天皇、皇后両陛下の行幸啓を賜わることができた。さらに10月20日から企画展「天文学と印刷 新たな世界像を求めて」を開催する。この企画展では地動説を唱えたコペルニクスの著書も展示し、学問の発展に果たした印刷者の活躍を天文学を中心に紹介する。このような取り組みを中心に、今後もトッパンは積極的に文化貢献活動を展開していく。
 

顧客に新たなサービスを提供 いままでになかったマーケットが出現


 
われわれを取り巻く環境では、革命ともいえるほどの大きな変化が起こっている。しかし、この環境変化はピンチではなく、デジタルトランスフォーメーションにより、製造、マーケティング、バックエンド業務などを統合し、顧客に新たなサービスを提供するといった、まさに今までにはなかった大きなマーケットが出現している、大きなチャンスと考えている。この市場で業界の垣根を越えて、自社の強みを活かし、競争に打ち勝つことで、これまで以上に大きなシェアを獲得し成長していくことができると考えている。われわれは、これからも培った「印刷テクノロジー」を日々進化させ、新しい領域においても、お客さまの課題を解決し、社会に貢献していきたい。
 

私は本年6月に日本印刷産業連合会の会長に就任した。今後も業界全体で新たな挑戦を行うよう、取り組みをリードし業界の発展に寄与したい。
 
 

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