2018年01月15日

菱栄機械㈱(本社・千葉県柏市花野井712の6)は、三菱重工製の枚葉印刷機を対象とした中古印刷機販売およびオーバーホール事業を展開し、これまでに400台以上の中古印刷機を納入している。印刷会社を取り巻く経済環境は厳しく、設備投資による企業競争力の継続的な強化は必要なものの、設備投資に対する償却期間を短く考えなければならない。その点から注目を集めているのが中古印刷機だ。そこで今回、同社の和田治之取締役と、昨年11月にこのサービスを活用して枚葉オフセット印刷機を初めて導入した㈱ミヤギパッケージ(本社・沖縄県豊見城市豊崎3の30、宮城通治社長)の比嘉智志常務に、中古印刷機の活用術について話を聞いた。

 

 

--現在の中古印刷機の国内市場の動向についてお聞かせ下さい。

和田 以前は新台を購入する資本力がない印刷会社が、中古印刷機を活用して力を伸ばすことを狙うケースが主でした。しかし現在は、企業規模の大小や印刷分野の違いを問わず中古印刷機が注目されています。

この背景には、厳しい経済情勢や市場環境から、印刷会社の設備投資に対する考え方に変化が起こったことがあります。状況が厳しくても時代と市場に取り残されないためには、設備投資はしなければなりません。その設備投資の回収期間を、以前であれば10年程と想定されていたものが、今は5~6年程度と短縮傾向にあることから、中古印刷機が選ばれています。

当社の中古印刷機の取扱高も急増し、数年前と比べて約3倍の引き合いを頂いています。最近は、8色機やニスコーター付6色機、UV機、大判機、両面専用(タンデム)機などの多機能・高付加価値機が人気です。

 

比嘉常務

比嘉常務

--ミヤギパッケージでも先ごろ、菱栄機械から中古印刷機を購入しました。まず、会社の特徴ついて簡単にお聞かせ下さい。

比嘉 元々は沖縄県北部で茶畑を経営しており、そこで収穫・製造したやんばる茶を那覇に出てきて販売していました。そこで販売していた時、通常は新聞紙に包んでいたのですが、きちんとした箱に入れたところ販売量が飛躍的に伸びました。そこで、お茶を売るために自分達で箱を作るようになり、周囲のお茶屋さんからも製造を依頼されるようになりました。次第にパッケージ製作の方が忙しくなり、昭和27年に宮城紙工所として創業しました。したがってその当時から、パッケージの出来が中身の商品の売れ行きに直結すること、そしてパッケージが持つ魅力や能力を経験則として認識していました。

現在の得意分野は化粧箱製作で、売上構成は紙器が8割、段ボールが2割となります。顧客のほとんどは県内で、商品開発の段階から顧客メーカーと関わり、パッケージの企画・提案、デザインから後加工まで一貫して請け負う体制を敷いています。ただこれまでは、印刷工程だけは協力会社に外注していました。

 

--これまでやっていなかった印刷工程を内製化することにしたきっかについてお聞かせ下さい。
比嘉 短くなる納期への対応や製品品質の管理と安定化、そして増大した印刷外注費を抑えることを狙ったものです。まず初めに2年前に外注先の協力会社の中の1社を子会社化し、印刷内製化へのスタートを切りました。その会社では約30年前から稼働している菊全判4色機がありましたが、それを当社の工場に移設することは難しかったので、当社工場内での本格的な内製化にあたり、これと入れ替える印刷機を導入することにしました。

 

和田取締役

和田取締役

--菱栄機械が取り扱う中古印刷機の特徴についてお聞かせ下さい。
和田 当社が取り扱う中古印刷機は、三菱重工製の枚葉オフセット印刷機となります。
当社はリョービMHIグラフィックテクノロジー㈱の専門ディーラーで、新台の印刷機を販売していますが、新台を納入した際には中古印刷機の下取りをすることになります。そこで、下取りした中古印刷機をオーバーホールして販売する事業を展開することにしました。事業開始当時、中古印刷機の出荷にあたって三菱重工がクオリティを都度チェックするという体制を採り、メーカーと一体となって安心して使ってもらえる印刷機の整備ノウハウを得てきました。
現在でも中古印刷機の整備にはすべて純正パーツを使い、きちんとしたオーバーホールをして安心という価値も含めて提供しています。整備が終わって出荷する中古印刷機はリョービMHIグラフィックテクノロジーに登録され、正規のサービスを受けられるようになっています。機種や個々の機械条件によって異なりますが、価格の目安としては、フルオーバーホールをしたもので新台の4~5割程となります。

 

NewDAIYA306+ニスコーター

NewDAIYA306+ニスコーター

--今回の印刷機の導入時期と機器構成についてお聞かせ下さい。
比嘉 導入したのは去年の12月です。菊全判ニスコーター付6色機「NewDAIYA306+ニスコーター」で、これに菱栄機械のグループ会社である㈲グラフィックス・サービス・ジャパンが提供している高感度UVインキに対応したecoUV印刷システムのイージックス(160WのオゾンレスUVランプ)をロングデリバリー部に2灯搭載してもらいました。印刷に関しては素人ですので、構成にあたっては和田さんにいろいろとアドバイスをもらいました。

 

--どのようなアドバイスをしたのですか?
和田 既設機は油性4色機だったようですが、先程の比嘉常務のお話にもあったように、ミヤギパッケージ様はパッケージが中身の商品の売上に与える影響や付加価値をよく理解していらっしゃいます。そこで、特色などにも対応する6色という多色構成を、そして疑似エンボス加工といった付加価値印刷もできるようにニスコーター付機をお勧めしました。また、現在そして近未来のパッケージ印刷市場を考えますと、UV化は必須となります。もしかしたら、直近ではオーバースペックになるかもしれませんが、内製化率を高めていくためには今後必要になることは明らかです。印刷機への投資は高額です。後になって後悔されることがないよう、ミヤギパッケージ様の将来を見据えてお勧めしました。

 

--導入の際、他の印刷機も検討しましたか?
比嘉 素人の浅知恵かもしれませんがいろいろと調べたところ、パッケージ印刷・厚紙印刷にはこの「New DAIYA306+ニスコーター」が適していると思っていました。当社にとっては初めての印刷分野への参入で、成功して軌道に乗せられるかわかりませんので、新台を購入するという大きなリスクを避けるべく中古印刷機を選択しました。そこでタイミング良く信頼できる人と出会え、初期投資を抑えて新分野への最初の一歩を踏み出せました。
和田 ミヤギパッケージ様内で選ばれていたものと、当社がご用意できた印刷機が運良く合致したのはラッキーでした。
比嘉 用紙搬送、キズ入り、印刷面の光沢、ベタのつぶれなど、厚紙印刷をする上でもっとも適していると判断しました。

 

--この印刷機を実際に使ってみて、いかがですか?
比嘉 中古印刷機だからといって品質が悪いということは一切なく、むしろこれまでよりも良くなっています。とくにニスの光沢については、油性印刷では印刷面にスプレーパウダーが残っていたせいなのか、これまでオフラインでやっていたPP貼りよりも勝っています。これまで以上の表面加工がワンパスでできるので、圧倒的な短納期と低コスト化が図れます。
元々は平成16年製の印刷機ということですが、10年以上はフル稼働ができるでしょう。
和田 当社がお納めする中古印刷機は、フルオーバーホールをした上で、リョービMHIグラフィックテクノロジーに正規中古印刷機として登録します。したがいまして、新台を購入されたのと同様のサービス体制を受けられる体制になっていますので、安心して長期にわたってお使い頂けます。

 

--ほかにオプション機能は付けましたか?
比嘉 オプション機能ではなく周辺機器となりますが、これも和田さんのお勧めと印刷現場からの強い意向があり、自走式のブロワー付用紙反転機「リョウエイトルネード」を導入しました。
和田 高感度UV印刷の普及にともない、片面印刷後すぐに裏面を印刷するという運用をされるケースが増えています。その際に、労力を要さず用紙を反転させてフィーダー部まで運ぶことができる装置として「リョウエイターナー/リョウエイトルネード」を提供しています。
ただ、ミヤギパッケージ様では片面のみの印刷物が約9割を占めているので、反転機としてお勧めしたのではありません。「リョウエイトルネード」は、用紙反転のほかに、ブロワーと振動によって紙揃えができる機能を有しています。
比嘉 これを印刷前にすることで、紙粉が取れ、紙が捌けるのでフィーダートラブルを防げます。また、刷り上がった後で紙揃えが悪い場合でも、この機械にかけて紙を揃えることで後加工工程でのハンドリングを良くするという狙いもあります。重たい厚紙への印刷ですのでそれを手で行うのは大変です。
和田 せっかく高額な印刷機を導入されたのだからこそ、より稼働率が上がるように提案をしました。コストは多少かかりますが、フィーダートラブル防止や後加工での作業性向上で得られる時間は、10年超の使用期間を積み重ねると莫大になります。また「リョウエイトルネード」は定置式ではなく自走式ですので、印刷・後加工の両部門でご活用頂いています。

余談ではありますが、ミヤギパッケージ様は温暖な沖縄県にあるので関係ないと思いますが、寒い地方のユーザーからは「紙が冷たいまま印刷をするとインキの着肉が悪くなるが、“リョウエイトルネード”は温風で紙捌きをするので、それをすることできれいな印刷ができるようになる」という報告も頂いています。

 

後付けしたEcoUVシステム

後付けしたEcoUVシステム

--印刷内製化により、短納期対応、コストダウン、品質向上といった効果が得られたようですが、それ以外に得られたメリットはありますか?
比嘉 新製品のパッケージを企画から製作していくにあたり、印刷を外注することによって情報が社外に出ることをよしとしない声もありました。また、これまでは複数の協力会社に外注をしていましたので、印刷品質の均一化が難しかったことがありました。これらの課題を解消できることもメリットです。
和田 今回、まずは印刷工程の足固めに専念されるということで搭載はされていませんが、次の段階として印刷品質検査装置をお勧めしています。ミヤギパッケージ様ではこれまで、外注先から納品されたものを全量目視検品されていました。それでは人件費が大変なことになりますし、また一生懸命見ても人の目では見逃すこともあります。
比嘉 今回のタイミングでは予算の関係で搭載を見送りましたが、次のステップとして、顧客に安心を提供できる品質・管理体制を構築すべく、印刷品質検査装置の導入を考えています。
利益率が決して高くない印刷業において、事故率を低減させることは利益を保つ上で不可欠です。当社は沖縄県という決して大きくはない、限られた地域を商圏にしています。他県の印刷会社とは違って離島ですので、大きな経済圏から仕事を取ってきて納品をするのは難しいのです。だからこそ、今できる仕事で利益をしっかりと確保するため、無駄な損失を出さないようにしなければなりません。

 

--この印刷機に寄せる期待や想定活用法、そして今後の御社の方向性についてお聞かせ下さい。

ミヤギパッケージが開発したオリジナル印刷製品「オリガミ・サムライ」。折り紙のように組み立てていくと紙製の甲冑となる。酒瓶に被せるキャップなどを用途として想定している。

ミヤギパッケージが開発したオリジナル印刷製品「オリガミ・サムライ」。折り紙のように組み立てていくと紙製の甲冑となる。酒瓶に被せるキャップなどを用途として想定している。

比嘉 この印刷機は厚物印刷専用機として活用し、薄物については今後も協力会社に外注していく予定です。当社の繁忙期はお中元とお歳暮の時期で、5月頃に初めての繁忙期を迎えます。贈答品ですのでパッケージにも高級さが求められます。品質面、内製化という面、そして生産性という面でも期待をしています。
また、当社では今デザイン部門の強化を進めています。印刷機が社内で自由に使えるからこそ、たくさんの色を使ったり、新しい表現方法を研究・試作することができます。デザイン部門がさらなる進化を遂げるためにもこの印刷機は有用ですし、その研究が印刷機のさらなる可能性を引き出すことになるでしょう。
以前から弊社の社長は、包む物に関してはすべて当社に聞いてもらえば大丈夫だと顧客から頼られるパートナー、言い換えれば「パッケージのプロ集団」となることを目指していました。今回の印刷機の導入によって、パッケージ製作に関しては入口から出口まで社内でできる体制が整いましたので、その想いを本格化・具現化させてまいります。

 

日本印刷新聞 2017年2月20日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

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