独・ハイデルベルグ社は5月24・25日の両日、中国・上海の同社青浦(チンプー)工場で「パッケージング・デイ」と銘打ったイベントを開催した。
アジア太平洋地区のさまざまな国と地域から、パッケージ印刷会社など約80人が来場したこのイベントでは、「THINK OUT OF THE BOX!(既存の枠組みにとらわれない)」をテーマに、デザイン・プリプレスから印刷、後加工・検品にいたるまでのパッケージ製作にまつわる新製品・新技術が、実機による実演を通して紹介された。
このイベントで一番の見どころとなったのは、青浦工場でも製造されている「スピードマスターCD102」での印刷実演。
7色コーター付UV機「スピードマスターCD102-7+L」を使い、①アルミ蒸着紙にオペークホワイト+CMYK+OPニス+グロスニスの印刷、②CMYK+オレンジ+グリーン+バイオレットの固定7色インキによる特色表現をする印刷--を行った。
1番目のジョブでは、デザイン競争が激しい紙器パッケージ分野において、アルミ蒸着紙やプラスチック素材といった原反が多く使われることを踏まえ、そのような原反でもカラーコントロールをして安定した色再現と損紙の最小化、色合わせ作業の自動化・迅速化ができる点をアピール。
これまではこれらの原反に印刷する際、カラーコントロールをすることが難しかったが、それに対応する製品として印刷品質管理装置「イメージコントロール3」を紹介した。
「イメージコントロール」は、抜き取った印刷物の絵柄全体を分光光度計で測定し、基準値に対する色のズレを算出し、その情報を印刷機に転送してインキ量の調整を自動的に行うシステム。
基準値には登録したOKシートだけでなく入稿原稿のPDFデータにも対応する。
その最新バージョンとなる「イメージコントロール3」では、特殊原反にオペークホワイトを印刷してからカラー印刷したものについて、原反の反射やオペークホワイトの濃度なども勘案した上で、絵柄全体を読み込んでカラーコントロールできるようになった。
また「イメージコントロール3」では、抜き取った印刷物の色だけでなく欠陥検査も行うオフラインインスペクション機能も新搭載。
さらに、他社で印刷された刷り見本に合わせて印刷をする場合について、単面のパッケージの色を「イメージコントロール3」であらかじめ読み込み、そこで得られた色情報をプリプレス側に送って原稿データの段階で色調整を加えて刷版出力することで、インキキー操作をせずに刷り見本に合った印刷再現ができる手法も提案された。
2番目のジョブでは、パッケージ印刷において使用頻度が高い特色インキについて、ジョブ替えのたびに時間と手間がかかるインキ交換作業をすると生産性や稼働効率、収益性が落ちることから、そのようなインキ交換作業を排し、かつギャンギング(複数ジョブの付け合わせ印刷)も可能とするソリューションとして「マルチカラーワークフロー」を紹介した。
この「マルチカラーワークフロー」は、CMYKにグリーン・オレンジ・バイオレットを加えた7色の固定インキの掛け合わせによって特色を再現する手法。
プリネクトプリプレスシステムによって特色を7色に色分解して印刷することにより、パントンカラーの95%の色域を再現することができる。
また、CMYKはAMスクリーン、残りの3色はFMスクリーンにすることでモアレの発生を防いでいる。
このイベントでは、日本国内でも今年4月から発売を開始している、倍径圧胴を持つ菊半裁印刷機「スピードマスターCX75」も披露された。
このモデルはフラッグシップモデルの「スピードマスターXL」と同じフィーダー、デリバリー、エアートランスファーシステムを持ち、0.03㍉の薄紙から0.6㍉(オプションで0.8㍉まで対応)のカードボードまで対応できる汎用性の高さが特徴。
また、機械幅は2.81㍍ととてもコンパクトで、同社製の「スピードマスターXL75」と比べて約50㌢、「スピードマスターSX74」と比べて約10㌢も短く設計され、しかもステップが折り畳み式なので、限られたスペースにも設置することができる。
薄紙印刷から厚紙印刷まで柔軟に対応できることから、商業印刷を主業務とするユーザーがPOPや紙器パッケージの仕事もするようなケースでも高い生産性を実現できる。
実演では片面4色機を使い、0.4㍉厚の用紙と0.55㍉厚の用紙の2ジョブを披露。
毎時1万5000回転の最高速での印刷、迅速なジョブ替えができる各種プリセット機能、抜き取った印刷物のカラーパッチを読み込んで印刷中のインキ濃度の変動があれば印刷機のインキキーに自動反映させる「プリネクトイージーコントロール」などの機能を紹介した。
パッケージ印刷のプリプレス工程の自動化・効率化が図れるソフト「プリネクトパッケージデザイナー」についても紹介された。
「プリネクトパッケージデザイナー」にはさまざまな箱やディスプレイなどの展開図面のテンプレートが1000種類以上収録されているライブラリーがあり、製作したいパッケージの構造と同じものを選択して、その展開図面データのある1辺の長さを変えるとそれに応じてほかの辺の寸法が自動計算によって変更されるのでとても簡単に構造設計ができる。
また、使用する原反の種類や厚さに応じた寸法の自動計算も行われる。
もちろん、折り畳んでできる最終製品の立体表示、内容物を充填したイメージ、Adobe Illustratorで制作したデザインデータの取り込み、グロスバーニッシュ・箔・エンボスなどの表面加工について表現もできるので、それをPDF化することで印刷発注者はAdobe Readerでそのパッケージの最終立体イメージを確認することもできる。
用紙サイズに応じたもっとも効率が良い入れ子面付けの自動計算、同じ製品で色違いのパッケージを製作する際に各色分の数量に応じた面付け、さらにはギャンギングをする際にもっとも効率が良い形を自動計算して入れ子面付けする機能なども有している。
そのほか、マスターワーク社製の平盤打ち抜き機、製函機、欠陥検査装置などの後加工システムやIST METZ社製の各種UV装置も紹介。
さらに、印刷機の設置・導入から廃棄するまでの全期間にわたって稼働効率を最大化させる最大化させるために、サービス、メンテナンス方法の指導、予知保全、消耗品の提供や使い方の指導、ソフト製品の提供のあり方などを包括したハイデルベルグ社のサポートプログラム「ライフサイクルソリューション」についても紹介した。
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